二百四十一話後ろ盾は欲しい

ソウスケ達が地上へ戻ると、直ぐ様周囲の人達は騒ぎ出した。

一般的なオーガより大きくは無いにしろ、鬼人族では無くオーガが現れたのだ。パニックになるのというのは無理な事だ。


しかし一人の冒険者がオーガの腕に従魔だと証明する輪を嵌めているのに気が付き、周囲に呼びかける。

あのオーガは傍にいる少年とエルフの従魔だ、警備兵を呼ぶ必要は無いと。


その冒険者の声で周囲は落ち着きを取り戻す。

しかし喧騒は止まらない。


「・・・・・・ソウスケさん。周囲がうるさいのは自分のせいでしょうか?」


ザハークとしては感じた事をソウスケに尋ねただけだった。

だが、周囲の人達に衝撃を与えるには十分な出来事だった。


本来ならばモンスターが人の言葉を話すところなど、一般人は見る事など叶わない。

いいや、モンスターと接触する事が多い冒険者や兵士であっても本当に稀にしか遭遇しない。


そんな周囲が再び騒ぎ出す様子を見て、ソウスケは表情には出さずポーカーフェイスを貫いているが、内心ではやってしまったなと思った。


(そりゃモンスターは喋ればこうなるか・・・・・・俺は、おそらく目立たない。けどパーティーの話は別か)


ザハークが人の言葉を喋られるという事は黙っていた方が良かったかもしれない。だが、そこまでザハークに窮屈な思いをさせたくないとい思いもソウスケの中にはあった。


(今俺に後ろ盾は無・・・・・・くはないのか? 一応大きな商会と繋がりはある。ただ、それだけじゃ足りない)


ソウスケは頭を悩ませながらもザハークに言葉を返す。


「周囲が騒いでいるのはザハークが原因かもしれないが、お前が気に病む事は全くない」


「そうですよ。私がソウスケさんと一緒にいる時も似たような事になっていましたから」


ミレアナもザハークに非は無いと伝える。


こうして二人と一体は好奇の目にさらされながらギルドへと向かった。



「それじゃ、ザハークは少しここで待っていてくれ」


「分りました」


ザハークをギルドの表に残して二人はギルドの中へと入る。

そしてクエストボードに向かい手頃な依頼書を二つ取り、受付嬢がいる場所へと向かう。


「すみません、この二つの依頼を受けたいんですけど」


「かしこまりました。ギルドカードを預からせて貰いますね」


ソウスケから渡されたギルドカードを見て、受け取った依頼のランクとソウスケ自身の冒険者としてのランクを合わせて適正だと判断した受付嬢は依頼を受理する。


そして受付嬢からギルドカードを返されたソウスケはザハークの新しい従魔だと証明する輪を受付嬢に欲しいと頼む。


「すみません。新しい従魔の輪を貰っても良いですか? 結構ボロボロになってしまったんで出来れば傷つきにくい物を」


「かしこまりました。従魔はどういったモンスターでしょうか」


「オーガです」


ソウスケの口から聞いた従魔の名前に受付嬢の顔はポカーンとしものになっていた。


「えっと・・・・・・すみません。もう一度聞いてもよろしいでしょうか」


「はい。自分の従魔はオーガです。な、ミレアナ」


「ええ、少し珍しいかもしれませんがオーガには変わりません」


後ろに付いているミレアナも自分達の従魔はオーガだと断言するが、それでも受付嬢は未だに半信半疑だった。

そんな受付嬢の様子に見せた方が早いなとソウスケは思い、外に実際に見て貰う事にする。


「外に待機させているのでとりあえずその目で見てください」


「は、はい。すみません。嘘をついていないとは思うのですが、少し信じられなくて」


自身の見た目は解っているので、ソウスケは受付嬢の信じられないという言葉に対し特に反応はしない。


そして三人が外に出ると・・・・・・そこには子供と戯れているザハークがいた。

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