7‐19「叶った願い」♢
私たちは王様からオーブを頂くと王宮を後にして街の出口を目指して歩いていた。
「やったな、ダイヤ! 」
「はい、2つ目のオーブです! 」
そう答える時、喜びで思わず頬が緩んでしまっているのが自分でもわかった。でも、不安もあった。
「どうしたんだダイヤ」
キョロキョロと辺りを見回す私を不審に感じたのだろうスペードさんにそう尋ねられる。
「実は、誰かに突然奪われたりしないのか不安で」
「何をだ? 」
彼女が何のことだか分からないというように首をかしげる。
「オーブですよ、オーブ! こちらのオーブは王様もスペードさんのご存じの通り魔王討伐の鍵になるであろう大切なオーブなのです。幸い今黄色のオーブは杖に装着していてカモフラージュができていますが今手に入れたばかりのこの緑色のオーブはどうカモフラージュをすればいいのか浮かばないのでこうやって周りを見て怪しい人がいないかを見張っているのです.
どこかに仕掛けがあってそれを解かないと開かない小箱みたいなものがあればいいのですが……」
実のところ、これが今の私の不安の種だった。もし、このオーブが狙われていて奪われてしまったら……そう思うとこの人が多いこの街にいる間は気が気ではない。
「なるほどな」
スペードさんはそう言うと難しい顔をして無言になった。何かを考えている様子だ。それからしばらくして彼女がこちらを見て自信ありげに口を開いた。
「よし、とりあえずそのままバッグの中に突っ込んでおこうぜ! 」
「え? 」
彼女のあまりにも直球の提案に私は目が点になる。
「オーブは綺麗ですごい力を持ってるみたいだけどさ、どの杖にもオーブみたいなのはついてるだろ? だったら分かりゃしねえって! 前の杖の思い出とかで取っといてるとか考えるだろ。むしろ、変に箱に入れてなんてあったら何か豪華なものが入ってんだなって気になるなオレは」
彼女がさらりと説明する。確かにその通りだと思った。
「そうですね」
「そうだよ、だから今もさ何か高いもの隠し持ってます! みたいな態度はやめて堂々としてりゃいいんだって」
そう言われてハッとする、彼女の言うように今の私の態度は何かを持っているというのを人々に知らせてしまうような動きだ。対してスペードさんは堂々と歩いている、でも彼女のバッグには何百万ギルドという大金が入っているのだ!
スペードさんは凄いなあ。
大金を持っている素振りを微塵も見せない彼女の横顔を眺める。すると彼女の足がピタリと止まった。
「お、おい、あれってまさか……」
そう言って彼女はある一点をまじまじと見つめる。彼女の視線を目で追うと話をしている間に門まで来ていたようで門を抜けて直ぐのところに青銅の鎧と兜に身を包んだ一人の騎士が立っていた。その騎士の背中にある剣は見間違えるはずもない、トーハさんの持っている蒼速の剣だった。
「ええ、あれはトーハさんです! 」
「どうやらダイヤの夢、はやくも叶いそうだな」
スペードさんがこちらをみて二ッコリと笑う。
「はい! 」
私はそう答えると彼の元へと駆け寄っていった。
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