四百九十七話 危険はある

通常よりも大きな冒険者ギルドに入り、早速オモシロソウナ依頼が残っていないか探し出す。


いつも通りアンバランスな見た目のパーティーである二人に視線は集まるが、直ぐに絡んでくる気配はない。


「……ダンジョン関係の依頼が多いですね」


「そりゃ三つもダンジョンがあるからな。学生も多いみたいだし、護衛とか必要な素材の収集とかたくさんあるだろうな」


ダンジョンに純粋に潜りたい生徒が護衛として雇ったり、ダンジョンの中で手に入る素材のなかで欲しいと思った素材の入手を冒険者に頼むこともある。


「学園の方から臨時講師として生徒達の対戦相手になって欲しいという依頼もありますね」


「騎士や兵士にならず、冒険者も目指す者もいる。それを考えると早いうちに冒険者の戦い方を知っておきたい。もしくは教えておきたいってのが教師たちの考えなのかもな」


元冒険者が教師として活動している場合もあるが、やはり現役の冒険者と比べれば動きに差がある。


兵士や騎士などが使う基本的な動きと比べ、冒険者は動きは良い意味で動きに雑味があったり邪道な動きを行うのに躊躇が無い。

そこは常に生死を賭けた戦いを続けているか否かで生まれる考えの差だ。


貴族の子息や令嬢の中で、親に厳格な対応で育てられてきた子供達は邪道な攻撃方法に良い印象を持たない。

それどころか卑怯な行いだと批判する生徒もいる。


だが、実戦では全くもって関係無い。

確かに一対一の戦いで外部の者が隠れて味方に強化系の魔法を付与するのは卑怯どころか明確な反則技だ。


「……これ、ちょっと面白そうじゃないか」


「テイマーの方に向けての依頼、生徒にモンスターと戦わせたい……なるほど、面白いというか珍しい依頼ですね」


「だろ。まっ、主に仕事を受けるのはザハークかもしれないけどな。金額は一日で金貨三枚。結構良さげな依頼だと俺は思うんだが」


「条件としてCランク以上のモンスターと書かれていますね。ザハークの強さを考えれば全く問題無いかと」


こういった依頼の場合、従魔の強さが少々足らず、生徒の実力が高かければ最悪従魔が死んでしまうかもしれない。

そうなればテイマーは自分の仲間、家族と思っている従魔を失う事になる。


勿論依頼書にはそういった危険性があるとも書かれており、万が一が無いように基本的に生徒達よりも強いCランクの従魔を募集している。


「それじゃ……この依頼を受けるか」


轟炎流剣術道場からの依頼。


受付嬢に依頼書を渡す。

すると見た目はまだまだ子供。しかしその隣におそろしく美しいエルフの美女。

その組み合わせを見た瞬間に、二人には他にどういった仲間がいるのかを把握した受付嬢をザハークの存在を聞くことなく、依頼を受理した。


「念の為……無駄な心配かもしれませんが、仮に戦闘中に従魔が死んでしまった場合、ギルドも責任は取れませんので、そこはご了承ください」


「分かりました。うちのザハークは超強いんで、絶対に大丈夫ですよ」


こういった依頼を受けた冒険者の従魔が亡くなったケースがゼロではない。

だからこそ、受付嬢は危険性をもっと強く伝えておいた方が良かったのではないかと思い、後悔するかもしれない。


ただ、依頼が終わるまで心配せずともいいようにソウスケは笑顔で問題無いと伝えた。


「ザハーク、面白い依頼が見つかったぞ」


「おぉ、そうか。それはどんな依頼だ?」


「轟炎流剣術道場からの依頼でな。テイマーの従魔と門下生と戦わせたいそうなんだ」


「……モンスターとの戦闘に安全な環境で慣れさせたいという訳か」


「そういう訳だな」


既に道場へのルートは分かっているので、話ながら会話を続ける。


「受付嬢の方からはザハークの怪我、まとは死を心配されましたよ」


「俺の怪我や死……怪我は解らなくもないが、何故死を心配するのだ?」


「過去に例外的なケースがあったんだろ。まっ、逆のケースもあったかもしれないけどな」


従魔が力の調整を誤って門下生を殺してしまう。

そういった事件は……かなり遡れば確かに存在する。


だが、現在ではその辺りの対処もなるべくスムーズに行えるようになっているので、大きな問題は起きていない。


「死を感じさせるような門下生、か……そういうのがいるのであれば、俺は歓迎するがな」


「お前はそう思うかもしれないが、うっかり殺してしまうのだけは勘弁してくれよ」


ソウスケとミレアナが回復魔法を使えるが、流石に死者を復活させることは出来ない。

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