百七十五話目の前にいるだろ

部屋に入って来たパーティーの人数は五人。男が三人で女が二人。

五人の外見を見て、ソウスケは取りあえずチャラいなと感じた。


(約束の時間に遅れて来たって訳じゃないから、冒険者としてはまともな分類になるのか? でも見たところ腕はブライドさん達の方が上だな)


ソウスケが五人の力量を直感的に判断していると、ブライドが五人組パーティーのリーダーに声を掛ける。


「時間に遅れて来た訳じゃないけが、もう少し早く来たらどうなんだバックス」


「はっ、時間通りに来たんだからそれでいいだろ。相変わらず頭が固い野郎だな」


「いや、頭が固いどうこうの話じゃないんだけどな・・・・・・取りあえず全員そろったんだ。話し合いを始めよう」


五人が椅子に座ったのを確認したブライドは手を叩いて話し合いに入ろうとするが、バックスがそれを遮ってブライドに質問する。


「おいおいブライド、まだ三つ目パーティーが来てねぇだろ」


「・・・・・・何言ってるんだお前は。そこに二人いるじゃないか」


ブライドは隣に座っているソウスケとミレアナを指して二人が三つ目のパーティーだと説明する。


その言葉を聞いたバックスだけでなく他の四人も一斉に笑い出す。


「はっはっはっはっは。ブライド、お前はいつからそんな冗談を言えるようになったんだ!!?? 流石に腹が痛いぜ!!」


「はぁーーー・・・・・・取りあえずその馬鹿笑いは止めろ。それと俺が言ったのは冗談でも何でもない。本当の事だ」


ブライドの真剣な声と表情で冗談を言っているのではないと分かったバックスは、ソウスケに不信感を抱き始めた。


「そこのエルフの女は分かるが、そこのガキが依頼に参加するってのは納得出来ねぇーーなぁーーーー。ブライド、俺は仕事中にガキの面倒を見る気はねぇぞ」


バックスはソウスケを睨み付けるが、ガキガキと言われているソウスケは特に何とも思っておらず、寧ろ表情にこそ出していないが内心でバックスを阿保だなと笑っている。


(ふふふ、この人見た目通りに阿保だな。護衛依頼なんだから基本的に誰でも受けられ訳じゃなく、受付嬢がこの冒険者なら受けとも良いと判断した冒険者しか受けられない事ぐらい分かってる筈だよな? まぁ、それは全ての依頼において言える事なんだが、なぜ受付嬢が俺達に護衛依頼を受けても良と判断を下したかぐらい理解出来ないのか?)


ソウスケの内心は穏やかな状況と言えるが、主人をバカにされているミレアナはソウスケと同様に口にこそ出していないが、内心は穏やかではなかい。

どのラインを超えたあたりで目の前の阿保に制裁を加えていいのかを考えている。


そしてバックスは席を立ってミレアナの方へ近づいてくる。


「なぁなぁエルフの姉ちゃん、こんなクソガキと一緒にパーティーなんて組まずに俺らのパーティーの来いよ。たくさん良い思いをさせてやるぜ」


そんな下心丸見えな笑みを浮かべながらミレアナに近づくバッカスを見たブライドとリーナは、こいつ明日の護衛依頼に参加できないかもしれないなと割と本気で思った。


バックスのニヤついた笑みを見たミレアナは鳥肌が立ち、自制心が切れかけてミスリルの短剣に手を掛けようとする。


だが、その前にソウスケの手が先に動いた。


「なぁ・・・・・・ミレアナは俺のパーティーメンバーなんだよ。そんな汚い笑みを浮かべて近づかないでくれるか。潰したくなるだろ」


ソウスケの手から伸びている魔力の刃はバックスの喉元に突きつけられていた。

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