三百四十六話 狙ったよな?
刃先が三つに分かれた蛇腹剣を目の前に敵がいると仮定して振り続ける。
途中で刃を一つに戻し、斬るタイミングで三つに分断。
フェイントを混ぜた毒液による攻撃。
幸いなことにモンスターがソウスケと遭遇する事は無く、十分程蛇腹剣を振り続けた。
「あぁーーー、つっかれた。た、多少は使い慣れたか?」
パラデットスコーピオンの能力を反映させた蛇腹剣を使いこなすために、ソウスケは何時も以上に集中していた。
その為かなり汗をかいており、その場に腰を下ろした。
「スタミナは結構ついたと思っていたけど、マジで集中して動き続けてると結構直ぐに疲れてしまうもんだな」
アイテムボックスの中から飲み水を取り出して一気に煽り、更に入れ物を出してコップに注ぐ。
そしてもう一度コップに口を付けようとした瞬間にモンスターの足音が鳴る。
「おいおい、このタイミングでかよ。ちょっと狙い過ぎじゃないか」
丁度自身が休憩しており、気が抜けているタイミングでの襲撃。
しかし対象が油断している隙を突くのは常識であり、戦いにおいて何も卑怯な事では無い。
現れたモンスターはストライクバイソン。Cランクの牛系のモンスター。
得意技は獣タイプのモンスターには多い突進だが、ストライクバイソンのそれは一味違う。
加速した分だけ角が対象に激突した時の威力が上がり、その加速は走る距離によって変わる。
最高速度まで加速したストライクバイソンの一撃は耐久性や魔力の伝達率が特に高く、その鉱石が使用されている装備を身に付けるのは一人前の証。そう言われるほどの冒険者や騎士に兵士等の戦う職業に就く者達から人気の高いミスリル鉱石の板を貫く・・・・・・ことは流石に出来ないが、凹ます事は出来るほどの威力を持っている。
今ソウスケに襲い掛かっているストライクバイソンの加速度は百パーセントでは無いが、七~八割には達している。
激突するその部分だけを考えれば耐えられるものは中々いない。
だが、自身に向かって突進してくるストライクバイソンを見てソウスケは気だるげな表情になる。
「悪いが、今はまともに相手をしたくないんだよ。圧潰!!!」
掌の握り潰す力を上げ、更にはその力を投擲して当たった場所を圧縮して潰す。
今回はストライクバイソンが接近するのを許さず、少し離れた場所で頭部を潰した。
その圧潰による投擲・・・・・・クラッシュボールにより脳は抉られて即死。
だが勢いだけは止まらず、体を前に回転させながらソウスケに迫る。
「見事の血飛沫だな」
頭部があった場所から大量の血を吹き出しながら縦に撒き散らされる。
だがそんな血を浴びたくないソウスケは風を起こして血が掛からないようにし、尚且つストライクバイソンの回転と勢いを止めた。
「本当にいきなりの奇襲だったな。もしかして俺が素振りを止めたタイミングを見計らって襲って来たのか? そこまで頭が良さそうなモンスターには見えないけどな」
偶々だろうと思いながらも、ソウスケは一先ずストライクバイソンの死体を解体することにした。
そして解体が終わるころには、ソウスケの周囲に複数の死体が転がっていた。
「俺が別に殺気や敵意を出していないとはいえ、自分よりデカいモンスターの死体を解体している相手に襲い掛かるかね」
転がっている死体の正体はゴブリンのもの。
解体されているストライクバイソンの死体を狙ってソウスケに襲い掛かったが、ウィンドボールで瞬殺。
そもそもな話、足音や汚い声がソウスケには聞こえていたので初めから奇襲という形にすらなっていなかった。
「・・・・・・こいつらの魔石はいいや」
魔石はいくらあっても足りない状態のソウスケなのだが、今日は気分が載らなかったのでゴブリンの死体はそのまま放置した。
その後、棚から牡丹餅を手に入れた雑食のスライムによってその下は綺麗さっぱりと無くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます