8.そして次なるレベルへ

 レベル0とレベル1では収入の桁が違う。レベル0の依頼は、1日働いてもせいぜいが銅貨20枚。つまり、銀貨2枚が関の山。

 だが、レベル1は1つの依頼で金貨3枚以上はもらえる。


 ただし、仕事の内容も全く違う。レベル0の依頼は、それこそ子どもでもできる半日で終わる雑用がほとんどだった。

 レベル1の依頼は数日がかりで時に命を失うこともあるモンスター討伐や、護衛などだ。鉱山の仕事にしたってかなりの力仕事で落盤などの危険はある。


 だから、俺達がレベル1の依頼を30回こなせたのは、ソフィネがレベル1になってから実に204日後のことだった。

 この世界の1年は310日。

 アレルとフロルは6歳になり、ライトは14歳になった。ソフィネもあと20日ほどで14歳である。

 俺の年齢? シルシルによればこの体は成長しないから、年齢を考える意味は無いそうだ。

 一応、日本の年齢にこの世界で生きた日にちをプラスすれば18歳か。


 ちなみに、最初の鉱山での仕事などの分、ソフィネのこなした回数が足りないと思うかもしれない。

 が、彼女はいつの間にやらレンジャー1人だけの依頼をいくつかこなしてしまった。

 たとえば、どこぞの貴族のわんちゃんが巨大金庫に閉じ込められて、しかも鍵がなくなったらしく、鍵開けのできるレンジャーが必要だったとのこと。レベル1の依頼としては半日で終わる、しかも危険が一切無いラッキーなものであった。

 レベル0のレンジャー候補では鍵開けなんてまともにできないからね。


 現在のパーティーメンバー5人のステータスを確認しておこう。

 まずは俺。


 ===========

 氏名:ショート・アカドリ

 職業:冒険者(魔法使い レベル1)

 HP:34/34 MP:102/102 力:22 素早さ:11

 装備:旅人の服

 魔法:無限収納/地域察知/体力回復/怪我回復/解毒/火炎球/火炎連弾/爆裂弾/水球/氷球/水球弾/氷球弾/水連壁/氷球弾/吹凍雪/泥沼/石飛弾/砂嵐

 スキル:自動翻訳

 ===========


 エンパレの町で覚えられる魔法は全て覚えた。最初見たときは高いと感じた魔法の値段も、レベル1の依頼料や魔石の値段を考えればしごく妥当だったのだ。

 レベル0であれほどの魔法を覚えようとした俺とフロルに無理があったのだろう。後から聞いた話だと、攻撃魔法の1つも使えれば、レベル1の試験は受かったのこと。


『石飛弾』と『砂嵐』はゴボダラの依頼でアルバカデのギルドに言ったときに覚えたものだ。

『石飛弾』は石を敵にぶつける魔法。『砂嵐』は文字通り砂嵐を巻き起こす目潰しなどに使える魔法だ。

 もっとも、『泥沼』と『砂嵐』は味方側の前衛も巻き込みかねないので意外と使い勝手が悪いのだが。


 それにしても、俺の肉体関連のステータスは全然上がらん。冒険者ではない大人の体力を見ても、この世界は日本人よりも力が強いヤツが多い。シルシルのヤツ、そっち方面の祝福も少しはしておいてほしかったわ。


 次はアレル。


 ===========

 氏名:アレル

 職業:冒険者(戦士 レベル1 ※ただし満十歳までは大人の冒険者とパーティを組んだときに限る)

HP:210/210 MP:20/20 力:192 素早さ:192

 装備:旅人の服(子ども用)/鋼鉄の剣

 魔法:なし

 スキル:見切り Lv9/俊足 Lv9/風の太刀 Lv7/光の太刀 Lv3/炎の太刀 Lv1/気合い Lv6/威圧 Lv2/連撃 Lv9/大連撃 Lv5/分身 Lv2/捨て身 Lv1/天下無双 Lv1/気配察知 Lv3

