intermission
秋山菜乃佳の悩み
私達は大抵ニックネームというか愛称とか下の名前で呼び合っている。例外は二人ばかりいる。加美さんと秋山さんだ。
加美さんは昨年の会長選挙勝利の立役者の選挙参謀、そして今は2年生の次席副会長として3年生相手でも遠慮がない。「ようこ」ちゃんと呼べばいいんだろうけど、筆頭副会長である三重陽子ちゃんも同じ「ようこ」ちゃんで区別が付かなくなるので結局「加美さん」という呼び方が定着してしまった。
そして
高校2年生の時の選挙戦。秋山さんは元々1年A組ではクラスメイトだったけど、2年ではC組に振り分けられていた。会長選挙で私が出馬するにあたり、加美さんから私と肇くん、陽子ちゃん以外のクラスについて状況把握をしてくれる運動員を確保して下さいと命令が下り、肇くんが元1年A組の中から2年C組の秋山さんと2年D組の姫岡くんをリクルートしてきてくれたのだった。
秋山さんは1年A組の時も秋山さんと呼んでいた。選挙運動で一緒に教室回りをした時、ふと気になって聞いてみた。
「ねえ、秋山さんの事、菜乃佳ちゃんとか呼んだらダメかな?私の事はミフユでも冬ちゃんでも好きに呼んでくれたら良いし」
「うーん。私、実はニックネームで呼ばれたりするの好きじゃないんだ。他の人達が言い合ってるのは気にならないんだけどね」
「あ、それはごめん」
「ううん。古城さんは気にしなくて良いよ。……私、背が高いでしょ」
「うん」
私も女子としては背が高い方だと思っているけど、彼女は175cmあって目線は私より少し高い。
「バレーボールやってる時はこのタッパがあるのはとってもいいんだけどね」
「秋山さん、強いものね。バレーボール」
「小学生の頃は
「なるほど」
「そこ、同意しなくて良いところ、むしろ笑ってツッコんでくれないとつらい所なんだけど」
「ごめん、ごめん。でもかわいいよ」
「ありがと。でさ、
「?……あ、そういう事か。ごめんね。私が余計な事聞いちゃってさ」
「ぜんぜん。古城さんは分かってくれると思っていたからいいんだ」
バレーボール部のエースアタッカー、身長175cmの美人さんにして「ナノ」というのは言い方によっては凄く傷つける事になる。私が同じ立場だったら言われたくない。二人だけのところで聞いて良かった。みんなの場で言ったら秋山さんも答え辛かったはずだし。
「この話、他に知っている人はいるの?」
秋山さんは首を横に振った。
「小学校の頃の話だからね。あ、姫岡にはちょっと聞かれたからあいつには話したけどね」
「ふーん。姫岡くん、結構そういう所は気が回るよね」
「そこはいいんだけどね」
「でも秋山さん、彼とは仲いいと思ったけど」
「どこが。人の早弁っていうか遅い朝食を覗き見てる奴だしさ」
「お似合いだと思うよ?」
「ない、ない、ないから」
秋山さんは顔を真っ赤にして思いっきり首を横に振ったのだった。
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