254.使える、新アイテム!

 思わぬ食材の発見に気をよくした俺は、もう少しこの『アイテマー迷宮』のある不可侵領域に留まることにした。


 手に入れた新アイテムを試してみようと思ったのだ。


 まずは『隠れ蓑のローブ』。


  魔力を通していない状態では、茶色の普通のフード付ローブである。


 そっと魔力を流してみる……


 魔力調整が精密にできないので少し不安だったが……大丈夫のようだ。


 攻撃型の魔法道具ではないので、威力調整などが不要なのだろう。

 精密な魔力調整ができなくても、問題なく使えた。

 透明になるとともに、気配も消えているようだ。


 これがあれば、いつもリンにお願いしてる潜入任務も自分でできるかもしれない。

 リンが使う体色変化によるステルス機能と、同じようなことができるようになったからね。



 次に『ハイジャンプベルト』を使ってみる。


 腰に装着する造形は、まさに『変身ベルト』のような感じだ……。


 意匠的にも凄く似ている。


 気分的には変身ポーズを再現してみたい衝動にかられるが……自重した。


 腰に装着すると、自動的に装着者の魔力を吸い上げる構造のようで、俺の主体的な魔力調整は必要ないようだ。


 そのお陰で、この魔法道具も使えそうだ。


 腰に装着しただけで稼働状態になっているので、後は使いたい機能を念じれば使用可能なようだ。


 ベルトの中央部分には、緑の魔法石『風嵐石ふうらんせき』が埋め込まれている。


 意識を集中して念じると、その埋め込まれた部分から突風が渦を巻きながら出現した!


 かなりの強風で、普通の人なら軽く吹き飛ばすほどの威力だ。

 使い方によっては、防御にも役立ちそうだ。


 そして両腰に下がっている拳銃のようなパーツに意識を集中すると、下に向いた銃口の部分から突風が放射状に吹き出した。


 俺はその威力で、一瞬にして空高く舞い上がってしまった。


 ロケット発射のような感じで、かなりのG(重力)がかかった。

 寒さを感じるので、かなりの高度まで上がったようだ。


 この機能については、ある程度の威力調整が必要なようだ。

 練習しないと使いこなせない感じだ……。


 左右の腰についたそれぞれの拳銃パーツに手を添えて、角度を変えることによって進行方向を変えられる構造になっている。

 使い慣れれば、水平飛行もできそうな感じだ。


 というか『共有スキル』にセットしてある『浮遊』スキルで浮くことだけはできるので、このベルトの力を組み合わせれば高速で飛行することができると思う。


 念願の飛行ができそうだ!



 俺は夢中になって操作した。飛行訓練だ!


 何度か墜落し地面に大穴を開ける結果となり、サーヤとリンに心配されたが、面白くてしょうがないのだ!


 しばらくはアクロバティックな飛行が続いたが、何度かの墜落を経て、ある程度思うように操作できるようになってきた。

 飛行や空中移動が、それなりにできるようになったのだ。


 これはかなり使えるアイテムだ!

 凄い物を手に入れてしまった!


 一つだけ問題があるとすれば……

 普段から腰に巻いてると……なかなかに中二病チックで……

 気持ち的にハードルが高いということだ。


 この世界ではいろんな装備をしている人がいるので、それほど気にしなくてもいいのかもしれないが……


 バイクに乗った変身ヒーローのように、必要なときだけ浮かび上がるとか……そういう機能がないかなぁ……。



 次に俺は『魔力刀 月華げっか』も使ってみることにした。


 『状態』が『機能損傷(一部)』となっていたので、魔法武器としては使えない可能性があるが、魔力調整が苦手な俺にはちょうどよかったかもしれない。


 刀を鞘から抜いてみると……


 この刀も自動で使用者の魔力を吸い上げるようだ。


 魔法武器としての機能が、完全に壊れているわけではないようだ。



 刀身は鈍色というよりは綺麗な白銀という色合いで、魔力が十分に通ると更に輝きを増し鏡面のような感じになる。


 光を反射する水面のような煌めきだ。

 それでいて妖艶な雰囲気も纏っている。


 だが決して、呪われた妖刀ような波動は感じない。

 どちらかというと……澄んだ淀みのない波動を感じる。

 月を綺麗に映し出す水面のような……静かに澄んだ波動だ。

 不思議な刀だ……。


 俺は近くにある魔物の領域に行って、刀の性能を試すことにした。


 魔物の領域に入ると、すぐにバッファロー魔物が現れた。


 俺に突進してくるバッファロー魔物に対し、左足を一歩後ろに下げ、半身の構えから横薙ぎに刀を振り抜く。

 テニスのバックハンドのような感じだ。


 シュッ————


 バッファロー魔物は、上下二つに分かれて転がった。


 しばらく走った後に上下に分かれたので、斬られたことも気づかなかったかもしれない。

 『魔剣 ネイリング』に匹敵する鋭い切れ味だ!


