第72話 青よりも碧く、大地へ

 王宮の自室にいても僅かに聞こえてくる民衆の声。華やかな繁華街は一際盛り上がりを見せているようで街中で派手に一種のお祭り騒ぎのようにもなっているのが伺える。機関紙でも多く今回の首脳会談は取り上げさせて浸透するようにも呼びかけたことが功を奏し多数は歓迎ムードに包まれている。


「失礼します。ラインズ様、そろそろお出迎えの時間が迫ってきております」


 各国首脳の出迎えの準備ができたの旨を伝えにきたセバス。俺が読んでいる報道機関が出している新聞を見て呆れたように溜め息をついている。小言を言ってくるであろう奴に俺は構わず記事を読み上げる。


「『ドラストニア王国、実質的な植民地を獲得か?』 先に始まったフローゼル王国との摩擦で国内は疲弊し生活は困窮するばかり。グレトンとは関係が悪化し鉄鉱石の供給もままならない現状、レイティス共和国と友好を結んだと息巻く王家」


 セバスはこちらに歩み寄ってくるがその足音は重い、というよりも強く感じられたが続けて読み上げていく。


「軍事拡大路線も留まる事を知らず、その軍事力を背景に諸外国を植民地とする王家の蛮行を横行させる事に憤りを感じずにはいられないだろう。自国民を思い他国を尊重するのであれば武力ではなく話し合いで融和を進めるべきであろう。ガザレリアはその友愛精神から魔物、動植物にも向けられた優れた伝統と考え方を重んじている…だってさ」


 気づけば真顔のセバスが隣に立っており、その表情には怒りも呆れもなく淡白な様子だった。俺の持っていた新聞を手渡すと受け取りはしたが畳んで持っているだけで文字すら見ようともしない。奴の気持ちも分からなくはない。ただありのまま受け止めてはいるものの納得はしていない、そんな様子だ。


「言いたいやつには言わせておけば良い。機関紙では正確な情報をきっちりと出しているからな、といってもほとんど事後報告なんだが」


「過程の話を出す事は出来ませんでしょう。他人に手札を見せながらポーカーを誰がやるのかと」


「気の利いた例えだな」


 珍しく冗談を込めたセバスの物言いに笑って応えて見せて、彼らを連れて自室を後にする。


 国内でこのような記事を出しても厳罰のようなものを下すつもりはない。いや出せないというのが正確か。ドラストニアは各都市地域に知事を置くことで領主ではなく選挙によって選ばれた存在が各地域の代表として政務を行う形式へと変わっていった。これからの時代は国民がそれぞれ自分達の代表を選ぶ事で自分達も政治参加という意識を持たせる意味合い持つため、自分自身の生活に直結するという点から国民も代表を吟味する能力も養える。


 ただ反面、知事に選出される人間が国民の支持を得たいが為の迎合を行うこともある。選挙活動を行うに際して彼らも資金を得るために地方紙や領主に取り入るなんてこともザラだ。特にミスティアなんかは良い例じゃないか。


「自国を非として、他国を優と考える見方は危険です。謙遜と他者を重んじる見識は大切でしょうが、真偽を見定めることとはまるで違いますし、これでは自虐とも取れるでしょう」


 控えめに言って狂言のようにさえ感じる。実態も知らずになんの裏付け根拠も書かれていない。そんな地方紙で国内政治の確かな情報を得られていると悦に浸っている有識者も数多く存在する。国民の情緒に訴えかける物言いも侮ることは出来ない。人間なんて物書きが作り出す唄のような物言いを好んで、何かを大切に守ろうとするという『綺麗な』文面や言葉を素晴らしいことのように受け止める。だが実態にはまるで興味さえも持たない。物事の核心部分にはまるで触れようとしない。


 だが少し考えればわかるように自国の行っていることに対して自虐的な考え方を持つことに疑問を抱くだろうか。決して国民生活が困窮しているような状態ではない、むしろ王都に関しては労働者問題の解消もなされて国民生活の水準も上がった。当事者の俺たちからだけでなくそんな国民から見てもむしろ疑問にさえ思えてくるのではないか。


