第10話 騒ぎ



 本を買った後、馬車に戻る途中で奇妙な現場にであった。

 重要そうな建物の前に、人だかりができていたのだ。


「なにかあったのかな」

「あの建物は、確か……」


 シオンは何か事情を知っているらしい、険しい顔をして建物を見つめている。


 彼女に聞いて、答えてくれるだろうか。

 とりあえず、分からない事を質問する前に、自分で情報収集してみよう。


 考え込んでいる使用人を置いといて、近くにいる人に話しかけてみる。


「なあ、みんなさわいでいるけど? なにがあったんだ」

「ん、どうしたんだ坊主」


 俺が尋ねた人は、町の中に住んでいるだろう普通の男性だ。

 だけど、こちらを見るなり、何だという顔になる。


 質問してきたのか子供だと分かったからか。その人は、素直に教えてくれる気が無いようだ。

  しっしと俺を追い払おうとしてきた。


「子供が関わる事じゃないよ」


  しかし途中で俺の身なりをみて、身分に気が付いたようだ。


「な、貴族のお坊ちゃんでしたか。とんだ御無礼を、すいません!」


 その場で土下座しそうな勢いで謝ってきたので、慌ててそれを制す。

 ここで面倒事になったら、詳しい話が聞けないし、俺は大して男の態度を気に留めていなかったから、大げさな謝罪はいらなかった。


 そうこうしてると、ほら。


「ラックス様、どうされましたか」


 あー、ほらシオンが気づいちゃったよ。


 男性は保護者が近くにいた事に気が付いて、目いっぱい狼狽。


「御付きの人もいらしたんですか、こここ、これは失礼を。私は別に怪しい物では」

「お坊ちゃまに何か不埒な事でも?」

「ち、違います!」


 何やら誤解が生じているようだったので、俺は慌てて、両者の中を取り持つ事になった。


 こんなつまらないことで、別の騒ぎを起こしたくない。

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