 え……頭の中にイメージが流れ込んでくる……


 これは……


 この刀を使った必殺技のイメージと発動真言コマンドワードが頭に思い浮かんだ!


 どうもこの刀には、必殺技が予め登録されているようだ。


 俺は再度バファロー魔物に対峙し、必殺技の発動を試してみる。


 動きのイメージが頭の中に思い浮かぶ……

 両手で柄を持ち……切っ先を下にして……下から上へと斬り上げる……一太刀必勝の技のようだ。


「 無明を晴らせ!下弦の太刀 月華無明げっかむみょう斬り!」


 発動真言コマンドワードを唱えると、刀身が煌めきを増し、下から斬り上げる技の発動の瞬間、強烈な光を発した!


 バッファロー魔物は、眩い光に一瞬たじろいだ……


 次の瞬間、両断され絶命した。

 刀の発光と同時に、昇天したような感じだ。


 なんて技だ……。

 本来なら相当な修練を積まないと会得できないような、達人級の技が出せてしまうようだ。


 技の発動の瞬間は、刀が自動で動いているような感覚があった。

 刀に引っ張られて、体がついていくような感覚なのだ。


 なんとなくだが……もう何種類か技が登録されている気がする。

 それが機能損傷によって、この技しか発動できない状態なのではないだろうか……。

 普通に考えれば『下弦の太刀』があるなら『上弦の太刀』もありそうな気がする……。


 それから後付けのような形で刀のつばの下に付いているの部分……柄側に付いているリング状のパーツも魔力が通って稼働しているようだ。

 よく見ると、刀の刃と同じ向きに凹みがある。


 その部分に意識を集中してみる……

 なにか発射する構造なのではないだろうか……


 そう思った瞬間——


 ヒュンッ——


 ——バゴンッ


 釘のような形状の小さく細長い魔力弾が発射され、前方の大木を穿ってしまった。


 どうも仕込み武器のようだ……。

 反則級の武器ではないだろうか……

 鍔迫り合いをしているときに、これを発射したら確実に勝ってしまいそうだ……。


 感覚的には、鍔の部分に小さな魔法銃が付いているような感じだ。


 接近戦だけでなく、中距離の敵に対しての攻撃手段にもなりそうだ。


 この機能は元々付いていたのか、『道具の博士』が後付けしたのかは不明だが、この刀だけで近距離戦も中距離戦もできることになる。

 優れた逸品である。


 多数の敵と対峙しても、十分に戦えそうだ。

 魔力弾なので、魔力が切れなければ、いくらでも連射できるはずだ。



 最後に俺は、『アイテマー迷宮』の迷宮管理システムであるダリスリーから貰った『使い魔人形ファミリアドール』を使ってみることにした。


 使い方はシンプルで、魔力を通すだけなのだ。

 俺が魔力を通すと、俺の念でコントロールできる人造の『使い魔ファミリア』として稼働するようだ。


 早速、スズメの人形に魔力を流してみる。


 魔力調整が心もとないが……集中して最低限の魔力をイメージして、少しずつ流してみる。


 だが流した次の瞬間には、もうスズメが飛び立った!

 一瞬で魔力が通ったらしい。


 見た目は、本物のスズメと全く変わらない。


 魔力を通すことで、基本設定の自律モードで稼働するようだ。


 この道具もなんとなく……使い方が思い浮かぶ。


 スズメの人形を頭にイメージし、感覚共有をイメージすると……


 視界の中に、小さなウインドウ画面のようなものが表示され、スズメの目から見た景色が写し出される。

 まるでドローンの映像が、ダイレクトに網膜に写し出されているような感じだ。


 常に視界の中に画面が入っている感じは、慣れないと気持ち悪い……


 俺は目を閉じてみることにした。

 すると感覚共有しているスズメの視界映像だけが写し出されるので、普通にモニターを見ているような感じになった。

 これなら気持ち悪くない。


 聴覚にも意識を向けると……スズメが聴いている音も拾えるようになってきた。


 なるほど……これは使い慣れたら便利かもしれない。


 調査や偵察を含めた様々なことに使えそうだ。


 録音とか録画の機能はないのかなあ……

 もしあれば、犯罪の証拠とかにも使えそうなのに……。



 今回入手した各種アイテムは、今後かなり役立ちそうなものばかりだ!


 チョコレートの原料を手に入れハイテンションになっていたが、更にハイテンションになってしまった!


 さーて、この後はなにをしようかなぁ……


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