「赤髪組合」をもう一度

松浦 由香

第1話

 その日は冷たい雨が降っていた。

 冬の雨は嫌いではなかった。足の指が凍りそうな感触がわりと好きで、少し遠回りをして帰っていた。

 雨だし、冬だから、午後四時を少し過ぎたころでも辺りはすっかり暗くなっていた。街灯が心もとなく少し先に見える。足元が暗くて視界が悪かったが、それでも、見えなかったわけではないのだが、一本の電柱にふと視線が向いた。

 この辺りは帰路でしか通らないので、一本入った場所になど興味はなかったし、住宅街だと思っているので、そこを通ろうなどと思わなかったが、この電柱に貼られている―今時、電柱に貼っていいものかどうか?―の文句が気に入った。


―紅葉団地赤西一丁目 赤坂病院 赤西公園前―


 いろいろと赤い。

 紅葉も赤ければ、赤西だし、赤坂だし、何となく、道まで赤いのではないかと思った。病院はさすがに赤くはないだろうが、公園の遊具は、赤いかもしれない。

 そんなあほらしい気持ちで、この、紅葉団地へと足を踏み入れただけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る