滋丘透の魔術奇譚

安住ひさ

プロローグ

 ――タルタロスを開けてはならない


 祖父は逝去する前、そんな言葉を遺していった。

 言葉の意味は分からない。何故だか、それ以上の事を教えてくれなかったからだ。

 耄碌もうろくして出てきた言葉なんて事は露にも思っていないけれど、今の今まで不吉な予兆などもなかったので、とりたてて気にする事もなく生きてきた。

 あの日までは――。

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