第16話
【才能なんて必要ない!】
十五、五話
私、白銀みことは彼、松岡雄護が好きだ。誰にも取られたくない。それは昨日の初夜に決めたことである。
昔っから大好きだったとはいえ、昔は伝えられなかった。その前からずっと想ってきたこの気持ちを。でも、今は伝えられた。
私は再開を果たした時、運命めいたものを感じていたのかもしれない。私ら二人はなにか強いもので繋がれてるんだって。
だから、負けない。例え相手があの世界ランキング三位の校長先生だとしても。
さっき、噴水の前で手紙を貰った。先生は怖い顔をしていた。まるで浮気相手でも見るかのようなそんな目だった。
でも、正妻もとい正彼女は私なのだ。それは昨日ではっきりした。
そして、その悪魔のような目で睨む彼女から果たし状と書かれた紙を貰った。
中を開くと『本日十四時、一人で才能学園決闘場に来い!』との記述があった。
これは女同士の戦いだ。男の彼には全く関係ないことだ。先生の才能については知ってるし勝算もある。
私の才能は彼に見せたくない。多分、嫌われてしまうから。
私は一人、彼を騙して学校へと向かった。制服ではなかったが校長特権で大丈夫だろう。
夏休みだからという理由で校門は閉まっていたが、普通に開いた。先生らも居ない。
夏だというのにやけに静かな道を通る。まだちょっと慣れ親しんだとは言い難いが、いつも通ってる場所を抜けて先生の言っていた決闘場に着いた。
先生は既に居た。青いオーラを纏う彼女は悪魔そのものに見えた。
「ハロー」
一応、挨拶をしてみるが帰ってきたのは嫌悪に近い眼差しだ。
「一応、君も生徒だし同じ人を愛した人間だ。だから、決闘はしっかりと行うよ。ルールは簡単。再起不能にさせれば勝ちさ。景品はわかってるよね?」
事務的な声で先生はそう言うと、ポケットからコインを出して右親指の上に乗せた。
私が頷くとコインを打ち上げた。
汗がこめかみから顎へと流れ、地面へ落ちると同士にコインも落ちた。それを合図に火蓋が切って落とされた。
先生は先手必勝とでも言わんばかりに私の懐に潜り込むと電撃を放つ。だが、それを許すほど私も甘くはない。
先生の腕を掴んで先生にそのダメージを跳ね返す。
私の才能は才能を打ち消し、自分の力に変えるものだ。
「ぐっ……」
やっぱり一撃で決めるつもりだったらしい先生は私から一旦距離とって片膝をついた。
だが、私にも代償が付きまとう。先程使った右腕が緑色に変色し固くなった。触ると石みたいに冷たくて重い。
これで、私の右腕は使いようがなくなった。こんな腕、誰にも見られたくないからずっと使わないで来たけど、ここでなら別に大丈夫。例え全身がこんな石になってしまったとしてもまーくんに嫌われることも無い。
「私ね。あの子のこと好きなんだよね。だから、君は邪魔なんだ」
フラフラとした足取りで立ち直しながらも、先生はそんなことを言った。
先生も本当にまーくんのことが好きなんだろう。でも、この気持ちだけは負けるわけにはいかない!だから、絶対に負けられない!
右腕を抑えつつも次の攻撃に備える。当然、この右腕はバレないようにしなければならない。
「……あーしもまーくんラブなんですよ!」
電撃を返し、反撃するが流石世界ランク三位。敵ながら天晴れだ。右腕部分からどんどんと身体が動かなくなっていく。
動けなくなるのも時間の問題だ。早く決めないとまずい。だが、先生は強めの技を打ってこない。私のこれに気がついたのだろうか?
いや、そんなことを考えてる暇はない。どうにかしてあの人を再起不能にしなければ!
「おい!なにやってんだよ!」
「え?」
私はその声に聞き覚えがあったが、フリーズした。なんで?なんで彼がここに居るの!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます