238.戦利品と、レベルアップ。

 襲撃から一夜明け、俺は領城の会議室にて昨夜の事件に関する報告を受けている。


 昨晩も散々感謝されたが、『魔法の巻物』の力で何千というアンデッドを一瞬で葬り去ったので、最終的に死者は一人も出なかったようだ。


 妖精族に伝わる『魔法の巻物』ということにしてある。

 アンデッドに特効の光魔法の特別な巻物と説明をし、階級も『極上級プライム』であることを伝えた。


「魔法の巻物で、あれほどのことができるとは信じられない」とユーフェミア公爵は言っていたが、『極上級』ということでなんとか納得してくれたようだ。


 本当は、俺の限界突破した魔力のなせる技なのだが……。

『極上級』のアイテム自体珍しいので、なんとか誤魔化せたようだ。


 大量に倒したアンデッドの中で一番多かったのは、下級スケルトンだ。

 浄化された後の骨は、仲間たちと手分けして回収した。

 みんな『共有スキル』にセットしてある『アイテムボックス』スキルが使えるから、大量のものでも回収できてしまうのだ。

 その後にまとめて、俺の『波動収納』に回収した。


 実体のない怨霊やリッチなどは浄化されると消えてしまう。

 ゾンビはスケルトンと同様に死体が残るのだが、ほぼ間違いなく前の悪魔の襲撃のときに亡くなった領民たちが利用されたので、兵士たちに頼んで土に埋葬してもらった。


 一度浄化されているから、再びアンデッドになることはないだろうというのが皆の共通見解だった。

 それ故、焼かずに再度埋葬してあげることにしたのだ。


 ちなみにスケルトンドラゴンの残骸も、俺が回収した。

 骨だけとはいえドラゴンのパーツはどれも強力で、換金してもかなり高額になるらしい。

 武具を作る場合でも、強力な品が作れるとのことだった。

 本来なら軍でも欲しいだろうが、俺の手柄として与えてくれたのだ。

 ドラゴンの骨なんて今後手に入るかどうかもわからないので、俺はありがたく頂戴することにしたのだ。


 それから上級のスケルトンたちが持っていた武具も、かなり強力なものだった。


 ケンタウロス型のスケルトンが持っていた盾と短槍は、どちらも階級が『上級ハイ』だった。

 おそらく、生きていたときのケンタウロスが所持していた武具だったのだろう。

 かなりの強者だったに違いない。


 ちなみにニアの話では、ケンタウロスは妖精族ではないが、妖精が住んでいる森の近くや聖域の近くに住んでいることが多いようだ。


 他にも階級が『上級』の鉈、矛、剣、大盾があった。


 リッチが持っていた魔法の杖や指輪、ローブも『上級』でかなり強力なアイテムのようだった。


 魔法の杖は魔力を高め魔力効率を良くし、魔力調整も容易にする機能があるようだ。

 攻撃の際は、魔法の威力を高めてくれるらしい。

 いわゆる『魔法使い』が使う基本的な杖の高性能版のようだ。


 魔法の指輪は、魔法の防御壁を作り出す機能があるようだ。


 魔法のローブは、魔法防御力を備えた頑丈なもので、装着者の周囲に簡易的な防御フィールドを形成するようだ。

 その範囲の温度湿度の調整機能もある高性能品だ。


 ユーフェミア公爵の予想では、古の力のある『魔法使い』が使っていたのではないかとのことだった。

 つまりは、その『魔法使い』が死んで『リッチ』になったということなんだろうが……。


 他に『中級ミドル』の武具がいくつかと『下級イージー』の武具が大量に手に入っている。


 ただ『下級』の武具については、特に必要ないと思ったのでスケルトンたちの回収と同時に全て回収してしまった。


 『中級』の武具と『上級』の武具の処分について希望を尋ねられたので、可能なら魔法の杖と指輪とローブを参考のために頂戴したいと伝えた。


 アンナ辺境伯は、即答で俺に譲ってくれた。

 他の武具についても、武具作りの参考になるだろうという理由で俺に預けるとのことだった。

 武具を作っているのは、妖精族の職人ということになっているのだが……

 まぁあえてこちらから触れるのはやめておこう……。


 領軍には俺の作った『上級』の武具一式があるので、同階級の武具は特に必要ないということなのだろう。



 それから今回の戦闘で、皆レベルが結構上がっていた。


 俺の仲間たちの中で元々レベルが高かったニアたちは、ほとんど上がっていない。


 巡回要員のスライムたちもみんなレベル30以上あったので、大きくは上がっていない。

 数が多いとはいえ、倒したのがレベル10前後の下級アンデッドがほとんどだからね。


 普通の動物たちだった『野鳥軍団』『野良軍団』は、元々レベル3とかだったので皆レベル20以上にジャンプアップしていた。

