第四章 /部屋

香りを嗅いでみると、微かに甘い匂いがした。頭の中がぼんやりする。


―どうやらお気にめされたようで―


そう言われて、ハッと我に返る。


―いかがです? ご購入してみては。そのキャンドルは必ずあなたを幸せにしますよ―


自信に満ちた青年の表情。

効果はともかく、アロマテラピーでリラックスするのも悪くないと思い、購入することにした。

可愛くラッピングされた袋を持って店を出る時、青年は恭しく頭を下げた。


―どうかあなたに幸せが訪れますように―


家に帰り、部屋に入ってすぐに火を付けた。

甘い匂いが部屋に満たされ、眠気を感じた。

ふと袋から小さな紙が出ているのに気付いた。

確か取り扱い説明書だと、青年が袋に入れながら説明していた。

しかし眠気が勝ち、そのまま眠ってしまった。

その時に見た夢は幸せな夢だった。


理由は晩ご飯が大好物のハンバーグを食べている夢だったからだ。


ふと母の呼ぶ声に目が覚めた。

少しの間、うたた寝をしていたらしい。

キャンドルを見ると、蕾の先が少し溶けていた。

火を消し、袋は可愛いので説明書を入れたまま机の引き出しにしまった。

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