「自虐でないとしたら?」


「は?」


 意外とも思ったのか目を丸くさせて返してくる。だがセバスも少し思うことがあったのか見る見るうちに表情を変えてこちらの意図に気づいたようだ。


「工作員による活動?」


 ドラストニアはレイティス、フローゼルは現状でこそ良好関係を築くが内部に反目する勢力が存在していたのは事実。グレトンに至っては敵対心を剥き出しにしていた人物が政権の中枢にいた経緯もある。その中で疑わないという考えはむしろナンセンス。ドラストニアと戦争をしてただで済まないということはいずれの国家も承知している。故に内部の入り込み工作活動で瓦解させていくという考え方は分からなくはない。


「ならばいずれかの国家が今回の会談で主導権を握るために」


「ガザレリアのように友愛精神を大切に…という文面も見たぞ。だからガザレリアなのか? と言われればそうとも限らない。いずれかの国がガザレリアに疑いの目を向けるための工作かもしれないしもしかしたら全くの『別勢力』かもしれないな」


 考えをめぐらせるとキリがない。どの国家の事も信頼たる関係とまでは進んでいない。最も信頼たるフローゼルでさえ彼らにとっては王女殿下を人質として取られているとも受け取れる関係。彼女自身は納得して今回の任にあたってくれてはいるからそれが唯一幸といえるか。


 実質、時の権力者として君臨しているドラストニアに対して批判をしているのかもしれない。権力に対しての政権批判と闘争は切っても切り離せない。思いはあれどその根底は自身が権力者側になること。おそらく新聞もそうした側面に既に踏み込みつつあるのだろう。いつの時代か政権ではなくこうした機関が最大の権力者として君臨する日もくるののではないかと、俺自身最も憂慮している部分はそこにあった。そこに公正公平など存在しないだろう。自分達の思想主義をただ訴えかけるだけの『情報誌』から『機関紙』に変わっているだろう。


「民衆は愚かなんじゃない。ただ『無知』なだけだ」


「それは我々にも言えることでは?」


 俺たち自身も知らぬことの方が多い。人間誰しも全知などということはありえない。始まりはいつだって無知なのだ。生きていくうえで人は知を理解していき、それは誰しもが与えられた責務でもある。そんな責務を全うしようと『小さな奴』が自分達の身近にもいることを思い出す。


「ロゼットとイヴもそろそろ合流した頃だな」


「ええ、予定通りといけば魔物討伐のための部隊編成と出撃となっている頃合でしょう」


「ミスティアも随分とだからな」


 地理的にも友好国とは言いがたい隣国に挟まれている上に要所なのが厄介な話だ。片方は強力な空軍を持つ産業大国のビレフにもう片方が絶賛問題中のあの魔物国家ガザレリア。シャーナルのこともあるため尚の事この会談は成功に収めておきたい。ほぼ成功はするだろうとは踏んでいるが、ミスティアの状況にもよる。思った以上にガザレリアの侵食が進んでいると考えると軍を動かす事に異を唱える勢力の妨害工作に悩まされるのではないか。


「こっちの心配よりもガザレリアか…」


「シャーナル皇女からも連絡がございません。もしや…」


「あいつは相当狡猾だからあの国の大統領じゃ手綱で縛っても乗りこなせないだろう」


 女性に縄と俺が変な想像をしているのではないかと怪しいものを見るかのような目を向けてくるが、そこまで好色じゃない。なにより一応政敵ではあるし同じ王位継承者同士。後妻だった母親の子供の俺自身王家とは何の縁もないとはいえ身内でもあるシャーナルに手を出す気なんてさらさらないし、あいつ自身俺の事を男としては嫌ってるようだからな。あの胸は魅力的だが…。


「そちらもですがミスティアは雨季に入ります。魔物の性質も大きく変わり、より危険視される魔物も徘徊を始めるでしょう。雨の中での戦闘はどうしても人間にとっては分が悪いのでは」


