三百六十八話 ワイヤーカット?

ブリザードリザードの討伐を終えた翌日、ぐっすりと寝た筈のソウスケは朝食後に二度寝をした。

結果半日ほど寝た事になり、体の節々に少々痛みを感じた。


「ヤバいな。流石に寝過ぎた」


体をパキパキと鳴らしながらベットから降りたソウスケは一人で街に出かける。

ミレアナとザハークは既に出かけており、久しぶりに一人で街を散策することになった。


(鍛冶を中心とする街だからか、ドワーフや鬼人族を見かけることが多いな)


基本的に鍛冶や細かい手作業が得意なドワーフ。力が他種族と比べて高い鬼人族。

しかしこの街で鍛冶に携わっている種族は他にも多く、中にはエルフの鍛冶師も存在する。


「さて、昼飯も済ませたしのんびり散策するか」


屋台で昼食を済ませたソウスケは新しい街に来た時の楽しみである散策を始めた。

とは言っても、周る場所はいつもと大して変わらない。


興味のある武器や防具を置いている店に錬金術師が店主をしている店。

興味を持てばどの店にも入ってみたいと思うので、偶に入店ラインが金持ちと限定されている高級店に入る事もある。


そんな場合は当然の様に警備をしている者に止められそうになるが、白金貨を見せれば問題無く入る事が出来る。


(白金貨を見せれば問題無く入らせてくれるのは良いんだが、この白金貨が偽物だとは疑ったりしないのか? まぁ、そこまで見た目がボサボサって訳でも無いから変質者とかには見えないと思うが)


店によるが、警備の者に簡易的な鑑定用のマジックアイテムを持たせるところもあり、客が身に付けている服やアクセサリーに道具の名前や価値、それが本物かどうか程度ぐらいは知ることが出来る。


「あんまり服に興味はもって無かったんだが、面白い事を知ったな」


服を作る職人は裁縫のスキルレベルが上がると鉱石や魔物の素材などを糸に変える事が出来る。

その意図で作られた服は当たり前だが一般的な服とは性能が段違いであり、斬撃等で斬れない服も存在する。


(俺が持っているコボルトキングやワイバーン、パラデットスコーピオン、ブリザードリザードの素材も糸に変える事が出来るって訳か)


モンスターの素材を糸に変える事が出来る。それを知ったソウスケはある武器を思い出した。


(そういえば、漫画に出てくる暗殺者とかはよくワイヤーで対象の人物の首を切断してたりしてたな。そういう感じの糸が作れたりもするのかな?)


この先にまだ暗殺する予定は無いが、糸の細さによっては敵に不意打ちをかますには良い武器。


しかしソウスケには圧潰というスキルがあり、不意打ちに関してはそこそこ有能なので他には要らないかもしれないという提案に至った。


(そもそも俺はモンスターの素材や鉱石を糸に変えるスキルなんて習得してない。それにそういった事が出来る物に頑丈で鋭い糸に変えてくれって頼めば絶対に理由を聞かれるかもしれない)


その武器が原因で後々厄介な件に巻き込まれるかもしれないと思い、諦めることにした。


「お客様、何か商品をお探しですか?」


「いや、モンスターの素材や鉱石を糸に変えた服を見るのが初めてなんで少し驚いてたんですよ」


「そうですか、個々には様々な効果を持つ服がございますのでごゆっくりと見てください」


ソウスケに話しかけてきた店員は冒険者であるソウスケがこの場にいる事自体に疑問は持っていない。

警備の者が通したのならそれなりの乗客なのだろうと。


しかし、店員の目にはソウスケが乗客であってもそこまで金を持ってないだろうと判断し、特に何かを進める事無く去って行った。


(店員さんの性格とか関係無しに、あのセールスマンの目がちょっと苦手なんだよな)


店で買うのは止めようと思い、どこかで素材を糸に変え、服を作れる人物を探そうとソウスケは決めた。

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