七百十六話 余韻に浸ることなく
ミレアナとバーンティガーとの戦いが始まってから約三分が経ち……強者と戦う雰囲気を感じ、いざという時の為の感覚を養うために……さらっと危ない戦い方をするミレアナ。
「流石だな~~。ザハーク、お前ミレアナと同じこと出来るか?」
「……相手の強さによるが、バーンティガー……あのBランクのモンスターを相手だと、厳しいな」
ミレアナはバーンティガーを相手に、近距離から弓や魔法で攻撃し、紙一重で咬みつきや炎爪を躱し続けている。
バーンティガーがは最初から全力を出していた。
身体強化系のスキルを使い、体の火を纏い……全身全霊でミレアナを仕留めようとしている。
後ろにいるザハークやソウスケのことなど、一ミリも考えていない。
体の所々に火を纏っていれば、どこかで火傷を負う可能性がある。
しかしミレアナはその灼熱に一度も焼かれることなく、風矢やウォーターボールにニードルなどを要所要所で叩きこんでいる。
(普通、あんな至近距離で弓を使うかって話だよな。いや、世の中広いんだ。俺が知らない弓使いの強者たちの中には同じことが出来る人たちがいるんだろうけど……始めて見た人にとっては、衝撃的な光景だよな)
ミレアナが使っている弓は遠距離からの攻撃をメインとする業物である魔弓。
決して近距離戦で使う様な小型の弓……もしくはかなり改良が施された、弓に近い武器でもない。
「魔力操作も、相変わらずの上手さだ」
「そうだな……炎の揺らめき? とか、かなり事前に想定して躱してるけど、上手い具合に少量の風で自分に当らないようにしてる……いや、偶に狙ってバーンティガーもやってるし、その点はあっちをも褒めるべきか」
ミレアナが自分の攻撃をあまりにも避ける事態に焦ったが、冷静に炎を纏っている部分を変化させ、虚を突こうとしている。
ただ、虚を突くことだけを意識している訳ではなく、一撃一撃を全力で振りかぶっている。
(普通だったら、あんなことされたら驚くというか、あっさり火傷を負うというか……つか、あんなワイルドなタイプのくせして魔力操作のスキルレベルが五もあるのはちょっと反則なのでは?)
ソウスケたちも十分反則的な存在だが、そんなソウスケもバーンティガーが魔力操作のスキルレベルが五であることに対し、十分驚かされた。
ミレアナはその技術には最初、少々驚き……慌てて突風を発動して回避。
しかしそれ以降は徐々に伸びてくる炎の距離を把握し、これまた紙一重で回避。
(十分ヒリヒリする戦いは味わえましたし……そろそろ終わらせましょうか)
ザハークと同じく、体感時間でそろそろ五分経つことを察し、ミレアナはこの戦いの中で、最大の魔力を魔弓に込めた。
「グゥアアアアアアッ!!!!!!」
自分の命を抉る攻撃が来るのを本能的に感じ取り、即席ではあるが……それでも脅威となる炎のブレスをぶち込む。
拡散されておらず、急ごしらえにしてはミレアナだけを狙う高性能なブレスが放たれた。
「半端ないな」
ミレアナは最後の最後にバーンティガーがブレスで自分の攻撃に対応してくることを読んでいた。
高火力の風矢はブレスを躱して喉に迫り、ミレアナ自身は空中に跳んでブレスを回避。
魔力自体にはまだ余裕があったので、空中に跳んだミレアナをブレスで追うことも出来たが……その前に風矢がバーンティガーの喉を貫いた。
「ッ!! カっ……」
そこでブレスは完全に途切れ、勝負は決着。
勿論、勝者はミレアナ。
「ふぅーーー……暑いですね」
バーンティガーとの勝負に勝てて嬉しいという気持ちは少なからずあるが、ミレアナは勝利の余韻に浸ることなく、バーンティガーの血を垂れ流さない様に早速血抜きを始め、宙に浮かべていた。
「ソウスケさん、ビンを用意してもらってもよろしいでしょうか」
「お、おう」
見事な勝利に拍手を送っていたミレアナがあまりにあっさりしている事に驚きながらも、亜空間からビンを取り出して血の回収作業を始めた。
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