「そいつらは元からこの地にいるから、むしろ『外からの連中』を駆逐してくれることを祈るよ」


 外側からやって来たものという話にセバスは首を傾げる。まだこちらも報告段階のため正確な判断が出来ない案件だ。ただこれがもし事実だとすれば相当面倒なことになる。そのための手として領主にはビレフと結びつきを強めるために商談を進めてもらっていたがこれはがどう作用するかはまだ分からず仕舞い。俺たちは俺たちで自分達の切れる手札を増やすべく水面下で動くしかない。


「そういえば…セバス。西大陸では昔、自分の手札を額につけて遊ぶポーカーもあるみたいだぞ」


「妙な遊戯を思い浮かぶものですね。自身の正体は分からず、だが敵の正体は分かっているというわけですな」


「そういうことだ」



 ◇



 数日後、ミスティアの城壁の正門にて各々編成された部隊が最終確認と号令をかけている。兵の面々はよく見るとバラバラで正規兵ではない義勇軍も入り混じり、王都の精鋭とはまた毛色も違えば厳しい規律もないため粗暴な話し方をする人間も多々目立つ。


 志願者の数は想定していた数よりも多く、常駐の装備だけでは不足したためにラムザの物資が多いに役立つことになった。今回の出撃兵力規模は総勢千名ほどで残存兵力は都市の防衛。雨季へと入るために大部隊での行動は困難で兵の士気にも影響するため小隊規模に分けてできるだけ広域にかけて行動できるように編成。


 ラムザがもたらした兵装の存在が士気に大きく影響し、兵達の面々も喜ぶ表情を隠しきれていなかった。そんな様子を見回しているラムザへとポットンは歩み寄る。


「これほどの兵装を一民間が保有しているとは驚きました」


「元々商社をやっておりましたので交易のコネはいくつも持っています。兵装もどれも現地調達ですので検問を通す手続きも不要です」


 ラムザは続けて話す。


「……実はここだけの話ですが経営している内容は軍事関連でして、他国に軍事力を売ることを目的としているのですよ」


 民間で軍隊を持っていることにポットンは驚きつつも予想していた通りと睨んでいた。彼は今回は物資の補給だけだがその他にも派兵も行っているとも話した。


 これまで国家規模でしか軍を持つ事ができなかったために民間でそれを賄うとなると相当の財源を要する。個人単位の傭兵は幾度となく存在していたが義勇兵や単なる賞金稼ぎという側面の方が大きい。それを組織化して運用するとなると容易ではない。


「なるほど…だから今回物資を容易に持ち込めたと」


「基本は現地に。検問で何を言われるか分かりませんからね」


 ラムザの返事に意味深に笑みを浮かべて返す。彼を利用すれば大いにこの地で力を付ける事もできると踏んだのか今後も関係を続けたいと握手を交わす。ラムザも笑顔で応えその屈託のない表情にむしろ畏敬の念さえ抱く。


「それでは、幸運を」


「ありがとう」


 ポットンも兵と合流するために部隊へと向かい別れの言葉を交わした。その内に秘めた野心の片鱗を互いに見せ合い、彼もまた魔物討伐のために剣を取った。


 いくつもの部隊に分けられた中でイヴの部隊は三十名ほど。すでに出発準備も完了し、目的地域まで向かうべく担当馬車を探しているところだ。その横にはロゼットの姿もあり、彼女は補助員として付き添う形となった。というのもポットンが組み込むように進言したこともあってロゼットも従わざるを得ず、せめて自分と同じ部隊にして欲しいと彼に頼み込んだ事でイヴの部隊に所属となった。


