六百二十八話 トレント同じ感覚
一般的なゴーレムと違い、防御力が高いロックゴーレムが三体。
しかしザハークにとって自身が手加減すれば楽しめるような相手ではないので、速攻で終わらせにいく。
(……そこか)
両手に魔力を纏い、敵の魔石位置を確認して懐に潜り込む。
防御力が売りのロックゴーレムだが、魔力を纏ったザハークからすれば抉りやすい土同然。
ささっと懐に潜り込み、魔石を狙って貫手をかます。
そして魔石は壊さず綺麗に取り除く。
心臓である魔石を奪われたロックゴーレムは動きが完全に止まる。
それをもう二回繰り返し、十層のボス戦は十秒程度で終了した。
「お疲れ、ザハーク」
「あぁ……この程度の相手であれば、直ぐに終わってしまうな」
ランクの低いゴーレム系のモンスターは、トレントを相手にしてるのと感覚が変わらなかった。
(エルダートレントなどであれば、まだ楽しめるのだが……降りるまでの我慢か)
強力な遠距離攻撃をかましてくるエルダートレントであれば、ザハークが好物の肉弾戦が出来ずとも戦闘に楽しさが加わる。
ソウスケはザハークの不満さを感じ取れているが、現時点ではどうしようもない。
「宝箱が出ましたね」
「みたいだな……確認は後にしよう」
亜空間に宝箱とロックゴーレムの死体を三つ放り込み、再び探索スタート。
十一階層から最低レベルが二十と上がり、もう完全にルーキーたちでは太刀打ちできないモンスターがゴロゴロ現れるようになる。
中にはザハークの軽い一撃を耐える個体もいるが、それでもまともに戦える個体はいない。
予定通り遭遇したモンスターは倒すが、特に倒しまくらず下を目指す。
そして腹が減ってきたこともあり、上級者向けダンジョンに潜り始めてから二度目の大きな休息に入った。
「…………」
「ふふ、不満たらたらって表情だな」
「む、表情に出てたか」
「完全に出ていましたよ。十一階層に入ってからモンスターの強さは一段階上がったとは思いますが……ザハーク満足出来る個体はいないでしょう」
稀に現れることには現れる。
ミレアナが一階層から十階層の間を探索していた時に遭遇したワームのような、レアモンスターが稀に出現する。
「しょうがないな、軽く俺と模擬戦するか?」
「良いのか?」
「まだダンジョンに入ってから大して戦ってないからな。俺もちょっと体動かしたい」
いつも通り三人はセーフティーポイントで休憩している。
そして周囲の冒険者が涎を垂らしそうな夕食を食べていた。
「でも、同業者たちがいるからそれなりのガチは駄目だぞ。あくまで運動程度だ」
「あぁ、分かった。助かる」
二人の会話を聞いていた冒険者たちは「馬鹿なのかこいつらは」と、思っていた。
ダンジョン内で無駄に体力を消費するなど、馬鹿か阿呆のすること。
冒険者たちはストッパー係と認識しているミレアナに目を向けるが、特に二人を止めようとはしない。
「よし、やるか。言っとくけど、スキルは使わないし武器もなしだからな」
「あぁ、分かってる」
他の冒険者たちに迷惑が掛からないように離れた場所に行き、二人は素の身体能力のみで模擬戦を始めた。
「…………マジかよ」
二人の話を聞いていた冒険者が本当に模擬戦を行うのか気になり、二人が移動した場所まで向かった。
ミレアナはそれを特に止めようとはせず、夕食を食べ終わったので木工の作業を始めていた。
「あの子供、どんだけ強いんだよ」
鬼人族よりの見た目をしているザハークが強いのは解っていた。
しかしそんなザハークと子供であるソウスケが対等に渡り合っている。
お互いに全力ではない。
先程の会話からそれは分かっている。
ただ、同業者たちにとってソウスケの実力は完全に予想よりも上回っていた。
そして二人の軽い運動が終わるまで数人の冒険者は観戦を続け、仲間の元に戻るとその光景を興奮気味に話した。
聞いた冒険者たちは少し嘘臭いと思いながらも、全員が同じような感想を話している事からソウスケの評価を一段階上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます