第16話街べラムー1

俺達はまだ森の中に居た。


現在ルティを頭に乗せたフィルと俺は


全力疾走中!


「主殿!多過ぎませんか~」


「知るか!!走れ!!


うわぁ!!また増えた!!」


「キュゥ!キュゥ!」


「ルティ殿は楽で良いですね~


私の頭に乗ってるんですから~


あれ?この前のパーティーより数いますね~」


「お前ら…まだまだ余裕あるだろ?」


「だって魔物ですよ?」「キュイ!」


「くそ!理不尽だ!!」


最初だからと歩いたのが失敗だった。


スーサイドの森は広く魔物や肉食植物が


大量に現れる。


尋常じゃない数の数種の魔物が襲いかかる。




何故数が多いのか?


元々中央で暮らしてた魔物が


俺達に住み家を追われて移動していた。


つまり俺達に恨みがある。


その敵が拠点から出て来たのだ。


餌が歩いてる。チャンスの到来だ。


一族全員で追い込んでいたら


他の種類の魔物も群れで現れる。


敵の敵は味方と一緒に追い込む。


弱肉強食の世界で個体の強さではなく


数の強さで追い込んでいく。




狼型、兎型、猪型、猿型、鳥型、死体。


分かってる範囲でこのくらい。


それぞれの群れで俺達を襲いかかる。


・・・死体も味方なのかなぁ?




走ってる内に空を飛んだほうが良いと気付いて


フィルに跨がり、空へ飛ぶ。


森の上空へ跳ぶと敵の数が減る。


飛べるのは鳥型と限られた混合死体だけだ。


魔法で追い払い急いで戦線離脱する。




「はぁ…フィル・・・お前分かってたよな?」


「何の事ですか?主殿?」


「とぼける気か?コラ!


走るより飛んだほうが良いってさ…」


「当たり前じゃないですか!!


まさか主殿が歩いて森から出るなんて


遠足かなって思ってましたよ!


追われるのもあえて楽しんでると!」


「キュウ!キュイ!」


「そこまで考えてないよ…


もう…疲れた…フィルこのまま出口へ頼む」


「了解です!主殿!」




俺とルティを乗せたフィルはスーサイドの森


出口へと空を駆ける。


「あ?主殿?方角はこのままで?」


「あぁ…忘れてた…進路は下を見てっと…


今の影の反対方向へ!そのまま直進頼む」


「了解です!主殿!」




この世界も太陽は東から登り西に沈む。


現在午前9時当たり。つまりまだ東側に太陽がある。


森の東側には街があり各ギルドがある。


そこを目掛けて俺達は向かった。




森を出てから遠くから街が見えるところまで


来たのでここからは改めて歩く。


周囲には普通の森があり地面には草が生い茂る。


土だけの場所に馬の足跡と轍が残ってる。


ここは馬車が通るみたいだ。




「主殿?昼休憩しませんか?」


「あぁ そうだな!ありがとうなフィル!」


「キュイ!」


フィルが昼休憩を申し出て許可すると


ルティが頑張ったとフィルの頭を叩く。


懐中時計を見ると


時間は12時を過ぎていた。


懐中時計は副神フラから貰った。


色は銀色で模様は赤色。


表に狐、裏にグリフォンを刻んである。


魔力を流すと蓋が開き時間が分かる。


時間自動調整機能と幾つか特殊な機能を持つ


俺専用懐中時計だ。




俺はストレージから机と皿を出して


水と加工済みスーサイドの魔物肉と


畑で育てた野菜、網、鍋を用意する。


フィルとルティは器用に竈を作り火を用意。




今回の肉は猪型魔物ペインボア。


危険度A(傷無しはC)


痛みを与える度に旨味が濃くなり


臭みが消える魔物で常に傷だらけで行動するが


戦闘でペインボアから


一撃を食らうと今まで体に蓄積していた


痛みが相手に強烈に襲いかかる。


下手したらショック死する程に苛烈。


与えた一撃でペインボアから全ての傷が消えて


完全回復してまた傷を作る、


SかMかわからない魔物。




森での生活で大量に傷をしているペインボアと


何度か遭遇しており調査していた。


図鑑で見ていたが実態を確認するために最初は


兎型魔物を捕獲してペインボアが突進してきた


時に兎を投げて一撃をあえて与えた。




ペインボアが攻撃したと判断しないと


効果は発揮しないらしい。




目の前で兎型魔物が痙攣しショック死。


ペインボアは血だらけの毛皮から


綺麗な毛皮に変わりテカテカしながら


森に戻る。後を追うと肉食植物の蔓に


叩かれながら植物を食べて傷を作ってた…


・・・見なかった事にしよう・・・




そんな希有な肉を使って


焼き肉と野菜スープを作り皆で食べる。


今回は中位の傷を持つペインボアの肉。


「自画自賛になるが美味いな!」


「キュイ!キュゥイ!」


「本当ですね!主殿!


あの魔物の肉なのに・・・」


「言うな!フィル…今は忘れて食べろ!!」




ペインボアの肉は赤色で肉質は豚肉に近い。


旨味と共に柔らかくなり臭みが消える為、


香味野菜とよく合う。


焼くと旨味が肉汁として現れ、


煮るとスープに旨味が溶け込む。




昼飯を堪能し終え一服し


片付けてると街の方から叫び声が聞こえる。


今いる場所は小さい丘の頂上で周囲を見渡せる。


声の方を見ると遠くで馬車が人に囲われ襲撃中。


護衛らしい人は戦ってるが


数が少なく徐々に倒れていく。




襲ってるのは10人ぐらいか・・・


森にも4人隠れてるな・・・


護衛は今7人・・・いや6人になったな・・・




「フィル!ルティ!どうする?」




「どうするって助けるのもアレですよね…


弱いのがいけないんですし…


全身鎧が数人いて倒されてますし…」




「そうだよな・・・普通はもっと頑張るよね?


このまま見ない振りして茶でも飲むか?」




「キュイ!キュイ!」


「ルティ殿は助けたいと言ってますね!


手加減を覚えたいそうです!」




「人助けじゃないんだな…ルティ…


まぁ、実際どんぐらい手加減しないと


生活出来ないか調べないといけないし…


んじゃ!行きますかね!


とりあえずそうだな・・・3割かな?」




「3割でも大丈夫ですか?主殿?


自分達の力の常識危険度SSのスーサイドですよ?」




「キュイ?」


「ん~まぁ良いんじゃないか?


良い練習相手がいるんだし?


フィルは風と3割の力で馬車周囲を!


ルティはその姿で火で森の奴を!


俺は3割で臨機応変って事で突入開始!!」




その場で3つの突風が産まれ街道を駆ける。


トキ達は影となり訓練を始めた・・・

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