「確かこの馬車ね」


「あれ……なんか見覚えあるような」


 二人で話していると御者席のほうから怒号が飛んでくる。


「冗談じゃねぇぞ! これから魔物を討伐に行くってのになんで魔物に牽引されなきゃなんねぇんだ」


「乗りたくなけりゃ乗らなくてもいいぞ」


 兵士の大声に冷淡な口調で返す声の主。その喧嘩を宥める声に聞き覚えがあったロゼットは駆け寄ってみると想像していた通りの人物達の姿が目に映る。


「ラフィークさん! ハーフェルさん!」


「ん? なんで嬢ちゃんがここにいるんだ?」


「それはこっちの台詞ですよ。どうしてここへ?」


 彼ら曰く魔物のハーフェルが牽引する馬車業では商売にならなかったらしく、魔物にも比較的友好的なこの地に移住してきたそうだったがその矢先に今回の一件に重なってしまったのだと落胆する様子で話す。久しぶりの再会に喜んでいたのもつかの間、その口論をしていた相手にも見覚えがありロゼットと男は互いに認識しあうと警戒する。この男もフローゼルの広場で相対したあの義勇軍の兵士だった。男は大声を上げてハーフェルとロゼットの事を罵り、件のことでも恨み言をぶつけてくる。彼を黙って睨みつけている横からイヴが現われ男の表情は凍りつく。


「それで? もう満足ですか?」


「お、王女殿下!? なぜ貴女まで」


「少し事情があって、今はドラストニアに身を寄せております。フローゼルでもそうでしたがクルス教が魔物討伐とは随分と熱心な信仰心の持ち主ですね」


 冷たい声に冷淡な口調、そしてまるで氷のように冷たい視線を向ける。男は何か言いたげに唸るだけで反論の言葉も出ずに立ち尽くしていると騒ぎを聞きつけたポットンがやって来た。救いの手が来たかのように表情を変えた男はポットンに事情を話す。時折こちらをちらりと目線を向けては終止笑顔で対応し、男を説き伏せている様子が伺えた。が…そのときのポットンから感じられるもの、何処かで似たような感覚に陥った時のことをロゼットは思い出しながら彼らの話を聞いていた。


「こちらの者が粗相をしてしまい誠に申し訳ございません。まさかフローゼル王国の王女殿下とは露ほどもしらずに、大変なご無礼を。魔物討伐はクルス教も心から願っています。この地に住む『人間』として当然の義務でしょう。だから今回参加を許したのですがまだまだ未熟者故に人の心に訴える物言いが出来ないのです。この場は私に免じてご容赦を」


「すまなかったね、ヴェルクドロール」


 そう言って彼女達に向かって深々と礼をして謝罪の意を表する。イヴも出撃前に騒ぎを起こすつもりはなく、ロゼットも謝罪を受けて当面の主の息子である彼に習い丁寧に礼を返す。事なきを得て彼らの馬車に乗り込もうと積荷作業に向かう途中だったが再びポットンに呼び止められた。


「王女殿下、馬車はこちらでご用意させていただきます。何か粗相があってはこちらも王都に顔向けできません」


 粗相という言葉にラフィークは反応。その表情は僅かに曇っており、直接罵声を浴びせられる言葉よりも一層不快感を与えるようにも聞こえた。イヴも同じく冷たい視線を向け、表情がなかった。明らかにハーフェルに対して向けた言葉だというのはロゼットにさえ分かった。


「王女殿下の身に何かございましたらこちらの責任でもございます。こちらで用意した部隊と馬車で…」


「編成された部隊での出撃も私の任務です。こちらで役割を全うできなかったなどという事になれば私が王家に顔向け出来ません」


「それに、見知った顔でもございますので何より私自身信頼している者に身を寄せたいと思っております。お心遣いありがとうございます」


 丁寧な口調と笑顔で返すイヴ。その笑顔に他意は全く感じられない、むしろ彼女自身の心情そのものであった。さきほどまでの凍りつくような表情とは違いその笑顔には穏やかさのみが映し出されている。ポットンは一礼して彼女に笑顔をだけを送りその場を立ち去り自身の部隊へと向かう。ラフィークは鼻で笑い運搬作業を手伝い、ロゼットの表情にも笑みが零れる。


(これが仲間…なのかな)


