心の灯火

継月

心の灯火

「えっと…朱雀…朱雀…あ、あった」


僕はホムラ

今、パークの資料室で朱雀について調べている

なんでかって言うと…

スザク様が好きになっちゃたんだよね///


そう、あれは…僕がパークを巡回していた時…


「よし、この辺は…異常なし…っと」


最近セルリアン…とか言うのがパークに時折出現するそうだ

まあ見つけたらフレンズのみんながぱっかーん!って倒しちゃうんだけど


「さてと…後は報告をして…」


と、本部に戻る為に踵を返したその時


「ん?」


近くの草むらがガサガサと揺れ

スライムのような見た目に特徴的な一つ目の

物体がそこから姿を表した


「せ、セルリアン!?」


その大きさは僕の身長より頭2つくらい大きく、ちょうど見下ろされる形になっている


「ぅあっ…ああっ…」


突然の出来事に腰が抜けてしまい身動きが取れなくなる

セルリアンが僕が動けるのを待ってくれる筈もなく腕を振り下ろして来た


「うわあああああああああっ!!」


やられるっ!そう思った瞬間何かが僕の前に飛び出し


「はぁっ!」


「えっ…?」


手から炎をぶつけるとセルリアンを倒した


た、助かった…?


安心した僕は体の力が一気に抜けてその場に

ペタンと座り込み自分を助けてくれた相手を

見る

濃淡の差はあるものの全体的に赤く、

クジャクと似た赤い尾羽を持ち、

そして頭に羽根があることから鳥系のフレンズであることが分かる

観察しているとそのフレンズがこちらに振り向いた


「お主、大丈夫だったか?」


「は、はい…おかげで助かりました」


「うむ、無事で何よりだ」


「あなたは…フレンズですか?」


「如何にも。我はスザク、ジャパリパークの南方を守る者だ」


「スザク様…」


「では、人の子よ。道中に気を付けるんだよ」


そう言い残すとスザク様は飛び立っていった


「あっ…」



これが、僕とスザク様との出会いだった

あれから僕はスザク様について色々調べてる

元動物…と言っても神様は人の想像上の物だ

そうだからそのモデルとなった朱雀の伝承とか

あとは最近スザク様と同じ守護けものである

セイリュウ様の所へよく行ってるらしい同僚に

頼んでセイリュウ様にスザク様が普段は何処に居るのかを聞いてもらったりとか…

兎に角、スザク様に会う為の準備を整えてる所だ


そして仕事がお休みの日、僕はスザク様が普段いる火山地帯に向かった

流石に仮にも神であるスザク様、それにこの前助けてもらったのもあるから流石に手ぶらで

向かうのはあれなのでちょっとしたお菓子を

作って持っていく

これでもお菓子作りはちょっと得意なんだよね


「スザク様!」


「ん?おお!お主は確かこの間の」


「はい、そのお礼にと思い伺いました。

あっ、これ…よかったら」


そういって持ってきたお菓子を渡す


「わざわざお土産を持って礼を言いに来るとは、律儀だね。お主、名前は?」


「僕は、ホムラっていいます」


「ホムラ…ふむ、良い名前だね。

…そうだホムラ、折角来てくれたんだ

少し我の話に付き合ってくれないかな?」


「はい!」


スザク様と隣同士で座り、スザク様の話が始まった



「んっ、もうすぐ日が落ちそうだ。

すまないね、長々と」


「いえ、大丈夫です」


「夜道は危険だ、麓まで送ってあげよう」


「ありがとうございます」


スザク様に麓まで送ってもらい


「ではスザク様、また」


「うむ、気をつけて帰るんだよ」


僕と別れたスザク様は来た道を飛んで戻っていった


それからと言うもののお土産を持ってスザク様の所に向かい、話を聞くのが僕の日課になった

休みの日は勿論、仕事のある日も仕事が終わってからスザク様の所に向かった

話を聞く…といっても実は殆ど耳に入ってない

なんでかって?

スザク様が話すときの仕草に夢中だからだ


「そしたらさ、ビャッコの奴が!」


楽しそうに笑ったり


「それでえーっと…なんだったっけ?」


顎に人差し指をそえて小首を傾げたり

…そっちにばかり気が行ってるもんだから


「んっ?お主ちゃんと話を聞いてるのっ!?」


なんて、怒られることもしばしば

怒ってる顔もほっぺた膨らませてて可愛いんだけど


そして夏のある日のこと

この日もいつも通りスザク様の話を聞い話をしてるスザク様に夢中になっていると…


「ねぇ、ホムラ」


「…えっ?あ、はい」


「お主…我の話を聞いてるとよく心ここにあらずって感じでぼーっとしてる時があるけど…

大丈夫?」


スザク様が心配して顔を覗いて来た


近い!スザク様顔が近いです!そんなに直視されるとぉぉぉぉ……


「んっ?顔も赤くなって来てる…。やっぱり

ここはお主にはちょっと暑すぎるんじゃないかな?」


「えっと…これは…その…」


更にスザク様はピトッと僕のおでこと自分の

おでこをくっつけてきた


「熱もあるようだし…」


ふあああああっ!スザク様の顔が近い!

