第63話【老人の夢】

パチパチと火が燃えて串に刺した肉が焼ける。

油の弾け、肉の香が広がる。

串の一本にかぶり付く若き日のクハルと女。


『んぐ、んぐ・・・うめえええええ!!』

『何て上質な肉だ・・・そうだ、味噌を塗って』

『味噌焼きか!!良いな!!』


味噌を塗った肉の串が焼けて味噌と肉の香ばしい香りが広がる。

たまらずかぶり付くクハルと女。


『かっー!!旨いなぁ!!』

『ホントホント!!これだから狩は止められないわ!!』


次々と串の肉を平らげる二人。


『だがこう旨いとアレだな』

『?』

『白い飯が食いたくなる』

『分かる、でも白い飯は無いけど、じゃーん!!』


酒瓶を取り出す女。


『おお!!分かってるじゃねぇか!!』

『へっへーじゃあ呑もうぜ!!』

『おおっ!!』


その後酒盛りをしてたらふく食って飲んで横になる二人。


『良いな・・・』

『本当にサイッコーだぜ!!』

『こんな時間が何時までも続けば良いな』

『何それクハルジジ臭いわよ』

『うるっせぇや』

「クハル爺」

『何だよ』

「クハル爺」


自らの手が皺だらけになるクハル。


『な、なんだよ、これ・・・』


辺りの風景が急に虚ろになり、喰った肉の脂が胃にもたれ吐きそうになる。

起き上がろうにも体が言う事を聞かない。


「クハル爺!!」

「!!」


そこでクハルは目が覚めた、目の前にはクハルを呼び掛けるキンが居た。


「もう着いたわよ」

「・・・はぁ・・・良い夢を見て居たのにのぉ・・・」

「良い夢?」

「野山を駆け回って狩をして酒飲んでいた夢じゃ」

「酒なら今でも飲んでいるじゃない、変なの、それより早く行くわよ」

「あぁ分かっているよ」


のっそりと馬車から降りるクハル。


「ここが依頼人の家か」


そこは巨大な邸宅でギルドが入っている建物よりも大きかった。


「クハルさーん、行きますよー」

「おう待ってくれやハック」


4人は邸宅の中に入った

庭に入るとメイドが主人の所まで案内してくれることになった。

邸宅の中は広く調度品も立派で綺麗に清掃が行き届いていた。


「立派な屋敷だ」

「これは報酬にも期待が持てるな」

「キョク、あんまりガッツキ過ぎないの」

「最近ちょっと金欠だしな、仕方ないね」

「全く・・・」


メイドはつかつかと歩いて主人が待つ部屋にまで4人を案内した。


「リン様、ギルドの方々をお連れしました」

「分かったわ、貴女は下がっていなさい」

「分かりました」


メイドは部屋のドアを開けて下がった。

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