百十七話ミスる可能性も無くはない

ソウスケの魔力に関する技術はともかく、水を冷やせば氷になる。ならその冷やすのを手伝う事が出来る魔力は何か? おそらく風だろう。

そんな発想からソウスケは氷魔法を習得する事が出来た。


溶岩魔法も同様、岩をドロドロにするには超高温の火力が必要だ。なら火の魔力で表を・・・・・・中まで溶ける程高温で焼こう。それこそマグマの様な獄炎で。そうして溶岩魔法を習得した。


大した知識な訳では無いが、この世界の人達が考え着かない様な事をソウスケは知っていた。

人が生きるのに最も必要な物、それを瞬間的に奪う方法は少しだけ時間が掛かるがソウスケは思い付き、実行した。

その結果を見たソウスケはそれを本当に使わなければいけない時以外、絶対に使わないと決めた。


といった感じの前の世界での常識がこの世界では常識ではなく、またそれを知ろうともしていない。


それ故、ミレアナもソウスケになぜ自分が氷魔法を習得できたかの、仮説を聞かされてもいまいち理解できなかった。ただ、ソウスケとしては無理に理解して欲しいとは思っていないので、一旦説明を切り上げた。


「まぁ、とりあえず俺はそんな感じで魔法・・・・・・じゃないな。違う属性魔力を混ぜ合わせる事で、違う属性魔法が使えるようになったんだよ」


「混ぜ合わせる、ですか」


「そうだ。ただな、溶岩魔法なんかはしっかりと岩の芯を残しておかないと、ただのマグマになってしまうからな。まぁ、それはそれで使い道がありそうだけどな」


ただ混ぜるだけでは上手くいかず、魔力の比率を間違えれば思っていた攻撃と違う物になってしまう。

習得し、スキル欄に名前が載れば話は別だが、そこにたどり着くまではそのコントロールが難しく、ソウスケも苦戦していた。


「あ、あんまりこの事は他人に言わないでくれよ」


「は、はい! 勿論です!!!」


ソウスケがミレアナに伝えた内容は、完全に他人には見せない説明しない己だけの武器、秘密とも言える物だった。上の方の冒険者になると、一つや二つそういった切り札・・・・・・ジョーカーや旨い稼ぎ場所等の秘密がある。

その中でもソウスケがミレアナに話した内容はトップシークレットとも言える内容であり、ミレアナは絶対に口を滑らさない様にしなければと心に誓った。


「さっ、この話は終わりにして作業を再開しようぜ」


「そ、そうですね」


自作のパレットに塗料を少量入れ、水を含んだ筆で色を作っていき、まずはゴブリンフィギュアの塗装を始めた。

ミレアナもソウスケに負けじと気合いを入れ、指先に風の魔力を集め作業を再開させた。


作業を終えて二人が就寝してから十時間後、目が覚めた二人は食堂で朝食を取っていた。


「今日の予定はどうするんですかソウスケさん?」


「そうだな・・・・・・特に予定はないから、体が鈍らない様に外に出て軽くモンスター討伐といこう。森の中を動き回っていれば、何か面白い事が起きるかもしれないしな」


マーカスの息子と会うまでにはまだ期間があるため、戦う感覚が鈍らない様にと街から出てモンスターと戦おうと思っていた。

ミレアナはソウスケの提案に特に不満は無いため、同意という意味を込めて頷き返した。


そして二人が朝食を食べ終え街を出てから約三時間、モンスターと出会うことは出来たが、大したモンスターとは出会う事は無く、戦闘が始まれば三分と経たず終わってしまっていた。

どちらかと言えば探索中に見つけた薬草や天然の果物を採集している時間の方が長いといえるかもしれない。


二人は三時間の間にアイアンアントが五体、スライムが七体、ヒートスライムが三体、コボルトの上位種七体と戦った。


アイアンアントはEランクのモンスターとしては防御力が高く、攻撃しようとした武器が欠ける折れるという事が起きなくもないが、二人がすれば特に気にしない問題でありソウスケは魔力を纏った拳を一撃ぶち込ませてKO。

ミレアナは足を風の刃で斬り落としてから脳天に風の弾丸をぶち込んで瞬殺、


スライムに関してはソウスケの石の投擲で呆気なく終わり、ヒートスライムはソウスケが体が燃えていたら火事の原因になるんじゃないかと思いながら水の球体をぶつけて鎮火。


コボルトの上位種も、二人のランク通りの冒険者達ならかなり危険な状況に遭遇してしまった様に感じるが、ソウスケは長剣を使って、ミレアナは短剣を使い襲い掛かって来る敵の攻撃を躱し流して急所を斬り裂き、戦いは直ぐに終わった。


だが、二人はコボルトの上位種の数が少し気になっていた。

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