百八十九話夜襲

「まぁ、そういう事も起こり得るから、何事もないのが一番さ。ところで、ソウスケ君たちはウドモーキに着いたら少し時間を潰してから戻るのかい?」


「いえ、ウドモーキにあるダンジョンに用があるんで、少しダンジョンに入って目的を果たしてからモバールに戻ろうと思っています」


「ウドモーキにあるダンジョンっていうと・・・・・・中が森型のダンジョンか。懐かしいな、僕達も昔ウドモーキのダンジョンに入った事があるよ。まぁ、その時は今よりレベルが低くて装備や道具もしっかりとしていなかったから一層か二層程度で戻って来たけどね」


ブライド達がこれから自分達が挑むダンジョンに入った事があると分かり、ソウスケは中の情報を聞こうと思ったが、ブライド達が潜った階層は浅く言葉からしてかなり前の出来事判断して情報を得るのを止めた。


(何階層あるのか知らないけど、ある程度深いところまで潜るつもりだからな。情報は現地で集めればいいか・・・・・・最悪情報無しでも気を緩めなければ何とかなるだろ)


自身の目的と外見を思い出した結果、情報を集めない方が良いかもしれないという考えに至った。


考えがまとまった瞬間、ソウスケの耳に森の方から小さな音が聞こえた。

そして直ぐに気配感知の範囲を広げた結果、人でない事が分ったが念のため鑑定を使う。


(距離があるかから視れるか心配だが・・・・・・よし、大丈夫みたいだな)


鑑定を使った結果グレーウルフと言う狼タイプのモンスターが三体いると解った。

そしてソウスケは隣にいたブライドに声を出さずにグレーウルフの事を伝え、ブライドが他の見張りにジェスチャーで伝える。


見張りの冒険者達がテントの中で寝ている仲間を起こそうとしている間に、二体のグレーウルフが襲い掛かる。


「一体はお願いします」


「了解、任された」


片方のグレーウルフをブライドに任せたソウスケは四本持っていた短剣の内、二本を時間差で投擲する。


ソウスケ達を食い千切ろうと考えていたグレーウルフの大きく開いた口にまず一つ目が突き刺さる。

綺麗に短剣はグレーウルフの喉に突き刺さり、口から吐血を漏らす。


そして空中で動きが止まったグレーウルフの喉元に二本目の短剣が深く突き刺さる。

脳へ送られる酸素の供給が経たれたグレーウルフはソウスケの一メートル手前で尻から地面にぶつかり、ソウスケに攻撃を加えようと体を無理やり動かそうとするが、そのお陰で喉から更に血を吹き出し力なく倒れた。


「あっけないな。ブライドさん・・・・・・も、終わったみたいですね」


「ああ、真正面から跳びかかって来たからね。スラッシュだけで倒せたよ」


スラッシュ・・・・・・剣術スキルのレベルを上げれば得られる技の一つ。

自身が振った刀身から斬撃が飛び標的を斬り裂く。


ソウスケがグレーウルフの死体を見ると顔から胴体の半分程まで切断されていた。


(・・・・・・うん、相変わらずグロイな。んで、逃がす訳無いだろ!!)


攻撃に加わらず陰から様子を見ていた最後の一匹が逃げる前に、ソウスケは一本の短剣に魔力を込めて上から投げつける。

地面に向かって放たれた短剣はグレーウルフの片足に魔力の刃を纏った短剣が突き刺さり、グレーウルフの足を地面に縫い付ける。


そして最後に放たれた短剣がグレーウルフの半面を抉り飛ばした。

顔が半分亡くなったグレーウルフは足が縫い付けられているためその場から一歩も動けずに崩れ落ちる。


「・・・・・・うん、上手くいったみたいだな。取りあえず魔石だけ回収して死体は地面に埋めておくか」

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