吐息もめっちゃかかってるぅぅぅぅっ!


「あっ、あっ、あの…あの…これは…」


「どうした?やっぱり具合が悪いの?」


ち、違うんです…いや…ある意味病気といえば病気なんですけど…


「お主に何かあってからでは大変だ、

我も心配になるから」


そういって心配そうな顔で頬に手を当ててくるスザク様


違うんです…スザク様…っ!これは…っ!


そして僕にニコッと笑いかけて


「ほら、遠慮せずに…ね?」


い、いいのかな…でも…っ


「ほら、我に言ってみてよ」


えぇいっ!もう…っ!


「こ、これは…ここが暑いからでも…

体の調子が悪いからでもないんです!」


もうどうにでも!


「僕は…スザク様に…っ」


もうどうにでもなれええええええええっ!





「僕はっ!スザク様のことが!大好きなんですっ!」


い、言っちゃった…



 

「なっ、なっ…」


なぬううううううううううううううううっ?!


「お、お主…それは…本気なのか…?」


「は、はい…。助けて貰ったあの日…

その…スザク様に恋をしてしまって…」


「お、おお、お主はたったそれだけの理由で

我に会いにこんな暑っ苦しいようなこの火山

地帯に足を運んでおったのか!?」


「は、はい…」


「それも毎日態態土産を用意してまでっ!?」


「はいっ…」


「な、なんと…」


あ、ああ、有り得ん!!

確かに、奴を助けたがそれは偶然通りかかっただけである上守護けものの務めであったから!

その後日その礼と言うことで手土産を持って来た時は礼儀正しいやつだとは思ってた…

しかしそれからも毎日ここに来てたから

気の効く奴だと思う反面些か不思議には思ってたけど

…まさか我に恋をしていたからだって!?


「…もう一度聞くが…お主…それは本心なのか?」


「はいっ、僕は…スザク様のことが好きです。神様を信仰するとか…そうじゃなくて…

その…一人の女性として」


うーむ…確かに我とてそういうのは…いやしかし…


「お主の気持ちはしかと伝わった。

たまにはこちらからお主の元へ足を運ぶとしよう」


「へっ?それって」


「は、早まらないで!これは互いの今後に関わる重要なことだから…その…我にも考える時間をくれないかな?」


「はっ、はい!」


「さて…今日はもう遅い。麓まで送ってやろう」


我はホムラを麓まで送ると元いた火山地帯へと飛んで戻った


そして翌日の昼頃


今日は平日…となるとあやつがいつも来るのが夕方頃じゃから…仕事は夕方近くまでかな?

あやつの自宅へはそのくらいに向かうか…


そんなことを考えながら我はセイリュウの元へと飛んで向かっていた

あやつも話によれば毎日アタックしてくるものがおるそうだから…


セイリュウのいる場所へと向かうとセイリュウは何やら書物を読んでいた


「セイリュウ」


セイリュウは本からこちらへと視線を向ける


「あら、スザクじゃない。こちらまで来るなんて珍しいわね?」


「実はその…我に恋をしてる者がいてね?

