護衛依頼の時に必要な物を二人は着々と集め、ミレアナの武器以外は全て買い終え、二人は食堂で夕食を食べていた。

「・・・・・・依頼の為の準備はもうちょい時間が掛かるかと思ってたけど、一週間で終わったな」

「今回の依頼に関してはそこまで必要な物が多い訳では無かったので、妥当な時間じゃないでしょうか。それに干し肉の件を考えれば後二週間あるのは幸いな事だと思いますよ」

ミレアナは元々自給自足に近い生活をしていた為、干し肉を作るのに必要な大体の時間は分かっていた。

「それもそうだな。後は一度他のパーティーと集まる日まで体が鈍らない様に動かして、今のうちにあれを造れるだけ造っておいた方が良さそうだな」

依頼が始まればエアーホッケーは造る時間・・・・・・と言うより、プライベートが殆ど無くなるためソウスケとしては依頼が始まるまでに数台ほど造っておきたかった。

(そのためにはもっとモンスターの魔石をとっておかないとな)

ソウスケのアイテムボックスの中にはまだ無数の魔石が入っているが、エアーホッケーを造るのに必要な魔石の量を考えると、底を尽くのがそう遠くないと思った。

(生態系を崩さない程度にモンスターを狩っておくか。・・・・・・後は依頼が始まるまでにあれを体験しておかないとな)

ソウスケは頭で理解はしているが、実際に行動に移せるのか本番になってみないと分からない体験を、護衛の依頼が始まる前に済ませておきたかった。

「・・・・・・ソウスケさん。表情が怖くなっていますけど、何を考えているんですか」

「何って、本当はなんとなく分かっているんだろミレアナ。俺にはまだ経験が無いからな。ミレアナはあるか？」

「はい。本当に偶にですけど私達を攫って売ろうとする人が来たので、その時に経験しました」

ソウスケからの質問に返したミレアナの表情には特に苦々しいものは無く、至っていつも通りの表情だった。

「そうか。・・・・・・俺のいたところでも、場所によってはそれが日常で起こるところもあったかなら」

地球で未だに紛争を続けている国をソウスケは知っている。そもそも大前提に日本も少し前まで戦争をしていた。

その戦争で一つの兵器により多くの人が無くなったのも勿論知っている。

(人の命は簡単に消える。法律によって人が人を殺す行為がおそらく少ない日本でも死ぬときは簡単に死ぬ。交通事故でだって運が悪ければ一発であの世行きだ。そしてこの世界ではもっと人の命が軽い)

自分が持っている身体能力や武器、魔法を使えば格下であるならば簡単に人を殺す事が出来る。

それをソウスケはしっかりと理解していた。

「・・・・・・はぁ～～～、覚悟を決めておかないとな」

この世界で今のところ自分を襲って来る相手は、基本的に相手が誰であっても殺しに来るような殺人者・・・・・・盗賊や山賊の様な者達しかいないと、異世界に来てからの自分の行動を振り返った。

まだ個人的な恨みで自分を殺しに来る人物はいない筈・・・・・・と思ったが、約二名ほど自分に殺す気かどうか分かっていないが、襲い掛かってきそうな人物を思い出した。

(ガキ大将冒険者と・・・・・・レイガ、だったか？　その二人は俺に襲い掛かってくるかもしれないな。いやいや、あんな雑魚二人はどうでも良いんだよ。相手は躊躇なく人を殺しに来る相手だ。あの二人と山賊達の技量や躊躇いの無さを一緒にするのは良くないな)

かなり手加減をして数回攻撃を加えただけで倒れた相手が襲い掛かって来ても、正直話にならないとソウスケが思っていると、後ろでソウスケ達と同じ食事中の冒険者達の会話がソウスケの耳に入って来た。

「そう言えば最近ロウン村に行く途中の道で山賊に商人が襲われたらしいぞ」

「俺もその話聞いたぞ。確か護衛の冒険者は殆ど殺されたらしいな」

「それをギルドに報告した冒険者って確かＤランク奴だろ。人数の差もあるかもしれないが、Ｄランクのパーティーとその他のパーティーを殆ど壊滅させる山賊か・・・・・・絶対に遭遇したくない相手だな」

ソウスケの耳に入って来た情報は、第三者にとっては悲報だがソウスケにとっては朗報に近い情報だった。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい