二百五十一話口の中がカチカチと

ランドリザードが勢いよく地面を踏みつけた部分から石の突起が生えていき、ザハークへと襲い掛かる。


そんな地面から襲い掛かるという基本的に避ける選択肢しかない攻撃に対し、ザハークは右腕を振り上げて身体強化のスキルを使って地面を殴りつける。


石の突起が丁度現れようとした瞬間を狙った結果、地面は大きく陥没して石の突起が生えてくることは無かった。


「ふん!!」


そして左拳から突き出された正拳突きにより、一直線に生えていた突起は全て粉々に砕かれる。


ザハークが繰り出した正拳突きの衝撃がそのままランドリザードにぶつかる事無く、既に狙いを変えてミレアナの方へ突進していた。


勿論ミレアナも矢を強化してランドリザードへと放つが、体に刺さりはするものの勢いは全く衰えない。

そしてミレアナとの距離が縮まると体を半回転させて竜尾を振り回す。


繰り出された攻撃はタンクが専門の冒険者であっても簡単に受け止める事が出来る攻撃では無い。


それを重々承知しているミレアナに防御という選択肢は無く、体を倒して攻撃を躱す。


「しっ!!!」


タイミングを見極め、右手からコボルトの上位種の素材から作られた短剣で尻尾の切断を試みる。

相手は下級であっても竜種という事で短剣には魔力が纏ってあり切れ味が増していた。


だがランドリザードも同じことを考えており、竜尾には魔力が覆われていた。


結果、竜尾を斬りつける事に成功はしたが切断するには至らなかった。


そこからの追撃のリスクは高いとふんだミレアナは即座にその場から離れる。

自慢の竜尾が躱されたランドリザードは直ぐ様ミレアナに追撃を仕掛けようとしたが、横から迫る敵意に気が付く。


「ぜえええぇぇああらああああああああ!!!!」


自身に突っ込んできた少年にランドリザードは噛みつきで迎撃しようとするが徐々に少年の体が下に消えていく。

すると自身の咢が開ききる前にしたから強い衝撃が起きた。


身体強化のスキルと足に魔力を纏って強化された押し上げるような蹴りにランドリザードは回転しながら宙へ舞った。


何度も視界が回転して今自分がどの方向を向いているのか分らない。

刃が何本か折れて口の中からカチカチ音が鳴る。

ひとまず安定した視界を確保して着地しなければいけない。


そんな事を考えていたランドリザードの腹部に強烈な痛みが襲う。


「はっああああ!!!!!」


そこまでレア度は高くないが頑丈な大剣の腹を勢いよく振り下ろすザハーク。

自分がどういった攻撃をされたのか解らない、しかし腹部から尋常でない痛みを感じながらランドリザードは背中から地面に叩き付けられる。


地面にかなりの速度で叩き付けられた事で体の重要な器官がいくつか損傷し、ついでに脳も激しく揺れてまともに立つ事すら出来ない。


「意識が朦朧としていれば、急所を魔力でガードしたり身体強化や硬化のスキルに土魔法を使う事だって・・・・・・おいおい、意識回復するの速くないか?」


完全に意識は回復しきっていないが、次誰が自分に攻撃してくるのかだけは解るので徐々に咢を開き土の魔力を集め始める。


しかしその攻撃が完成するまで悠長に待つソウスケではなく、グラディウスの刃に魔力を覆い貫通力を上げる。


「念には念をってな!!」


繰り出された刺突によりランドリザードの喉は容易に貫かれ、集めていた土の魔力は霧散する。

意識がなくなったのかピクリとも動かなくなりランドリザードの命はそこで尽きた。


「そこそこ無傷で倒す事が出来たな。でも・・・・・・口の中はちょっとボロボロだな」


自身の攻撃を加えた結果出来た傷なのだが、やはり全ての牙が無傷とはいかなかった。


「それは仕方ない事ですよ。それより今から解体を初めてしまいますか?」


「ああ。少し離れてあまり他の冒険者に見つからない場所で解体しよう」


ランドリザードの死体をアイテムボックスの中に仕舞ったソウスケは直ぐにその場から二人と一緒に移動する。

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