三百六十話 流石に勿体無い
採掘を始めてから約三十分。
ハンマーに魔力を纏わせて採掘を行った成果もあり、目的の鉄鉱石は無事に手に入った。
しかも量は採掘依頼に必要な量を完全に越えており、ソウスケが鍛冶を行う練習用の量も十分だった。
「さて、採れるものは全部採ったし、次の採掘場所に向かうぞ」
鉄鉱石は依頼達成に必要な量は収納袋に入れ、自身が使う用はアイテムボックスの中に入れて鑑定を使いながら鉱石の採掘場所を探し続ける。
そして探索場所を見つけること二回。
軟鉄鋼石と玉鋼。
軟鉄鉱石を見つけた時にソウスケが得た感情は単純に知らない鉱石を得て嬉しいというものだったが、玉鋼を見つけた時には感情よりも先に疑問が浮かんだ。
(玉鋼って、鋼を方法は知らんが製錬して質の良い物が玉鋼って呼ばれるんじゃなかったっけ? いや、俺も正しい知識を持っている訳じゃ無いから詳しい事は解らないんだけどさ)
過去に鉱石や宝石に多少の興味は持っていても、正確な知識を持っていないソウスケにはどういった方法で玉鋼が作られるのかは解らない。
ただ、少し考えたのちにある一つの結論に辿り着いた。
(ここは異世界なんだから日本で暮らしていた時の常識が通用する筈は無い!!! うん、玉鋼について考えるのはもう止めよう。刀を造る素材が少量だが手に入ったと思えば万々歳だ)
気持ちを切り替えてソウスケは次の鉱石の採掘に向かう。
だが、そう簡単に行かせてくれないのが鉱山の中に生息するモンスター達だ。
「・・・・・・見た目通りって感じだな」
ソウスケ達の前に現れたモンスターはロックスライム。
表面に岩を纏ったスライムであり、攻撃力に関しては通常のスライムより強い。
(きたきた、スライムお得意のスラ・ス〇ラ〇ク。ある程度生きてるスライムはこの動きが出来るから、集団で行動していないルーキーにとってはちょいちょい危険なんだよな)
体の弾力を上手く扱い、高速で顔面に向かって飛ぶ。
この時に予備動作の時間が短いので、しっかりと動きを確認していないと避けられない。
そして通常のスライムの場合は相手の頭部に激突するのが目的では無く、体の面積を広げて顔を覆い尽くすのが目的なのだ。
口と鼻を覆われれば息が出来なくなり、結果窒息死する。
新人冒険者の一つの死亡例として挙げられているのだが、スライム程度に負けるはずが無いと思いあがっているルーキーはギルド職員の注意を聞かずに相手をし、結果たかがらスライムと嘗めていたモンスターに殺されてしまう。
なので毎年スライムに殺されるルーキーの数は中々減らない。
(あの岩を纏った体で顔面目掛けて突撃されたら顔凹みそうだな)
なんて考えていると三体いたロックスライム全てがソウスケ達の顔面目掛けて飛んできた。
レベルが低く防御力があまり無い者が喰らえば一発で失神ものの突撃だが、三人にはそれに反応出来る眼とスピードがある。
「よ」
「ふぅー」
「ふん」
故に三体とも片手で受け止められてしまう。
そして各々の方法で魔石を体から取り出し、ロックスライムをあっという間に倒してしまった。
「なんか、結構呆気ないな」
「上位種とは言ってもスライムですからね。そこまで強くはありませんからね。攻撃手段も多くはありませんし。ただ、岩では無く鉱石を吸収したスライムならそう簡単には倒せないかもしれませんよ」
「鉱石を吸収したスライムか」
スライムはモンスターの中で一番上位種の種類が多い。
その中には中堅の冒険者であっても気を抜いていたら殺られてしまう可能性がある。
(鉱石にはいろんな種類があるから上位種の数も多くなるんだろうな。ただ、上等な鉱石がスライムに吸収されるってのは・・・・・・うん、どんなスライムが生まれるのか少し気になるが、勿体無いから俺だったらそんな実験は絶対にしないな)
そういった依頼を自分に頼まれたしても、情報だけを聞いて断るとソウスケは心に決めた。
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