第二章 蹉跌の涙と君の体温

序幕 Re:vise

 護り尽くそうと誓った少女が俺の眼前で耳を劈くような悲鳴を上げる。

 彼女の身に何が起きているの全くと言って分からなかった。

 いや、違うな。何が起きているのかは見て分かる。

 彼女の身体が音を立てながら焼け、焦げているのだ。その身体からは徐々に水分が失われ、かつてそこにあった瑞々しい玉肌もすでに見る影は無かった。

 分からないのは何故それが起きているかだ。

 さっきまでいつもみたいに馬鹿話をして、目を合わせて喋って、ただただ駄弁っていただけのに。それだけなのに。

 どうしてこうなったんだよ。

 俺は彼女に声を掛ける。

 当然、返事は無い。彼女は悲鳴を上げ続けるだけだ。その眼から零れ落ちる涙は蒸発と気化をただ繰り返す。

 俺は自然と彼女に向かって手を伸ばした。


 熱い。熱い。熱い。


 俺の手は指先から肉の焼ける音を奏でながら彼女と同じように黒く爛れていく。


 一目惚れだったんだ。

 彼女を初めて見た時、ふと運命じみたものを感じた。

 なんだか、何処か会ったようことがあるような、懐かしさを覚えたんだ。


 もう一度、その手を掴む為に────


 俺は彼女の身体に指でそっと触れながら、口を開いた。


 「────俺がお前を、救ってやるから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る