千十二話 盲目は、してない

「ソウスケさん、今……ふと思いついたのですが、もしこの人と結婚したいと思える人ができた場合、どうするのですか?」


「け、結婚したいと思う程好きな人……か?」


「はい、その通りです」


「………………そのどうするのかって、ちょっと色々と意味が含まれ過ぎてないか?」


突然の恋バナにビックリしながらも、冷静に感じた問題を問う。


「そう、ですね……まず、結婚したいと思う人物が現れた時、結婚しますか?」


「ミレアナ…………なんで、まず俺が誰かを好きになって、その好きになった人が絶対に俺に惚れる前提で話が進むんだよ」


「えっ……ソウスケさんから迫られれば、断ることが出来る女性はいるでしょうか?」


そこまで自分を男として評価してくれているのは……素直に嬉しい。


超絶美人なミレアナにそこまで褒められて、嬉しくないわけがない。

身内贔屓だとしても、嬉しい事に変わりはない。


実際のところ、ミレアナはソウスケが自分の主人だからこそ、そこまで評価しているのではない。


確かに、見た目は世間一般で言うところのイケメン枠に当てはまらないだろう。

後五年……十年も経てば解らないかもしれないが、現時点ではとりあえずイケメンではない。

せいぜい雰囲気イケメンの枠に入るかどうかのライン。


それはミレアナも理解しており、ミレアナ自身……外見をそこまで重要視するタイプではないが、それでもソウスケが主人だからといって盲目的な評価はしない。


しかし、ソウスケはそこ以外の部分がとにかく凄い。


「ミレアナ、別に俺は絶世の美男子とかじゃないんだぜ?」


「それは解っています」


ストレートにそこまでハッキリ言われてしまうと、自覚しているとはいえ、それはそれで心にくるものがある。


面倒? 確かに面倒かもしれないが、人間の感情は大抵面倒なものである。


「ですが、ソウスケさんの凄いところは無数にあります。まず、第一に強さ」


「まぁ……色々と道具は使えど、強い部類ではあるよな」


こんなところでも謙虚さを忘れないソウスケだが、本人も自分が強き者だということは自覚している。


「おそらく、女性は伴侶となる者が強いだけで、非常に大きな安心感を得られるでしょう。パーティーメンバーである私は、とても頼もしい存在だと思っています」


「恋愛結婚云々は解らないが、ソウスケさんが頼もしい存在だというのは間違いないな」


「お、おぉう。サンキュー」


いつも共に行動している仲間からとはいえ、そこまでド直球に褒められると照れるというもの。


「そして強いという事は、稼げることに直結します。ソウスケさんの性格は至って真面目。そういった性格も含めて、その強さがあればこれまで通り大金を稼ぎ続けられます」


(真面目……真面目…………自分にダルい絡み方をしてきた奴は、それなりにムカつくし……場合によってはぶん殴りたくなる時もあるんだよな~~~……って、それは誰でもそうか)


ソウスケ程の強さを持っている者であれば、あまり面倒なバカでもむやみやたらに力を振るってはならない……それが世間の一般常識に近くはあるが、そんなものは面倒なバカにダル絡みされた者には関係無い。


ウザい事はウザく、イラつく事はイラつくのだ。


話は戻り、正確は……一応まともで、無茶苦茶強いとなれば、ソウスケが元居た世界でも確かに大金を稼げる。


「でもさ、冒険者として稼ぐんだから、家を長く空けてる期間とか普通にあるぞ」


「ソウスケさんの稼ぐ金額を考えれば、そんなものは許容範囲でしかないでしょう」


ミレアナの説明通り、ソウスケは活動する場所によっては……一日、もしくは数日でどこぞのプロボクサー並みに稼ぐことが出来る。


それこそ……移動時間はかかるが一か月間がっつりと働き、動き続ければ目玉が飛び出るような金額を稼げる。


「既に持っている財力、経済力が尋常ではない。これも女性からすればこの上なく魅力に感じる点でしょう」


そこに魅力を感じられても、これまでモテてこなかった男としては色々と複雑ではあるが、それはそれで間違っていない。


そしてミレアナの力説はまだまだ続く。

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