偶像
街を一望できる高いビル。
ここから夜景を観る事ですら
ほんの一握りの存在。
私はそこから、さらにひとつまみされた人間だ。
私はアイドル。流星風流の秋田憂だ。
暗い闇の中に際立つ窓から洩れた光。
街灯、車のヘッドライト。イルミネーション。
全てが私の目に映る。
ここに来ると思い出すのは
何年か前のステージ。ファンがペンライトを手に持ち私たちに向けてくれた。幸せな時間。
その時の光は気持ちのこもった光だった。
一度地方に行った時私のカラーで会場が埋まった事があった。あの時は嬉しくて泣きながら笑顔で歌って踊ったなぁ。その後ありがとうを伝えたくて泣きながらブログを更新した。私に唯一スポットライトが当たった日だったなぁ。嬉しかったなぁ。またあんな日が来るの夢みてたんだけどなぁ。
思い出に浸っていると目の前の光達の意味の無さに冷静になる。
風の冷たさがなんだか世間からの風のように感じる。向かい風、追い風、いろんな風を感じてきた。
皆が見ていた私は私だったのだろうか。
普段は露出の高い服すら規制されてる反動からなのか、身に纏っているものを全て払いのけてみたくなった。
全身で冷気を感じた。
街の街灯を背に裸の私。
そんな写真が出回っても大して価値もつかないのだろうな。
雪まで降り始め、私の身体を虐める。
私色に染まったあの小さなライブのセットリストを歌いながら踊りきると自然と涙で、景色にピントをあわせられなかった。
やけに綺麗だ。
目を開けた時に幸せな明日がまっていますように。
彼女はなんの意思も持たない冷たい風に身を任せる。
ほのかに積もり始めた雪が赤く染まっていた。
報じられたニュースを見て
河村一流は絶望した
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