そやつの気持ちは受け取ったんだけど…

そやつをその…「でぇと」とやらに誘おうと

思うのだけど…いかんせんそういったことには疎くて…」


「そうね…今週末に夏祭りがあるからそこへ誘うのはどうかしら?」


「祭りへ?」


「えぇ…この恋愛小説にそういったシーンがあったものだから…とっさの思いつきだけれど」


「ふむ…なるほど…」


しかし何を熱心に読んどるかと思えば…

まさか恋愛小説だったとは…


「しかし珍しいね?お主がそんな物を読むとは」


「私に毎日懲りもせずにアタックしてくる男がくれたのよ。意外と面白いからいい暇潰しにはなるわ」


「ふむ…」


「…そろそろあいつが来る頃ね。

スザク、あなたも戻った方がいいわ」


「うむ」


我はセイリュウと別れるとホムラの自宅へと向かった

あやつの自宅の場所は昨日の帰り道で聞いておいたんだ




僕はいつも通りかえってスザク様のところへ向かう準備をしていた

するとチャイムがなった


「はーい、どなたです…か」


扉を開けるとそこには


「お疲れ様、ホムラ。昨日申した通り我から来たよ」


「す、スザク様!?」


「なーにを驚いてるのさ…、昨日の帰りにお主の自宅の場所を聞いたじゃないか」


あぅ…ジト目もかわいい…じゃなくて…


「い、いえ…嬉しいんですけど…、まさか昨日の今日とは思ってなくて…」


「まぁ細かいことはいいから、上がってもいいかな?」


「あっ、はい!どうぞ!」


僕はスザク様を居間に案内した




「今お茶を淹れますね」


台所に向かったホムラを見送り部屋を見回す


…ふむ…しっかり整理されておる…

それに清掃も欠かしてないようだ


「どうぞ、粗茶ですが…あと、お茶請けを」


「おっ?あぁ、すまない」


いかんいかん…いつの間にかホムラが戻ってきておった


「どうかしましたか?僕の部屋を見回したりしてましたけど」


み、見られてたんだ…


「いや、しっかり整理整頓してるなと感心してたんだ。お主、齢はいくつ?」


「今年で20ですね」


「若いのにしっかりしているんだね」


それからはいつものようにホムラとの会話を弾ませた




「んっ、もうこんな時間か」


スザク様の言う通り時計を見るともう6時頃を刺していた


「そろそろお暇するとするよ」


「玄関までお見送りしますよ」


「すまないね」


立ち上がったスザク様を玄関まで送る


「おっとそうだ」


スザク様は出ようとしたところふと何かを思い出したようでこちらに振り返った


「その…先の件の返答だけど…今週末に夏祭りがあるそうだから…それまではお互い会わないようにしよう…一人で考える時間が欲しいんだ」


「そうですか…」


「すまぬ、必ず当日に答えを出すから」


「いえ…。それで…夏祭り、どこで集まりますか?」


「そうだね…鳥居の前で落ち合おう」


「わかりました」


「では、またね」


そういい残しスザク様は僕の家を後にした



それから数日後…夏祭り当日


祭り囃子や太鼓の音がなっており時折賑わう

人の声も聞こえる中

僕は神社の鳥居の前でスザク様を待っていた


「待たせたね、ホムラ!」


「あっ、スザクさ…ま…」


こちらに声を掛け駆けてきたスザク様は

いつもの羽や尾羽はないものの

イメージカラーの薄い赤色の浴衣を着ていた


「どうかなホムラ、似合うかな?」


クルンッと回ったりして浴衣姿を見せてくるスザク様…めっちゃ可愛い…っ!


「ばっっっっちりです!すごい似合ってますよ!」


「そうだろう!?そうだろう!?

ミライに頼んで着付けて貰ったかいがあったというものだよ!」


どや顔するスザク様もいいなぁ…


「まーたボーッとしておるの?ホムラ?」


「…ハッ!す、すみません…つい見惚れちゃって…」


「ふふふっ、可愛いやつだね♪さっ、祭りを楽しもう!」


それから僕たちは祭りの屋台を楽しんだ

射的とか…輪投げとか

二人でたこ焼き食べたり…たい焼き食べたり…りんご飴食べたり…カステラ食べたり…


そして祭りも終盤…僕たちは人気の少ないところにあるベンチに座って打ち上がる花火を見ていた

実はここ…高いところにあって花火がよく見えるんだよね


「楽しい祭りもあっというまだったね…」


「そうですね…」


「ホムラ…今日は楽しかったよ、ありがとう」


「いえ、こちらこそ。いい思い出になりました」


花火を見ながらそんな会話を交わしていた


「ホムラ…」


「はい?」


「先日の返事…なんだけどさ」


「はい」


数秒の間が空きスザク様が口を開く






「あれからずっと考えたけど…

やはり我は守護けものとして他のフレンズの手本にならなければいけない…恋に現を抜かす訳にはいかないんだ…だから…お主の気持ちには応えることは…出来ない」


やっぱりそうか…わかっていた…

神様と結ばれるなんて…到底無理なことだって


ホ「…。「でもね」…?」


「その…ね?一人の女の子として言わせてもらうと…そういった気持ちを向けられるのは……嫌いじゃないの…」


「…!」


「だから…ありがとう、ホムラ

そして…ごめんなさい」


あぁ…スザク様はやっぱり優しいフレンズだ

僕はスザク様のこういうところに惹かれたのだ

そう今なら確信出来る

もう、遅いけど…


「もし我がミライ達のような普通の女の子だったらどれだけ良かったことか…」


花火の方に顔を向けたスザク様が何か言った

ようだが花火の音で聞こえなかった

一瞬悲しげな顔が見えたのも…きっと気のせいだろう



こうして、僕の初恋は幕を閉じた

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