 そんな風に思いつつも彼女は出撃の準備で緊張していた心が少し和らいだようであった。


 そして各部隊の出撃合図と共に都市を後にして、馬車が走り出す。各所命ぜられた地域へと向かい、イヴ率いる部隊は四つの馬車に分けられ、ハーフェルを先頭に一気に駆け出す。久しぶりの馬車での旅立ちに心躍らせるロゼットであの時とは違い荒野ではなく緑生い茂る大草原。晴天に恵まれた絶好日和にとても雨季が近付いているとは思えなかった。


「こんなに晴れてるのに本当に雨季がくるんですか?」


「雨季の前は大体こんなもんさ、偉い学者が言うには嵐が周りの雲を引き付けちまうからここら一帯の雲もみんな持ってかれてるって話らしいぞ」


 兵士の一人がロゼットの疑問に答えてくれる。彼に言われ空を見ても確かに雲はほとんど見当たらない。太陽と蒼天に何処までも続く青い大地。首をかしげて疑問に思いながら見渡していると、馬車の横を走ってゆく群れ。ダチョウのような巨体に孔雀のように鮮やかな羽を持つ鳥は群れをなして馬車と並走するかのごとく自由に走っていく。


「あの魔物はなんていう名前なんですか?」


「ありゃ『ズー』の群れだな。肉食だが人間は襲わない大人しめの魔物だよ。雨季を前に移動を始めてるんだな」


「どうして移動をするんですか?」


「環境がガラッと変わっちまうからだよ。あいつらはジメジメした湿気の多い地域には生息しないから、北上していく途中なんだろうな。雨が降ってぬれちまったら飛べなくなるだろう?」


『ズー』はダチョウのような容姿をしているため飛ぶ事は出来ない。子供相手だったからなのかそんな冗談をかまして、周囲の兵士もクスクスと笑っているが存在そのものを知らないロゼットからして見ればそれが常識なのだと思い疑いもせず真に受けていた。


「あ、確かにそうかも。ほえ…みんな物知りなんですね」


 ロゼットの言葉に気分を良くしたのか、可笑しく思ったのか笑い声が上がる。困った表情で自分が可笑しなことでも言ってしまったのか慌てるロゼットに兵士はネタばらしをすると、彼女は見る見るうちに顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。イヴも御者席で困ったような笑顔で彼らの話声を聞きながら馬車に揺られる。


「あの嬢ちゃんは変わってねぇな。ありゃ何処行っても面白がられるな」


「子供を馬鹿にするなんて悪趣味よ」


「可愛い証拠じゃないか。ああいう素直な子の方が心象は良いと思いますぜ殿


「やめてちょうだい」


 兵達の調子に乗ったのかラフィークも冗談を飛ばす。規律に厳しいイヴもこれから魔物討伐へと向かうためのささやかな時間と捉えれば多少の軽口にも目をつぶることにして、むしろ士気が上がってくれるのなら幸い程度に考えていた。


「貴方達も不運ね。移住先でこんなことに巻き込まれるなんて考えてもいなかったでしょう」


「ま、それはお互い様じゃないか? 女性に押し付けるような任務じゃないだろうに」


「貸し借りはしたくないのが私の主義だからよ。借りたものはいずれ返せないほどに大きく膨らむもの、だから後々禍根になるようなものを残しておきたくないわ」


「その通りだと思うぜ。それにホントに


 彼の言葉に反応したイヴは前方を見ると異変に気づく。なにやら前方で魔物の集団のような塊が何かを追っている様子にも見えた。


「姫さん、出撃早々お仕事になりそうだぜ」


「できるだけ接近してもらえるかしら。各員敵襲!」


 ラフィークに接近するよう頼み、イヴは兵達へ通達。緊張が走り先ほどまで笑いこけていた彼らの表情から一気に笑顔が消え失せ、戦士のような強面へと変わった。ロゼットもそれに反応し固唾を飲んで自身の剣を強く握り締め、馬車の走りに勢いが増していくのを感じていた。

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