四百六十四話 深いところが腐ってるかも

「はぁーーーー、良い湯だった」


風呂から上がり、髪も乾かし終えたソウスケはベッドにダイブして体の力を抜いていた。


「ソウスケさん、あの技術もあまり人前で見せない方が良いかもしれません」


「水と火の魔力を混ぜてお湯にしたやつか? 別に難しいとは思わないが、三人の反応を見るからに難しい技術ではあるんだろうな」


「その通りです。魔法が得意なエルフでもそう簡単には出来ません。精霊の力を借りれば話は別ですが、本人の実力だけでは出来ない者の方が多いかと」


火や水の精霊の力を借りればお湯を生み出すことはそこまで難しくない、というのがミレアナの感想。

エルフであっても、全ての精霊の力を借りられる訳では無いので、出来ない者は絶対に出来ない。


「でも、別にお湯が出せるからってそんな面倒な事態にはならないだろ。貴族だってお湯が出せるってだけで雇おうとは思わないだろ」


「そう、かもしれませんね。ただ……ソウスケさん、自身が出来る技能を思い出せるだけ思い出してください」


戦闘能力の高さは勿論のこと、錬金術の腕も高い。

その他には鍛冶や木工……ソウスケほど手札が多く、趣味も多彩な者はそうそういない。


(う~~~ん……やばいな。今更だけどヤバい)


戦闘に関しては接近戦と遠距離戦の両方が可能なハイスペック。

護衛としても申し分ない力を持つ。


「思い出せましたか?」


「思い出せた。いやぁ~~~、貴族に目を付けられると面倒だな」


「そういう事です。ソウスケさんに興味を持った貴族が良識のある方なら良いですが、そうでない非常識な方だった場合、宜しくない状況になるのは目に見えています」


ミレアナの言う通り、その様な状況になるのは秒読み。

ソウスケにもその様な事態に対応する術は持っているが、使わずに済むならそれが一番良い。


「なので、あまりお湯は人前で……特に貴族の前で出さない方が宜しいかと。あとアイテムボックスに関してもです。こちらの方が重要かと思われます。ソウスケさんのアイテムボックスは規格外なのですから」


「わ、分った。そうだな、本当に一部の貴族は面倒だ……まっ、王様も細かい部分までは見れていないんだろう」


そもそもな話、国の中枢部の一部が腐っているという可能性も否定出来ない。


「あの子達の性格を考えれば、親の性格が腐っている可能性は低いと思われますが……十分に気を付けてくださいね」


「そうだな、貴族の前ではもう少し気を付けて行動するよ」


なるべくそうしようと決め、ソウスケの意識は夢の中へと消えていった。

翌日、ソウスケ達は特にモンスターの襲撃を受ける事無く朝を迎えられた。


そして野営に似合わない豪華な朝食を食べ、再び火山付近に向けて歩き出す。

森を超えるまでにモンスターと数度遭遇したが、ランクが低いモンスターだったこともあって時間を無駄にする事無く進む。


昼過ぎ頃、ようやくソウスケ達は森を超えて火山付近に到着した。


「三人共、暑さ対策は大丈夫だよな」


「はい、勿論です」


リアス達もソウスケ達と同じ暑さに対抗する為のマジックアイテムを身に着けており、体力の消耗を抑える準備は万端。


「さてはて、本当に珍しいモンスターが現れるのか……楽しい冒険の始まりだな」


「俺としてはその珍しいモンスターが存在すれば嬉しい限りだ」


ソウスケは冒険者らしい探索にワクワクしており、ザハークはとりあえず強い敵と戦いたいので……その珍しいモンスターが実在する事を祈るばかり。


リアス達に関しては自分達の成績に関わっている存在なので、ザハークと同様に実在することを祈るばかりだった。


六人が火山付近に到着し、探索を始めてから約一時間後……ミレアナが何かしらの異変を感じ取った。


(周囲の風と熱が変わった……リアスさん達が言う珍しいモンスターかしら?)


その原因となったモンスターは既に全速力でソウスケ達に向かっていた。

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