六百三十五話 今のところ順調だが
ソウスケたち三人が楽しくマグマゴーレムやマグマサーペントを狩っている頃、三人に襲撃を行うと決めたギリスたちは二十一階層から極力モンスターとの戦闘を避けながら三十階層以降を目指して進んでいた。
「はっ!!!!」
なるべくモンスターとの戦闘を避けて動いていたとしても、どこかで戦わなければならない場面に遭遇してしまう。
コボルトの上位種と遭遇したギリスたちだが、主力のギリスが参戦したこともあり、サクッと戦闘は終了。
ミレアナの圧にビビってしまったギリスたちだったが、決して口先だけのカスという訳ではない。
それ相応の力を持っており、コンビネーションという点では三人を上回っている可能性もある。
「少し休憩するぞ」
ギルドから買い取った地図を頼りに最短ルートで下の階層に進んでいるとはいえ、その道は決して楽ではない。
そして全員、ソウスケたちの様な体力お化けではないので、途中途中で休憩を挟まなければいざという時、スタミナ切れでモンスターに殺されてしまう可能性が高くなる。
(今のところ、順調だな)
今までタイムアタックを行うかのように急いで下層に降りているが、降りていくペースは決して悪くない。
ソウスケたちに追いつけるかどうかはさておき、良いペースでギリスたちは着実に降りている。
クランのメンバーたちはあまり慣れないことをしているので、少々神経が削れるところもあるため、ギリスはメンバーたちのメンタルを気遣いながら頭の中では奇襲のシミュレーションを行っていた。
ミレアナに対しては少々上から目線で接していたギリスだが、自身が所属するクランのメンバーに対しては比較的優しい。
そんな場面をミレアナが見れば、誰なんだこいつはと頭の上にはてなマークを浮かべるかもしれない。
「よし、行くぞ!!」
休息して体力を回復したら再び最短ルートを走り、階層を降りていく。
ただ、階層の構造自体は変わらないが、罠の位置などはコロコロと変わる。
故に速足で進む場合は、斥候の感知力が重要になる。
「前方に罠の気配を察知。左に寄ってください」
この時の斥候は今までにないほどの集中力を発揮し、進行ルートの罠を全て察知して後方の仲間に伝達。
ギリスたちは一度も罠に引っ掛かることなく、二十五層のセーフティーポイントまで降りてくることが出来た。
(……まだあいつらは三十二層にいるようだな。これならば、十分間に合う可能性はある)
導きの書でソウスケたちの居場所を確認し、ホッと一安心。
仮にソウスケたちが三十五層以降で活動していれば、ギリスたちが追い付く可能性が絶望的に低くなる。
今回の襲撃に集まったメンバーは二十一階層から三十階層の間で活動するには十分な実力を持っているが、三十一階層以降で活動するとなるとそこそこ厳しい。
氷、水魔法が得意なギリスでもまだ三十一階層から四十階層での活動はあまり慣れていない。
「ギリスさん……その、追いつけそうですか」
「あぁ、問題無い。今のペースで降りて行けば追いつく」
ソウスケたちが三十一階層に着いてからは緩やかに探索し、モンスターを狩っている事もあってギリスの言葉通り、今のペースで降りて行けば追いつく。
幸いにも今のところ食料は水分で困る様なトラブルは起きておらず、十人もいるので見張りの人数が足らないということもない。
そして……同じセーフティーポイントで休息している冒険者たちは、何故氷結の鋼牙のメンバーが十人というそれなりに人数が多いパーティーで探索しているのか疑問に感じたが、特にその理由を尋ねるような者はいなかった。
このままソウスケたち三人が先日までの様にダッシュで階層を降りて行かない限り、ギリスがギリギリ余裕をもって追いつくことは可能。
だが、ギリスたちにとって色々と都合が良いと思っている場所は……誰から構わず探索者には牙を突き立てるダンジョン。
油断していれば一瞬の隙を突かれて食い千切られてしまう迷宮。
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