猫捨て奇憚
九丸(ひさまる)
第1話揚々と
「人は誰もが飼っているのですよ」
男は唐突に語り始めた。
「私も貴方も、うちには猫を飼っているのですよ」
僕はわけが分からず、男に尋ねた。
「猫ですか? 確かに家に猫はいます」
男は答える。
「そうでしたか。御自宅で猫を。私が言ってるのは、内面にということです」
男は続けた。
「その、私が生まれたときから飼い続けてきた猫と、先日お別れをしましてね。いや、もっと辛いものかと思いましたが、案外何の感傷もなく、すんなり別れられまして。今はいなくなって、すこぶる気分が良いのですよ」
僕は男の言っていることが、まったく理解できずにいた。
結局男は、「いや、実に気分がいい。本当に解放されて、自由になったようだ」との言葉を残し、その場をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます