三百七十話 またしても見破られるソウスケ
「お兄さん、いったい何者なんですか?」
思っていた内容がつい言葉に出てしまった。
だが、それでも娘にとって心の声を表に出してしまう程に知りたいと思う事実。
「何者って聞かれてもなぁ・・・・・・本当にまだ冒険者になって一年も経っていないルーキーだよ。過去に冒険者だったお爺ちゃんから鍛えては貰っていたけどさ」
嘘設定であるおじいちゃんで何とか誤魔化そうとするソウスケだが、娘はそれを半信半疑の状態。
仮にソウスケのおじいちゃん凄腕の冒険者だったとしても、それだけの理由には思えなかった。
まだまだ質問をしたそうな娘の声を遮って太い声が割って入る。
「リーナ、お客さんを困らすな。誰にでも話したくは無い事情は一つや二つあるものだ」
「あ、お父さん。えっと、その・・・・・・いきなり変な質問してごめんなさい」
「いや、大丈夫だよ。迷惑を掛けられた訳じゃ無いから」
娘、リーナの一般的な正しい態度もあってソウスケは特に迷惑だとは思わなかった。
これが絡んで来た子がクソ生意気で親がそれなりの者ならキッチリ迷惑料を取っていたところ。
(結構ゴツイな。肌が妙に褐色色だし、もしかしてドワーフ? でもその割には身長が高い。俺が今まで見て来たドワーフよりも圧倒的に高身長。そして筋肉質)
「俺がドワーフなのに身長が高いのが不思議か、坊主」
「はい、今まで見て来たドワーフは全員低身長だったんで」
「それが普通だ。俺の場合はどうやら祖先が人族と交わったようでな。偶に俺みたいな高身長なドワーフが生まれるんだよ。ちなみにリーナの場合は俺が人族と結婚したからそっちの血を引いてる。外側はな」
外側は母親の人族に似ている。それなら中は目の前の高身長ドワーフに似ているのでは?
そう考えたソウスケはグラディウスを持つリーナの方に目を向ける。
(十歳程度になればグラディウスぐらいは普通に持てるか。でも、もしかしたら重量武器であるハンマーとかも軽々と持ち上げられたりするのか?)
高身長ドワーフが高身長で筋肉質で生まれたのは遺伝的なものなので、その娘であるリーナが見た目離れした怪力を有していてもおかしくない。
「まっ、俺もリーナが坊主の事を気になったのも解る。見た目は優男って感じだが、結構な修羅場を潜って来ただろ。解る人には解る雰囲気を出してるぞ」
「そ、そうなんですな。それはどうも」
ソウスケもそういった判断の仕方は出来るようになってきたが、それでも自分がそのように言われれば照れる。
「しっかりとした武器は持っている様だし、今日は武器や巡りってところか?」
「はい。ここ数日は鉱山で鉱石を採掘していたんで今日は休日にしようってパーティー内で決めたんですよ。それで自分は武器を見るのが好きなんで武器や巡りをしようかと」
「そうか・・・・・・まぁ、ゆっくりと見ていってくれ」
筋肉質ドワーフはカウンターへと戻り、リーナも店の手伝いに戻る。
長剣、短剣、槍、短槍、手斧、大斧、鉤爪等々、ソウスケはそれらの武器をじっくりと観察する。
そんなソウスケは筋肉質は目で追いながら観察していた。
(冒険者として見た目に似合わない実力を持っているのは確かだろうな。コボルトキングを倒したって話も、まぁー信じられなくはない。ただ、あの武器を視る目・・・・・・ありゃ本当に冒険者の目か?)
冒険者の中にはソウスケと同じようにじっくりと武器や防具を観察する者もいる。
しかし筋肉質ドワーフから見てソウスケは武器を観察しているだけの様には思えなかった。
(今のあの坊主の目は戦いを専門とする冒険者や傭兵に騎士や兵士とは違う、俺ら側に近い眼だ。もしかして副業に鍛冶か錬金術でもやってたりするのか? あの歳でベテランに近い、もしくはそれ以上の実力は持ってるんだ。不思議では無い・・・・・・が、変ではあるな)
ソウスケの場合は両方とも出来るのでかなり変と言える。
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