 ニアたちのパーティ扱いになったのかもしれない。

 どこまでの範囲のアンデッドが、経験値として加算されたかはわからないが……。

 ほとんどは、俺が『魔法の巻物』で倒しちゃったしね。

 ただ俺のパーティメンバー扱いには、なっていないようだ。

 もしそうなら、もっとレベルが上がっているはずだ。

 スケルトンドラゴンの経験値とか凄いだろうからね。


 ニアたちも含めて中庭にいなかったメンバーには、中庭に現れた高レベルのアンデッドやスケルトンドラゴンの経験値は入っていないようだ。

 距離が大分離れていたからだろうか……。


 中庭で俺と共に戦っていた兵士たちは俺とパーティ扱いになったらしく、上級アンデッドやスケルトンドラゴンの経験値もそれなりに入ったようだ。


 レベルが10以上も上がった者が何人もいる。

 元々レベル30程度だったものは、大きく上がったようだ。


 ユーフェミア公爵のように元々高レベルだった人は、それほど大きくはレベルが上がっていないようだ。


 中庭にいる中で、一番レベルのアップ率が高たったのは…………


 なんと!

『オカメインコ』のピーちゃん、『リス』のモグちゃん、『アライグマ』のスリちゃん、『アルマジロ』のマルちゃんという子供たち見守りチームの動物たちだった!


 みんなレベル一桁だったが、今回の戦闘で一気にレベル30以上になっている。


 『マジックスライム』のプヨちゃんは、元々レベル30以上あったので今はレベル39になっていた。

 かなりのジャンプアップだが、ピーちゃんたちほどではないのだ。


 それにしてもレベル30のオカメインコとか、リスとか、アライグマとか、アルマジロとか……どうなんだろう……。


 まぁ見守りチームとして城にきてもらったわけだから、強くなってくれて良かったんだけどね。

 もう戦闘要員としても、いけるんじゃないだろうか……。


 スキルもいくつか獲得しているようだ。

 元々この子たちは『共有スキル』が適用されているから、スキルは防御系を中心に充実していたんだけどね。


 新しく獲得しているのはもちろん『通常スキル』だが、なかなか面白いスキルを獲得したようだ。


 例えば……


『オカメインコ』のピーちゃんは、『ものまね』というスキルを獲得していた。

 なんとなく声色とか変えれそうだから……体が子供な某人気名探偵みたいなことができるんだろうか……。


『リス』のモグちゃんは、『曲芸』というスキルを獲得していた。

 謎のスキルだが……なんかトリッキーな動きをしそうなことだけは予想できる……。


『アライグマ』のスリちゃんは、『洗濯』スキルを獲得していた。

 人間でも『洗濯』スキルを獲得する者は、ほとんどいないようだが……。

 一体どういうことができるスキルなんだろう……ただの洗濯じゃないよね……?


『アルマジロ』のマルちゃんは、『回転運動』というスキルを獲得していた。

 なんとなくだが……ボールのように丸くなって転がるのかな……

 それとも体操選手のように側転やバック転ができるってことなんだろうか……。


 この子たち……大道芸の一座ができそうな感じなんですけど……

 一体どこに向かってしまうのやら……。



 そして、その警護対象だったソフィアちゃんとタリアちゃんは……


 なぜか二人ともレベル22になっていた……なぜに?


 中庭にいたけど、戦闘には参加していなかったはずなのだが……

 それとも少し攻撃とかしたのかな……。


 一応パーティー扱いになったようだ。


 ただ微妙な感じだ。

 完全なパーティー扱いなら、ピーちゃんたちのようにレベル30を超えていてもおかしくない。

 それよりも低い22というのは…… これいかに……。

 一応パーティー扱いにはなっているが、貢献度が低いから入手経験値も低い……みたいなことなんだろうか……。

 相変わらずこの経験値システムは、全くわからないね……。

 やはり様々な複雑な要素で計算しているようだ。


 まぁそんなことよりも、レベルが上がってくれてよかった。

 その分だけ生存率が高まるんだからね。


 スキルもいくつか獲得しているようだ。

 リリイとチャッピーと一緒に訓練している成果だと思うが、二人とも『剣術』スキルも獲得していた。

 おめでとう!



  二人は急激なレベルアップで、レベルアップ疲労になっていたのですぐに休んでもらったのだが、今朝にはすっかり元気になっていたようだ。



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