二人は会社近くのカフェに入り、窓側近くの席に座った。すぐにウェイターがやってきて注文を取った。

「哲人と言います。一浪一留で今大学４年目なので23歳です」

「菜々子です。大学三年の21歳です」

菜々子はそう言うとにっこり笑った。

「菜々子さんはどういう業界を志望しているんですか」

哲人は少し食い気味に菜々子に声をかけた。

「私は金融業界一本で就活しています。哲人さんは」

「ありとあらゆる業界を受けまくっていますよ。でも大手の会社は外して」

哲人は少しうつむき気味に言った。そしてちょうど今来たコーヒーを一口飲んだ。

二人は他愛もない話を続けた。菜々子は都内の私立女子大学の学生で法学部に在籍していて、地方出身で東京で一人暮らししているとのことだった。

「哲人さんは東京出身なんですか」

「俺は東京生まれ東京育ちの都会人だよ。東京から出たこともないからずっと東京にいたい。就活もなるべく転勤のない会社を受けてる。大企業に入って全国を転々とする人生は嫌だからね」

菜々子は興味深そうに哲人の顔を見た。

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