ガキとのキス

―選択を間違えた。





アタシはしみじみそう思う。





アタシは現在高校1年生。





けれど彼氏は…小学6年生。





…ぜってー間違えた。





けれど先に好きになったのはアタシの方。





家が隣同士で、コイツが母親のお腹の中にいる時からの付き合い。





いつの間にか…好きになってて、告白したのはつい昨年のバレンタインデー。





うっかり手作りチョコと共に告白して、OK貰った時は嬉しくて、その夜眠れなかったのに…。





今では冷めてきたを通り越して、虚しくなってきた。





予想以上に、コイツがガキだって分かったから…。





「えいっ! やあっ! このっ!」





…今もせっかく二人きりで、アタシの部屋にいるのに、アイツはTVゲームに夢中。





アタシはベッドに座り、そんなアイツの姿を見ている。





付き合ってから、ほとんどこう。





二人きりでもゲームやマンガ、テレビに夢中。





ムードなんて、無いどころかマイナス…。





明るくて、スポーツ万能のアタシの彼氏は、結構モてる。





自覚無く女の子と仲良くするから、アタシはいつもヤキモチ焼きっぱなし。





…まあ精神的に大人になるのは、女の子が先だって言うけどさ。





デートよりも、男友達と遊んだりする方が楽しい年頃だってのも分かる。





……ちょっと早まったかな?





コイツがもう少し大人になるまで、ガマンすれば良かったのかな?


でも最近の女の子達は、成長が早いから…もたもたしてたら、とられちゃうって思って…。





そう考えたらいてもたってもいられなかった。





だから告白したのに…。





「はあ…」





高校に入って、みんな大人っぽくてビックリした。





友人に彼氏のことを聞かれても、誤魔化してばかり。





…本当はちゃんと紹介したいんだけど、コレじゃあなあ。





「ん? どーした?」





「何でも無いっ」





ぷいっと向こうを向く。





「疲れてんのか?」





ゲームする手を止めて、アタシの所に来てくれる。





屈んで、アタシと目を合わせた。





「何か…老けた?」





ドカッ!





「ふごっ!」





強烈な右の拳を、アイツの腹に沈めた。





「…今度言ったらマジ殺す」





「おっおう」





そのままアタシの上に倒れ込んで来たので、受け止めた。





ぎゅっと抱き締めると…やっぱり愛おしさが溢れる。





「ねぇ…」





「なっ何だ?」





「アタシ、アンタのこと好きよ」





「おっおお」





…ダメだ、こりゃ。


やっぱりガキね。





でも好き。ガキのコイツが大好き。





「ちょっちょっと、苦しいって」





「あっ、ゴメン」





ちょっと夢中になり過ぎたみたい。





離してやると、ぜ~ぜ~息切れをしていた。





「ったく。ちょっとは手加減しろよ。体格差とかあるんだからよ」





「…分かってるわよ」





アタシはコイツより頭一つ分、大きい。…何気にへこむ。





「…なあ」





「何よ」





顔を上げると、いきなり肩を捕まれ、ベッドに倒された。





「きゃっ! なっ何すんのよ!」





目を開けると、真剣な表情のアイツがいた。





それでも何か言おうと口を開くと…。





「んぐっ…!」





噛み付かれるように、キスされた。





唇が合うどころか、歯や舌まで…。





「んん~!」





あまりの荒っぽさに、バタバタと暴れてしまう。





「ちょっ、やめっ…!」





顔を横に向けて逃げた。





そして脇腹に蹴りを入れた。





「んがっ!」





「いきなり何すんのよ!」





アイツの体を壁にぶつけて、アタシは起き上がった。





「だっだってお前…、何か物欲しそうな顔してたから…」





脇腹を押さえ、ベッドの上で悶絶しているアイツの姿を見て、アタシはあんぐり口を開けた。





…もしかして、さっきので?





「~~~っ! だからって、いきなり押し倒してキスはないでしょ!?」





「んなこと言ったって、高校生ってすぐにこーゆーことするんだろ?」





……どっから仕入れた情報だ?





「それにさ…」





アイツはふと真面目な顔になって、ベッドに座り直した。





「…お前、可愛いから、奪われちゃイヤだからさ」





「はい?」


なっ何か今、いつものコイツからは考えられない言葉が出た。





「だからっ! 他の男になんか目移りするなよ!」





真っ赤な顔で、指をさしてきた。





「だっ誰がよ! アタシが好きなのはアンタだけよ!」





「オレだって、お前が好きなんだよ!」





「うっ…」





まっ真正面から言われると、心臓に来る…。





「そっそれに恋人なら、キスしたっておかしくないだろ?」





「そっそれはそうだけど…」





何か違う…。





でも、好きだって言われたのは嬉しい。





本当に嬉しいっ…!


だからアイツに抱きついた。





「おっおい」





「…アタシが好きなのは、アンタだけよ」





アタシよりも小さな体。





でもいつかは追い抜かれる。





それまで…待っていよう。





コイツが好きなのは、アタシだけなんだから。





「おっおう」





ぎゅっと抱き締め返されて、胸がいっぱいになる。





………と、思っていたら。





また肩を捕まれて、ベッドの上に…。





「って、何で押し倒すのよ? キスなら起きてでも…」





「いっいや、ホラ。続きは…ベッドの上だろ?」





続き…って、まさかっ!?





「3年は早いわっ! バカガキッ!」





そしてまた、アタシの拳はふるわれた。



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