五百八十八話 私よりも稼いでいる
翌日、ミレアナは受付嬢から伝えられた時間通りにギルドにやって来た。
時間は朝の混雑する時間は既に過ぎており、先日新人の指導を頼んできた受付嬢の姿を直ぐに発見。
「ミレアナさん、おはようございます」
「おはようございます。それで、こちらの三人が先日言ってた三人ですか」
「そうです。こちらの三人にダンジョン内での探索指導をよろしくお願いします」
視線の先には男子が一人、女子が二人。
装備はいかにも駆け出しといった内容だが、最低限の準備はしている。
「……ば、バータです!!! よろしくお願いします!!!」
「フィーネです。よろしくお願いします」
「く、クレアラです。よろしくお願いします!!!」
「えぇ、よろしくお願いします」
三人の装備を見て、それぞれがどういった役割を担っているのかを直ぐに察し、悪くないパーティーだと感じた。
(男の子が大剣を使って前衛を担う。そして堂々とした女の子が斥候として周囲を警戒。もう一人の女の子が魔法で敵を仕留める、といったところですね……私の話を大人しく聞いてくれそうですし、やりやすい仕事になりそうです)
三人ともミレアナの強さなどは正確に解っていない。
だが、自分たちより圧倒的に強いということだけは分かっている。
加えて、ミレアナの美しさにも圧倒されており、指導に反論しようなどという気持ちは全くなかった。
「それでは早速行きましょうか。三人の得意なことなどはダンジョンに着くまでに教えてください」
早速初心者向けのダンジョンに出発。
そして道中の間に三人が何を出来るのか頭に入れる。
(見た通りといった感じですね。ただ、バータ君が大剣を使用するという点はパーティーのバランス的に良いですね)
大剣使いはアタッカーの役割意外にも、タンクの役割を兼任できる。
(フィーネさんは短剣だけではなく、弓も多少は扱える。接近戦だけではなく、遠距離戦も行えるのは好ましい)
メイジであるクレアラ意外にも遠距離攻撃が行える者がいる。
これはパーティーの戦力として幅が広がると言っても過言ではない。
(クレアラさんも火と水の魔法を使える。ルーキーで二つの属性を扱えるのは珍しい……初心者向けのダンジョンではあまり火魔法を戦闘で使うのは難しいですが、火と水が使えるのは冒険者として大変優れている……あともう一人仲間が加われば、いずれ中級者向けや上級者向けのダンジョンに潜れるかもしれませんね)
ミレアナの中で三人は上手くいけば、優秀なパーティーになるかもしれないという認識を持った。
「あの……ミレアナさんは一人活動してるんですか?」
「いえ、もう一人と……もう一体? と一緒に活動しています。二人とも今は鍛冶に専念しています」
「か、鍛冶? えっと、三人とも冒険者なんですよね?」
「パーティーのリーダーであるソウスケさんは高い実力を持つ冒険者ですが、錬金術や鍛冶の才能を持っています。最近は鍛冶をしながら宿に帰ってからは注文を受けた商品の制作を行っています」
そんな冒険者が本当に存在するのか?
首を傾げる三人を見て、思わずそうなってしまう気持ちが理解できてしまう。
それなりに同業者を見てきたからこそ解る。
ソウスケは冒険者として……人としても少々異質な存在だと。
(冒険者から引退して鍛冶師や錬金術師になり、店を持つ人はいるようですが、ソウスケさんの様に冒険者として現役で活動しながら錬金術、鍛冶の両方を行う。そして出来上がった商品を売る人物はこの世のどこを探してもソウスケさんしかいないでしょう)
世の中は広いので、もしかしたらソウスケの様に色んな意味で異質な者がいるかもしれない。
しかしソウスケだけではなく、ジュリアスや他の生徒たちも戦闘以外に錬金術と鍛冶、三つの優れた能力を持ってる人物はソウスケしかいない。
そう断言出来る。
「えっと……ということは、ミレアナさんはギルドの依頼を受けたりモンスターの素材を売ってお金を稼いで、ソウスケさんという方は現在武器を造って稼いでる、ということですか?」
「ザハークも含めて、あまり稼ぐという内容は意識していませんが……働く者として観点からみれば、そういう形ですね。たまにソウスケさんのことをヒモだと思う冒険者がいますが、全くそんなことはありません。寧ろソウスケさんの方が大金を稼いでいますからね」
ミレアナが嘘を言っている様には思えない。
だからこそ、ソウスケという人物がいったいどんな人なのか、余計に想像できなくなった三人だった。
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