第24話 盗賊
杖ゴーレムの扱いに慣れた頃、受付から気になる情報をもらった。
なんでもオークの領域の浅い所に盗賊が出るのだそうだ。
なぜ分かったかと言うと出会ったパーティに敵わないと思うと一目散に逃げていくのだという。
ベテランパーティには被害は出てないが、経験の浅いパーティには被害が出ているみたいだ。
気をつけるよう言われた。
ハンターを狙うなんて大胆な奴もいるもんだ。
そんな事があって数日後。
「今日から戦利品は魔石以外持ち帰らない。オークみたいに金貨一枚以上の場合は考える。ストーンゴーレムは一応持っていく」
「何連戦もするんですか?」
「一日四体ぐらいを目標にしたい。さあ行くぞ」
狩りは順調に進み。
目標の四体もクリアして帰る途中に事は起こった。
「少し道を進んだ所に十二体反応があります。魔獣にしては魔力が小さいです。ただ大きい反応も一つあります」
「もしかしたら、盗賊かもしれない」
「盗賊だったら、どうします」
フィオレラが不安そうに聞いてくる。
「殲滅といきたいが、罪状確認に引っかかるのも困る。フラッシュバンと麻痺カプセルのコンボでなんとかしたい。駄目ならトーチカと鉄条網だ。その場合逃げてくれるといいが」
「見えでった。何人か木の陰に隠れでら」
ローレッタはやはり目が良い。
「フィオレラ、ここからでも罪状確認いけるか。先頭の頭目らしき男だけで良い」
「【罪状確認】有罪です」
やっぱり盗賊だった。作戦通りいくと良いが。
「分かった。フラッシュバンが使える距離まで近づくぞ」
ゆっくり相手に近づく。話声が聞こえてきた。
「お頭、今回は楽勝みたいですぜ。ストーンゴーレムに獲物がありまんし、見たところ前衛がいませんぜ」
「油断するなよ。後衛職も馬鹿にできない。いないと思うが魔法使いとか。ストーンゴーレムは強敵だゴーレム使いを真っ先に潰せ」
確定だ。さぁ食らえ。
フラッシュバンを三発叩き込む。
「なんだ目がチカチカして見えねぇ」
「音がよく聞こえねえぞ」
調味料入りの麻痺カプセルを追撃で人数分送り込む。
木の陰も分析で丸分かりだ。
「毒だ鼻を押さえろ」
「ギャー毒だ。信じられねぇ毒投げてきやがった」
「だめだ。からだが動かねぇ」
「なんだ目が痛てぇ。涙が止まらねぇ」
阿鼻叫喚が到る所から聞こえる。
「うまく行ったみたいだ。ローレッタ手分けして縛り上げるぞ。武器を取り上げるのも忘れずにな」
抵抗する盗賊には筋力強化を使って殺さないようにビクビクしながら杖ゴーレムで殴っていく。
大抵の盗賊は一発ゴツンと頭を軽く殴ると大人しくなる。
駄目な場合は弁慶の泣き所を杖で打つようにした。
それでも駄目な時は股間を狙う。
非道なのは分かっているが頭をあまり強く殴りたくない。
ローレッタを見ると盗賊の持っていた棍棒を使って殴り倒していた。
殴るのに葛藤など無いようだ。
そんなに強く殴って平気かと聞いたら、盗賊など殺されても当然と答えが返ってきた。
この世界は殺伐としているな。
盗賊を殺さないで全員拘束する事ができた。
「フィオレラ、盗賊にスキル鑑定を掛けてくれ。縄を抜け出しそうなスキルを持っていた場合は知らせて」
縄抜けできそうなスキルを持った盗賊はいないみたいだ。
ほとんど戦闘スキルはないらしい。
ただ木の陰にいた射手の矢には毒が塗られていた危なかった。
盗賊を逆さにストーンゴーレムに吊るす。
ここまでやれば大丈夫だろう。
ストーンゴーレムが蓑虫みたいだ。
ストーンゴーレムに獲物をつけると間抜けな格好になる。
そして、今日は一段と間抜けだ。
門が見える頃には盗賊どもも大人しくなっていた。
門番の所に行き。盗賊を引き渡す。
「ごくろうだった。賞金が掛かっていた場合は後で役人の所で貰ってくれ。使いを出す場合の連絡先を教えてほしい」
家の場所を教えて、いない場合はハンターギルドに伝言を頼む様に伝えた。
フィオレラに盗賊の背景などを聞く。
罪を犯し罪状確認に引っ掛かりそうな人が集まって盗賊になるらしい。
普通は旅人や行商人などを狙う。
ハンターを狙うのは珍しいという事だ。
この盗賊は人数が増えすぎて旅人では稼げなくなりかといって商隊は護衛が付いているから狙えない。
苦肉の策でハンターを狙ったのだろうと。
とにかく捕まって良かった。
夕暮れまじかのハンターギルドは獲物の報酬を受け取るハンターで賑わっていた。
どこかピリピリする空気もある。
盗賊の影響だろうか。
受付で魔石を換金し、盗賊が捕まった事を話す。
俺の手柄だと分かるとややこしそうだ。
あるハンターのパーティが捕まえた事にした。
近くで聞いていたハンターがさっそく周りの人に伝えて回る。
仇を討てたと泣いているハンターもいた。
良いことをしたんだなと改めて思う。
「今日は色々あった。さぁ恒例のスキル練習をするぞ」
「分析にも慣れだはんで。そろそろアビリティを教えてほしいのだばって」
ローレッタはたどたどしく頼んできた。
積極性がある。
この姿勢は評価できる。
「そうだな、良いだろう。最初に覚えるのは前にも言ったが筋力強化がお勧めだ」
「なすて」
「筋力強化は消費魔力が少ない。魔力の少ないローレッタにぴったりだ」
「分かった。教えでけ」
魔力の動かし方や筋力強化のやり方のコツを教える。
「なるほど、練習してみる」
ちょうど良いのでフィオレラに提案してみる。
「フィオレラ、どうだ新しいスキルを覚えてはどう。希望はあるか?」
「はい、味覚強化、真偽判定、変形が良いです」
大体、選択の理由は分かる。
味覚強化は料理に使いたいのだろう。
真偽判定は今日みたいな事があった時に役に立つ。
変形は物づくりに使えるからな。
「良いと思うぞ。味覚強化はたぶん舌に魔力を動かし発動するのだろう。どこかで分析しよう」
味覚強化を持っている料理人がやってる露店で分析するか。駄目なら雑務ギルドに依頼を出そう。
「問題は真偽判定と変形だ。真偽判定は賞金を貰う時に役人に頼んでみるか。変形は職人だから伝手があるのは商業ギルドだな」
役人に頼むのはハードルが高そうだ。
駄目元で切り出せる雰囲気だったら、言ってみよう。
「難しければ諦めます」
「時間は少しかかるが、大丈夫だと思う」
「分かりました。気長に待ちます」
戦力は確実にアップしている。
金策はどうなんだろう。
そろばんは何時まで売れ続けるかな。
数字を扱う人は思ったより多いのかもしれない。
でも売れなくなった時の方策も今から考えて置くべきだろう。
金儲けのアンテナは常に張り巡らして置かなくては。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます