第6話

父の頬にはまるで描いたかのようにはっきりと、母の手形が残っていました。


父は私を見ました。


「翔、龍神様が来るって、本当か?」


「うん、感じた。確かに。沖にいて、こっちに向かって来ている」


「……」


「頭は冷えたみたいだけど、ほっぺたも冷やさなきゃね」


母は台所へ行き、氷をつめたスーパーのレジ袋を持ってきて、父の頬に強く押し当てました。


「いたたたた」


「人が真剣に話しているのに、聞かないからよ、まったく」


「ごめんなさい」


「にしても翔。龍神様まで感じ取れるなんて。ほんと翔がいてくれて助かったわ」


「うん」


私には幼い頃から不思議な力がありました。


邪悪なエネルギーを感じ取れるのです。


能力が中途半端なせいか大きなエネルギーしか感じ取れませんが、その分私が感じ取ったということは、本当にやばいということになります。


最初に感じ取ったのは、小学三生のときです。


それを父や母に言いました。


もちろん最初は両親を含めて、誰も信じてはくれませんでした。


しかし私が言った通りにいとこが事故にあい、私が言った通りに右目を失いました。


いとこに憑いていた邪悪なものを感じ取っていたからです。

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