転移したらダンジョンの下層だった

百九十八話確認しておきたい事

「・・・・・・また草原か。別に嫌って訳では無いけど、階層の状況を見る限りお目当てのモンスターはいなさそうだな」

「そうですね。森林のような階層に入らなければ目的の物は手に入らなそうですね」

ソウスケ達は三日間かけてのんびりと探索を進め、五階層までたどり着いた。

二人の冒険者ランクを考えれば少し速いペースなのだが、二人はゼアストから買ったテントの性能のお陰で睡魔と戦わずに順調に階層を下っている。

「情報が無くても何とかなるとは思っていたけど・・・・・・・・いや、実際に何とかなってはいるけど、どの階層にどういったモンスターがいるかくらいは知っておいた方が良さそうだな」

「なら一旦地上へ戻りますか？」

「・・・・・・いや、取りあえず五階層まで来たんだからこの階層だけ探索しておこう」

正直何か得る物は無いだろうとソウスケは感じているが、せっかく降りて来たので一応珍しいモンスターがいないか確認しておきたかった。

「分かりました。それではこの階層の探索が終わった後、移動速度を上げて四層に戻って野営をし、睡眠を取ってから全力で走り地上へと戻りますか？」

「・・・・・・うん、良い案だな。そうしよう。その方が無駄な時間を過ごさなくて済むしな」

初めて探索をする場所に時間をかける事は嫌いではないが、既に探索を終えてさらに旨味の無い場所で時間をかけるのは好きではない為、ソウスケは直ぐにミレアナの案を採用した。

「分かりました。それでは地上に戻ってからギルドに向かい情報を買い取りましょう」

「それが一番堅実な方法だな。でも俺が言っても素直に渡してくれるかどうか・・・・・・」

「軽く脅しますか？」

「それは駄目だ。絶対にやめてくれ！」

ミレアナの脳筋発言に対しソウスケは直ぐに却下する。

この時ソウスケはミレアナが段々と自分がバカにされる、侮辱されることに対してミレアナの対応が過激になってきているのに気が付き、どうすれば良いのか悩み始める。

(俺の事を大事に思ってくれているのは素直に嬉しいんだが、俺をバカにする奴らや見下す奴らへの対応が過激と言うか脳筋的と言えば良いのか・・・・・・取りあえずそういった対応は基本的に止めてもらわないとな)

ソウスケ自身もミレアナの事をバカにされれば黙っていられる自信は無いが、なるべく目立ちたくないがソウスケの心情なので目に見える暴力的解決はあまりしたくはなかった。

ただ、自分の容姿ではまず格下に見られるのは必然。ミレアナが対応するにしても女だからという理由で高圧的な態度を取られる可能性が無いとは言い切れない為、ミレアナの言う事も一理無くはないと感じた。

「でもそうだな・・・・・・・・・・・・ダンジョンに入る前にやったような体から魔力を溢れ出す様な真似はしないで欲しいけど、私強いですよって感じの雰囲気を出して欲しいんだよ。魔力を溢れ出させない程度にな」

「・・・・・・なるほど、ソウスケさんの言いたい事が大体分かりました。なるべく手を出さない様に、手を出すにしても手を出したとばれない様に対処すれば良いんですね」

「まぁそうだな。・・・・・・うん、なるべく後者にもなって欲しくないがそんな感じで頼む」

二人の会話が終わり、前方意識を集中させた瞬間に一体のモンスターが襲い掛かって来た。

「おっと、気配感知を使っていなかったら危なかったかもしれないな。・・・・・・んん？　ちょっと違うな」

初めて出会うモンスターに地上へ戻らず、探索を続けて良かったとソウスケは思った。