第27話 リザリィの隣
コテージに戻ってコーラとソーダを飲むと、先にシャワー浴びていいかしら、とリザリィがシャワールームに行って、ずっとリザリィのペースに巻き込まれているなぁと思うけど、これはこれでラクでいいな、とも思う。
リザリィに続いて僕もシャワーを浴びながら、シャンプーとボディソープは12番のコテージと同じものなんだ、と確認する。僕にとってはシャンプーなんかどこのものでもいいんだけど。
僕がシャワールームからリビングに戻ってくると、「じゃあ」とリザリィはベッドルームに行こうとするから。
何なの、この展開の早さは。いや、僕はもうちょっとリザリィのことを知りたいんだけど、と言ってみる。
そんなの、後でいいわよ。リザリィはそう言うけど。
時間を置かずにさっさと任務は遂行したほうがいいと思うの。変に明日とかになったら逆にやりにくくなるわよ。
うん、それは一理あるかもな。リザリィも最初の時はそうだったんだろうか?リザリィの最初のペアは誰だっけ?そうだ、カイルだ。僕はがっちりした身体のカイルの濃い顔立ちを思い出した。あのカイルも最初はおたおたして上手くいかなかったのだろうか。そう思うとおかしかった。
逆に気の強そうなリザリィとそういう雰囲気に持っていくにはどうしたらいいかしらんと考えていた僕にとってはありがたいことだった。
ロマンチックな雰囲気とかそういうもの一切ナシで僕たちはベッドに潜り込んだけれど、パジャマ越しとはいえ、リザリィの暖かい肌に触れると僕はちゃんと任務を遂行出来そうだった。
リザリィのパジャマのボタンをはずすと現れたのはアウラの3倍はありそうな胸で、僕は、ここでアウラと比べているなんて悟られてはまずい、と咄嗟にその胸に顔を埋めて、素敵だね、と囁いた。
リザリィと任務を遂行した後、僕は横になったまま隣にいるリザリィのゆるくウェーブがかかった柔らかい髪に触れる。
同じシャンプーを使っていても時間がたつと、その人本来の体臭と混ざるからだろうか、人によってそれぞれ違う香りになることに僕は初めて気が付いた。
まだ夜は浅くて、ねえ、リザリィはどうしてB計画に応募しようと思ったの?僕はそう聞いた。
500万コインのためよ。リザリィはあっさりそう答えた。
ウチの母は看護師だったの。え、そうなの、じゃあ技術者階級なんだ。うーん、微妙に違うわ。母は技術者階級だったけど、父は中流階級なの。
珍しいね。僕は思わず言ってしまったけど、階級が異なるもの同士の結婚は、別に禁止ではないけどとても珍しい。ほとんどないと言ってもいいぐらいだ。
だから父とは母いつもお金のことでケンカをしていた。異なる階級での結婚が少ないのは子供の学費問題があるからよ。
中流階級の親は子供に高校までの学費しか用意してやれないし、技術者階級の親だってがんばって子供にようやく専門学校までの学費を用意することが出来るぐらいに学費は高くて給料は安い。
ウチには弟もいるし、1人分ならなんとかなっても2人分の専門学校の学費はどんなにがんばって働いても、どんなに節約したって用意できない。
でも500万コインあれば。
それはほぼほぼ専門学校2年分の学費と同じだった。
だから私はその500万コインで専門学校へ行きたいの。なるほどねー。参加者に選ばれてよかったねぇ。そこそこ競争率は高いはずだし。
うふふ、私運はいいのよ、とリザリィは笑った。
でも技術者階級の仕事は大変だっていうよ?僕が言うと、確かにウチの母も仕事が終わって帰ってきたらグッタリしていたわ。ストレスが溜まるって言ってたしね。
それで母は、週に1回、本物コーヒーを飲むのが楽しみだったの。でも父はそれを贅沢だって怒った。週に1杯の本物コーヒーをやめたって500万コインが貯まるわけでもないのに。
リザリィがコーヒーが好きではないと言ったのはこれが原因なのだろうか?
でも階級を越えて結婚するなんて2人はすごく愛し合っていたんだと思うよ。僕がそう言うとリザリィは、最初はそうだったかもしれないわね、と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます