百九十五話だから要らないって

「なぁ、そこの少年とエルフのお姉さん、俺達と一緒にダンジョンに入らないか?」


「パーティーメンバーは二人だけなのか? ならタンクの俺が入れば丁度良いバランスになると思うぜ!!」


「俺はこれでも五階層までならどこでも案内出来るんだ。サポーター兼案内役として俺と一緒に野良パーティーを組まないか?」


全てという程ではないが、大半の冒険者達がソウスケ達の元へ勧誘、売り込みにやって来た。

二人だけなので丁度勧誘と売り込みがしやすい人数。


ただ、大半の冒険者がソウスケではなくミレアナの方へ声をかけていた。


(こいつら・・・・・・おそらくミレアナが俺の保護者って感じに見てるんだろうな。じゃなきゃもう少し俺に目線を合わせる筈だし)


こういった事態になるのはある程度予測していたが、いざ目の前で起こるとかなりイラッとしてしまう。


(俺はミレアナのおまけ程度にしか見ていないんだろうな・・・・・・さて、注目が集まっているミレアナさんは・・・・・・結構ムカついている感じか?)


勧誘、売り込みに来る冒険者の殆どがソウスケを見ずに自分に話しかけているのが気に食わず、ミレアナの眉間に少しずつ皺が寄り始める。


(私よりソウスケさんの方が強く、手札も多い。そして料理まで出来る超オールラウンダーだというのに、何なんですかこの人達は。私では無くソウスケさんの方を見て頼み込みなさい!!)


明らかにミレアナが不機嫌だというのをソウスケは確認した。

本来なソウスケが目の前の冒険者達の申し出を断らなければならないのだが、絶対に自分の話を聞かないだろうと予想出来たソウスケは目でミレアナに追い払う様に合図を送る。


(ミレアナが特に必要ないと言えば帰ってくれるはず・・・・・・多分。というか、俺としてはミレアナが申し出を断るというより、喧嘩を売るような言葉を出さないかが心配だ)


ミレアナはソウスケより前に出ると目を細めて冒険者達の申し出を断る。


「申し訳ありませんが、私達は二人でダンジョンに潜りますので」


「そんな、二人でなんて流石に危険だ。普通は四人以上のパーティーで潜るんだ」


ミレアナの発言に驚いた男の冒険者が、一般的にダンジョンへ潜るパーティー人数を伝えるがそれはミレアナにとって興味が無い情報だった。


「私達は目的がこのダンジョンに来ています。それを手に入れれば直ぐに地上へ戻るのでこれ以上の人数で探索は無意味です」


本当は伝えるつもりは無かったが、ミレアナは今回ダンジョンにやってきた目的を伝える。

ただし全てを伝える必要は無いと判断し、嘘を真実を混ぜて話す。


「なら尚更俺みたいなダンジョンの案内が出来てるサポーターが必要だと思うぜ」


一人の冒険者が自分を親指を向けて自慢げに胸を張る。

しかしその提案をミレアナは即座に切り捨てる。


「いえ、その必要はありません。先程も伝えた通りこれ以上人数を増やすつもりはありません。森の中で探索では他の種族に後れを取るつもりはないので」


自身がハイ・エルフという事は伝えなかったが、お前たちが森の中でエルフにあらゆる面で勝てるのかと挑発じみた言葉を向ける。

それに対して人族の冒険者はたじろいてそれ以上何も言わなくなってしまう。


勿論森の中での戦闘や探索でエルフより優れた冒険者はいるが、二人に勧誘と売り込みに来た冒険者達の中には自信を持って上だと答えられる者はいなかった。


しかしミレアナにそこまで言われても引き下がらない冒険者大きな声で触れてはいけない部分に触れてしまう。


「け、けどよう。そんな子供のお守りをしながらダンジョンを探索するのは厳しいだろ。だからここは人数を増やした、ほうが・・・・・・」


(ちっ、この阿呆が。多分ミレアナ的に触れたらダメな部分を喋ったみたいだな)


遠回しにソウスケをバカにされたミレアナはから徐々に魔力が漏れ始めていた。

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