第31話 真偽判定

 フィオレラにいつもゴリゴリやってるローレッタが見えないから疑問に思い聞くと、弓場ゆみばを見つけてそこに行っていると聞いた。

 投擲の練習もできる施設らしい。

 ローレッタは前向きで行動力がある。


「師匠、誰か来たみたいですよ」


 ドアを開けると男の子が立っていた。

 見た事がある。

 どこだっけ。

 そうだ、孤児院だ。

 男の子から教会長が呼んでいると聞かされた。

 伺いますと伝言を頼み駄賃の銀貨一枚を渡す。

 男の子はにっこり笑うと元気に駆け出して行った。

 外の天候は曇り空だ。

 雨が降っても良い様に雨具を持ち教会に向かう。




 教会に行くと通された部屋には教会長と見知らぬ女性がいた。

 ほのかに香水の匂いがする。

 三十代と思われる女性はちょっと豪華な神官服を着て印象はスーツが似合いそうな出来るキャリアウーマンみたいな感じだ。


「教会長お呼びだそうで」

「こちらは真偽官のカミラ様です」


 カミラを紹介する教会長は少し緊張の色が見える。

 国に仕えてる真偽官はエリートだと聞いた。

 教会でもそうみたいだ。




「始めまして、ゴーレム使いのシロクです」

「カミラだ。なんでゴーレム使いが真偽官に用事があるのかな。非常に興味深い」


 笑っているが、目の奥が笑ってない気がする。


「【真偽判定】【スキルの使用を何故見たい】」


 スキルを使用する時の魔力の動きとイメージが分かったぞ。


「スキルの研究をしてましてスキル獲得の条件を探る為見たいのです」

「真実だな。スキルの研究とは学者にでも成りたいのか。これも一応聞いておくか。【真偽判定】【教会に敵対する意志はあるか】」

 何か疑われた。気になる。でも質問したら、やぶ蛇になりそうだ。


「ありません」

「真実だな。どうする教会長に言われた十分にはまだ大分ある」




「スキル獲得に繋がったと思われる経験について教えて下さい」


 一応スキル研究者の建前として聞いておくとするか。


「私は成人した時に尋問官になってな。尋問官というのは真偽官の下働きで重要でない案件を担当する」


 尋問官は警察官と裁判官が一緒になったような役職なのかな。


「スキルを使わないで嘘を見抜くという事ですか?」

「そうだ。表情や喋り方などから嘘を判断する。それを十年ほど続けていたら、真偽判定のスキルを授かった」

「なるほど、趣味や仕事に関したスキルを覚えやすいのに当てはまります」

「参考になったか。では行くぞなかなか忙しい身でな。失礼する」


 忙しいのか。

 確かに嘘が見抜けたら、便利な場面はいくらでもある。


「教会長、謝礼はいかほど用意すればいいですか?」

「そうですね。金貨二枚ぐらいが適当です」


 十分で六十万円以上か高い。

 待ち時間を入れて一時間でも良い値段だ。


「日頃の感謝も入れて金貨三枚払います。また何かあればお願いします」




 教会の外に出ると雨が降り出していた。

 雨具を着込み足早に家へ戻る。

 行き交う人々はカッパの雨具を着込んでいた。


 傘を見たことがないとふと気づく。

 傘作れないかな。

 竹があれば作れそうだ。

 金属でも代用できるか。

 開閉できる傘を作りたいが、仕組みが思い出せない。

 傘を分解した事はないな。

 商売の種があるのに形にできないのが悔しい。




 フィオレラに真偽判定のやり方が分かった事を告げる。

 水筒を作る手を止め興味深げにこちらに来た。


「実際にやってみるぞ【フィオレラは十五才か】」

「はい十五才です」


 もの凄い頭痛が襲って来た。

 駄目だこのアビリティは出来ない。

 心配そうなフィオレラに大丈夫な事を伝え、頭痛の原因を説明した。

 真偽判定は罪状確認の上位スキルとも言えるぐらい色々な情報を集める。

 魔力の揺らぎはもちろんの事、脳波、心拍数、汗、筋肉の動きなど全身の状態を探った。

 情報が多すぎてとても脳が処理できないと言うと、フィオレラは一度やってみたいらしい。

 俺は頭痛に襲われたが、フィオレラはどうだろう。

 異常があったら、すぐやめるよう念を押しやり方を教える。


「やってみます【師匠に好きな人はいますか】」

「今はいない」

「これはきついですね。でも耐えれます」


 さすがチートこんな所にも差が出たか。

 身体に悪そうだ。

 やるなと警告する。




 傘の事が悔しくてフィオレラに愚痴を溢すと、開いたままで良いのではないかと言われた。

 俺としてはそれでは納得できない。

 何か良い方法が分かるまで封印だ。

 さて魔力探知の訓練をしよう。




 しばらく経ってローレッタが帰ってきた。

 弓場ゆみばの感想を聞く。

 筋力強化して強弓引いたら、的壊して怒られたと少しシュンとした様子で話す。

 練習が出来ないのは問題がある。

 前使ってた子供用弓で練習するよう提案。

 しばらくはそっちでやってみると納得していた。

 投げナイフはだいぶ良い感じになったと、かなり自信がある様子。


「投げナイフも筋力強化して使ったら、凄い威力が出そうだ」

「的ば壊しそなんで実戦でしか使えませんけど」




「フィオレラたまにはローレッタにスキル鑑定掛けてやってくれ。まだ筋力強化は覚えないと思うがフィオレラの例もあるし」

「はい魔力は問題ないので毎日掛けます」


 今の問題はフィオレラの副業と新しいゴーレムのアイデアだ。

 今の副業でも金銭的にはローレッタの八十倍は稼いでいるから問題はないけど。

 スキル訓練だけではさすがに飽きる。

 うーん新しいゴーレムはお金を貯めてミスリルゴーレムか。

 使いこなせない前提のトレントゴーレムか。

 それとも全く新しいゴーレムか。

 非常に悩む。




 副業は何がしたいかフィオレラに聞いてみるか。


「フィオレラ副業は何がやりたい?」

「そうですね。スキルの多さを生かす仕事か。物を作る仕事が良いです」


 スキルの多さか。スキルコピー屋ならぴったりだな。覆面をさせてやらせるか。駄目だな後をつけられそうだ。

 物を作るか。大々的にやると職人から文句がきそう。

 数作っても問題ないのは考えつくのはピーラーぐらいだ。

 ピーラーは会社で仕事を受けて中国の企業に丸投げしていた。

 管理やってる先輩から薀蓄うんちくを散々聞いたので作れるとは思う。

 しかし、安い仕事で張り合いは無いだろう。権利料も高く望めそうにない。


「今はまだ思いつかないが希望に添える物を何か考えるよ」


 悩みは尽きない。

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