二百二十六話細かい作業ってサボりたくなるよな

「なるほどなぁ・・・・・・ただ俺にとっては有難いパーティーって訳だ。素材を気にせず殺す事に専念すれば不覚を取る事はそう無いだろう」


蛇腹剣のおおよその射程距離を考えればソウスケにとって距離などあって無い様な物。

魔石さえ傷つけなければ低ランクのモンスターを倒す事ぐらい訳は無い。


「ただ、どういった条件下でモンスターパーティーが起こるか分からないので意図的に遭遇するのは不可能かと」


「だろうな。寧ろ一般的な冒険者はそのモンスターパーティーが起こる条件や、前触れを知りたいはずだよな」


「でしょうね。それが解るだけでもパーティーの生存率が大きく変わってきますから」


パーティーの生存率と聞いて、ソウスケの頭の中に気になるアイテムが頭の中に浮かんだ。


(そう言えばダンジョンの中から一瞬で外に出られる帰還石ってのがあるんだったな。俺とミレアナ、そしてザハークが成長すればそれを使うような状況にはそうそうならないと思うけど、やっぱり万が一に事を考えれば欲しい。ただ馬鹿みたいに値段が高いらしいんだよなぁ~~~)


ダンジョンの中から一瞬で地上へ帰還する事が出来る。

それはダンジョンを探索する冒険者からすれば喉から手が出る程欲しいマジックアイテムだ。


しかし運良く帰還石を手に入れたランクがC以下の冒険者は、帰還石の買い取り価格の値段を見てそこまでパーティーが危機的状況に陥る事は無いだろうと思い売ってしまう。


逆にBランク以上のダンジョンを探索する冒険者はパーティーの全員が一つ常備している。

それ程までに帰還石がダンジョンを探索している中で重要なアイテムなのかを理解している。


帰還石を売ってしまったばかりに最後の最後で後悔する冒険者も少なくない。


「・・・・・・下層の方に行けば手に入る可能性もなくは無いか」


「ナニカホシイモノガアルンデスカ?」


「帰還石ってマジックアイテムが欲しいなと思ってな。普通に買うと高い。いや、買えなくはないかもしれないけど、ダンジョンの宝箱から探す方が早いかと思ってな」


「そうですねぇ・・・・・・・・・・・・このダンジョンの階層数から考えて、ラスト五層辺りなら帰還石が見つかる可能性もあると思います。ですがそれでも可能性は低いと思いますよ。それで・・・・・・ソウスケさんは何を作っていらっしゃるのですか?」


ミレアナはソウスケがトレントの木を削って何かを作っているのかが気になっていた。

ザハークも言葉には出さないが目線がソウスケの手元に集中している。


「トレントの木はある程度固いからこれで木刀でも作ろうかと思ってな」


「木刀・・・・・・摸擬戦用の武器という事ですか?」


木刀という言葉を知らないミレアナはギルドで置いてあるような摸擬戦で使う武器だと思った。


「確かに摸擬戦でも使えるかもしれないが、トレントの木を使えば実戦でも使えるかもしれないと思ったからな」


「・・・・・・モンスターニガイショウヲオワセズタオスタメデスカ?」


「その通りだ。お前本当に頭良いよな」


「なるほど。その木刀で戦えば内傷だけで相手を倒す事も不可能ではないですね」


モンスターの素材を傷つければ勿論買い取り価格の値段が下がる。

ソウスケは自身が必要ないと思った素材は基本的にギルドで売る為、少しでも素材に傷が無い方が有難い。


「まぁ、皮膚や甲殻が固い系のモンスターには効果今一つかもしれないけど。これなら武器の整備もいらないし、壊れたらそう時間をかけずに新しいのも作れるからな」


「・・・・・・一番最後のが本音ですか?」


「おう、戦いを終えた後の武器の整備が大事だってのは解るけど、そんな事を全くしてきたことが無い俺にとっては面倒に感じる」


興味や関心がある事以外の細かい作業は基本的に好きでないソウスケにとって、武器に整備はそこまで時間が掛からずともついサボりたいと思ってしまう作業だった。

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