認めさせる

 他人や組織に自分を認めさせることです。


●コンセプト


 組織の中でのし上がる。(部活。マフィア・ヤクザもの)


 資格、序列、階級などを得る。(学園異能バトルもの)


●考察


 「勝負に勝つ」とよく似ている「面白さ」ですが二つの違いがあります。


 まず、順位が上がってゆく感覚があることです。「勝負に勝つ」があくまで一回の戦いで勝つことに焦点を当てているのに対し、こちらは相手に自分を認めさせることによって次のステージに進んでゆくということに焦点を当てています。もちろん「勝負に勝つ」にその要素を取り入れることは良くあります。予選から準決勝、決勝と進んでゆく場合がそれです。逆に相手が自分を認める条件が、勝負に勝つことである場合、「認めさせる」が「勝負に勝つ」を取り入れていることになるでしょう。


 次に組織の内・外の違いがあります。団体戦などの場合、「勝負に勝つ」は団体VS.団体の、「外」の関係になりますが、「認めさせる」は、自分の属する組織の中で自分のポジションを上げてゆくという、「内」の関係になります。「勝負に勝つ」の場合は勝敗のルールがきっちり決まっていることが多いので、勝ち負けをはっきり示しやすいのに対し、「認めさせる」の方はそれが曖昧になりがちです。順位が上がってゆくことがこの「面白さ」の本質なので、それがわかりにくくなってしまうのは避けないといけません。


 既存の作品はどのような工夫をしているでしょうか。まずは「拳で分からせる」、つまり一対一で戦って勝った方が上、というのがありますが、これはマフィア・ヤクザものとか格闘技ものなどに限定されてしまうの欠点です。また、チームワークを必要とする事柄を題材とする作品ではこの方法は使えません。


 直接戦えない場合は、主人公を認めるキャラ(以下「サブキャラ」と言います)の命を助けたり、望みを叶えることによって、つまり「恩を売る」という方法で認めてもらうことも可能です。「北斗の拳」ではレイというキャラは囚われの身となった妹を主人公に助けてもらうことによって主人公を認め、協力するようになりました。(一応主人公とレイは形式的に戦っているため、恩を売っているという感覚を薄めることに成功しています)


 リーダー、コーチ、ボスなど、権威のある人物に認めてもらう、という方法もあります。主人公はその人物より上にはなれない、ということが問題なければ使えるでしょう。主人公がその人物にえこひいきされている、と内紛になるのが、この方法を採用したときに発生するトラブルでは定番です。とくに女性主人公の場合はたくさん思いつきます。(エースをねらえ!、トップをねらえ!、響け!ユーフォニアムなど)


 具体的な人物ではなく、現実というか、状況に認めてもらうという方法もあります。サブキャラが主人公に対し、「いつもあいつのいう通りになる」とか「知らないうちにあいつの指示に従っている」と考え、主人公の優越を自分から認めるようにします。「ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風」などがこれですね。この場合は主人公が一番になることも可能になります。


 他には入団試験、資格試験、オーディション、人気投票などを実施して、受かったものとそうでないもので順位の差をつけるという方法もあります。


 最近よく使われているのが○級とか第○位とか順位をはっきり設定してしまう方法です。どのキャラに勝てば順位が上がるかわかりやすくて便利ですが、そもそもその順位を決めたのは誰か、という疑問が出てくるので、それをうまくストーリーの中で解消できれば作品のクオリティを上げることができるでしょう。


 サブキャラに主人公に勝たなくてはならない切実な理由を持たせれば、ストーリーを盛り上げることができます。しかし敗北したサブキャラが全く救済されない場合、読者は不満に思うかもしれません。理想としては、和解が可能な設定を考えたいところです。上で述べた「恩を売る」が使えるかもしれません。結局のところ、相手はその後も一緒に活動してゆく仲間であり、敵ではないのです(それをきっかけに離反し敵対するようになるというのももちろんアリです)。ただし救済のために横道に逸れすぎるとストーリーがぶれてしまいます。うまくバランスを取る必要があるでしょう。


 サブキャラが敗北した後、主人公の意見を丸呑みし、ただ主人公の権威を裏付けるだけの「信者」になってしまう危険性にも注意しましょう。サブキャラにも主人公とは違った視点や価値観を与え、基本的には協力するけれども、たまには衝突したり、別行動を取らせたりすることも必要でしょう。ただ、これもやり過ぎるとせっかく勝ち取った主人公の権威が揺らいだり、ストーリーがぶれるので注意。(響け!ユーフォニアムの第一期まとめ映画では無救済と信者化を両方ともやっちゃってるんだよなあ……。この作品好きなのでつい愚痴ってしまいました。すみません)


 この考察では組織内部のことに焦点を絞っていますが、作品の中では組織外部との関わりをきちんと描かなくてはなりません。でないとなんのための組織か分からなくなってしまいます。主人公が新たな地位やポジションを得る度に、新たな責任が加わったり、外部との関わり方に変化を持たせるようにすれば、単に組織の中で順位を上げてゆくだけ、といったことを避けられるでしょう。例えば主人公が部長や社長になったときと平社員や係長であるときとは外部との関わりが大きく違うはずです。


 ストーリーがぶれやすいので、序盤で自分のチームをまとめるために使われ、後は「勝利を得る」に移行してしまうことが多いパターンです。でもうまくやればクオリティの高い群像劇になるでしょう。

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