第43話 ワイバーンの領域での狩り

 野営の朝はいつもホッとする。

 朝食を素早く済ませ。

 テントを畳み馬ゴーレムに積み込む。

 多少見晴らしのいい所で警戒しながら魔石や魔道具に充填する。

 午前中を使いある程度充填できた。

 狩りを何回かして厳しい様だったら、撤退しようと思う。




 魔獣を探しながらしばらく歩く。

 見つかった魔獣は二匹だ。

 草むらから何だという顔をして魔獣が立ち上がる。


「気をつけろ! こいつに噛まれると病気をうつされるぞ」


 魔獣はパンデミックラットだ。

 鼠型の魔獣で大きさは一メートルを超える。

 どうやらつがいのようだ。

 最初にフラッシュバンを使う事にする。

 皆が目を閉じたのを見計らってフラッシュバンを炸裂させた。

 目を開けるとパンデミックラットは土魔術で壁を出して防いでいる。

 こいつも防ぐのか。

 フラッシュバン最強説が崩れた。




「薄いトーチカと鉄条網だ。ローレッタは魔力温存で通常弓で攻撃しろ」


 パンデミックラットは片方が石の盾を、もう片方が石の礫で攻撃してくると。

 銃弾の早さは見てからでは防御できまい。

 攻撃してくる石の礫に気をつけながらトーチカの窓から身を乗り出す。

 レーザーサイトで狙いをつけトーチカから銃弾を叩き込む。

 パンデミックラットは頭に銃弾を喰らい仰向けに倒れた。

 やったぞ。あっさり一匹目を倒せた。

 ローレッタが矢を打つ。

 石の盾で防御して弾かれる。

 俺は石の盾が消えたタイミングを見て銃弾を撃つ。

 弾は胴体に当たる。

 どうやら仕留めたみたいだ。




「触りたくないが魔石を取るぞ」

「手袋してやりましょう」


 フィオレラはさも汚い物は嫌だと言う感じだ。


「燃やしてみだらどか?」


 燃やしたら、魔石も溶けるんじゃ。


「いや泥ゴーレムにやらせよう」


 泥ゴーレムを作り魔石を取り出す。

 余計な時間が掛かった。

 気を取り直して次の魔獣を探す。




「おかしいです。魔力探知にぽっかり穴が空いたみたいな感覚があります」


 次の魔獣はどうやら一匹らしい。


 魔獣がいる場所に行くと子供が立っては入れそうな巣穴が有った。

 手始めに巣穴の中に炎の槍を叩き込む。

 炎の槍が爆発しない。

 少し経ってのっそり出てきたのはデリートアルマジロだった。

 デリートアルマジロは魔力を防ぐ結界みたいな物を使う。

 二メートル半もある魔獣だ。




 フラッシュバンなら直接の魔力じゃないから防げないだろうと思い撃つ事にする。

 フラッシュバンを撃ってから手前で炸裂させ目をあける。

 デリートアルマジロは丸まって防いでいた。


「効いてない。ローレッタ試しに貫通をやってみてくれ」


 いい機会だから魔力を防ぐ結界を分析する。

 なるほど魔力を全身に纏っていた。

 イメージは魔力を休眠状態にする。


 ようは温度の高い物を低い物で薄めるみたいな事か分からん。

 対消滅じゃないのかちょっとがっくり。

 ローレッタが丸まっているデリートアルマジロに矢を放つ。

 矢は表皮で弾かれる。


「やっぱり駄目だ。こうなったら銃の連射しかないか」




 銃をマガジンが空になるまで撃ちつくす。

 所々に穴が空いたところを見ると効いているようだ。

 デリートアルマジロはもぞもぞ身を捩っている。

 体を解いて頭を出した。

 チャンスだ。

 急いでマガジンを取替え、頭に向かって全弾叩き込む。

 目に当った一発が脳に届いたようだ。

 デリートアルマジロはぐったりして動かなくなった。


「今日は切り上げよう。野営地を探そう」




 その日の野営はトラブルなくいき、無事朝になった。


「おはよう」

「おはようございます。昨晩は襲撃が無かったですね」

「毎晩来られたら、もたないよ」


「おはよごす」

「おはよう、ローレッタ。魔術が効かない魔獣も出てきたし、頼りにしているよ」

「けっぱる」


 朝飯を済ませ。野営地を畳む。




 最初の魔獣はオークだった。


 フラッシュバンを撃つと、驚いた事にオークは転がって避けた。


「おいおい、お前も防ぐのか」


 ちょっと驚いたがオークなど敵ではない。

 銃でサクッと倒す。




 今までの戦闘を振り返る。

 フラッシュバンが通用しなくなった。

 理由を考える。

 大げさに避けるのはこの領域では魔獣の魔力の多い。

 だから、魔術の規模が大きいのでギリギリで避けても余波で負傷する確率が高いからか。

 フラッシュバンはもう役に立たないと考えた方がいいな。

 対人戦ではまだ役に立つが手口が分かれば対策は容易い。

 フラッシュバンは封印しよう。




 次の魔獣はファイヤーウルフの三十匹以上の群れだった。


「こいつは火の玉を飛ばすぞ。それ挨拶代わりだ」


 銃弾を適当にばら撒く。何匹かに当ったようだ。キャインキャインうるさい。


 ついでに威圧具を試してみる。やっぱり駄目か。

 ファイヤーウルフが引く様子はない。


「薄いトーチカと鉄条網だ。ローレッタ魔石を全て使っていいぞ。どんどん撃て」


 ローレッタは弓と魔石銃を使い分け。


 火の玉には魔石銃、鉄条網を飛び越えようとしているファイヤーウルフには弓で対抗している。

 俺はトーチカの窓から恐る恐る身を乗り出し。

 マガジンを空になるまで撃つ。

 二匹が銃弾の掃射に巻き込まれて息絶えた。

 火の玉が俺の顔に向かって発射される。

 慌てて引っ込む、火の玉は頭の上を通過してトーチカの中の壁に当たった。

 フィオレラを見ると隅の方で丸まっている。

 怪我はしてないみたいだ。


 マガジンを取替えて、再び身を乗り出した。

 鉄条網を飛び越えようとしてジャンプした一匹に集中して銃弾を浴びせる。

 当たったぞ。

 マシンガン様様だ

 爆発の魔弾のマガジンをセットし、ファイヤーウルフが固まっている所に撃つ。

 爆発に何匹か巻き込まれてダメージを負った。

 直撃は無い。

 見るとファイヤーウルフばらけてどうも爆発の魔弾は効果が薄そうだ。

 仕方ないと思い俺はマガジンを何度も取替えながら通常弾で片っ端から狙い撃つ。


 ローレッタの方を見ると魔力が切れたのか。

 通常弓で攻撃している。

 投げナイフが無い。

 矢も残り少ない。




「これを使え」


 腰から魔石銃を抜いて渡す。


「助かる」




 何匹ファイヤーウルフ撃ったか覚えてないが、気がついたら、動くファイヤーウルフはいない。

 屍骸の数を見たら、十匹ぐらいだ。

 残りは逃げたのだろう。


 今回は少し危なかった。

 矢や銃弾も少なくなった帰るとするか。


「魔獣から魔石を抜いたら、ワイバーンの領域から撤退する。急げ」


 オークの領域に逃げ込み日が暮れるまで魔道具や魔石の充填をする。

 なんとかやりくりしてオークの領域を縦断して無事町に帰る事ができた。

 家に帰って寝て起きたら、反省会だ。

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