 ===========


 もうね。この子はなんなんだろうね。とどまるところを知らないとはこのことである。


『炎の太刀』は剣に炎をまとわせる攻撃方法。遠距離攻撃ではない。理屈は知らん。魔法にしか思えないが、MPは消費しないし思念モニタも必要ない。きっとそのうち『氷の太刀』とかも覚えるんだろう。そんなスキルがこの世界にあるかどうか知らんが。


『大連撃』は単純に『連撃』の上位互換らしい。もはや『連撃』Lv5くらいの段階で、俺には見えなかったのでどのくらい凄いのかもよく分からない。どうも、スキルのレベルは9までで、それを超えると上位互換のスキルを覚えるらしい。


『分身』は文字通りだ。もちろん、2人に本当に別れるのではなく、凄まじいスピードで2人に見えるというヤツだな。忍者か!? 『俊足』と『見切り』両方がLv9になった者だけがおぼえられるそうだ。


『捨て身』は防御力を犠牲にして攻撃力を上げるスキル。これは危ないのでめったなことでは使わないようにとミリスに言われていた。


『天下無双』も連続攻撃系統なんだけど、複数の敵を同時に連続攻撃する。さすがのアレルにも難しいらしくLv1からなかなか上がらない。


『気配察知』は周囲の人間やモンスターの居場所を第六感で察知するとのこと。もう本当に意味が分からん。超能力者かっ!?


 戦士系なのだから、鎧を買ってやりたいが、5歳児向けの実用的な鎧なんてどこにも売っていない。特注で頼もうとしたのだが、アレル曰く『動きにくそうだからいらなーい』だそうだ。ここら辺はもう少しレベルが上がったらもう一度要検討だな。


 ところで、みなさん気になっているかも知れない。アレルのMPのことを話しておこう。

 MPが0ではないということは、魔法を使えるはずだ。

 しかし、いくら儀式をしても魔法は覚えなかった。

 念のため、教会に大枚をはたいて神系の魔法の儀式も受けたのだが無駄。

 シルシルも首をひねっていたが、そもそも勇者の因子の魔法の力はフロルの方にいっているので、アレルになぜMPがあるのかむしろ不思議だとのこと。


 ま、どのみちアレルは未だに読解が危ういので思念モニタを扱えそうもない。計算もダメダメだしね。

 あと、6歳になっても舌足らずなのは、いい加減なんとかした方がいい気もする。


 次、フロル。


 ===========

 氏名:フロル

 職業:冒険者(魔法使い レベル1 ※ただし満十歳までは大人の冒険者とパーティを組んだときに限る)

 HP:42/42 MP:230/230 力:20 素早さ:19

 装備:旅人の服(子ども用)

 魔法:体力回復/怪我回復/解毒/火炎球/火炎連弾/爆裂弾/水球/氷球/水球弾/氷球弾/水連壁/氷球弾/吹凍雪/泥沼/金剛/力倍増

 スキル:なし

 ===========


 6歳になったとき、ブライアンから炎系の魔法を習う許可が出た。


『金剛』と『力倍増』はアルバカデで覚えた魔法だ。補助系の魔法に属する。

『金剛』は仲間1人への敵の物理攻撃を1回無効にする。ただし、限界はあり。

『力倍増』は一定期間味方の力を倍増させる。実験してみた結果、5分くらいだな。

 教会に金を払って『怪我回復』も覚えさせた。『地域探知』は覚えられなかった。


 ぶっちゃけ、彼女、『無限収納』と『地域探知』を除けばほとんど俺の上位互換である。俺がダメというか、シルシルも大したことがないというか。

 つーか、戦士のアレルやライトはともかく、同じ魔法使いのフロルよりもHPが低い俺って一体……


 次はライト。


 ===========

 氏名:ライトルール

 職業:冒険者(戦士 レベル1)

 HP:145/145 MP:0/0 力:123 素早さ:170

 装備:旅人の服/鋼の鎧/鋼鉄の剣/鉄の脇差し

 魔法:なし

 スキル:見切り Lv5/気合い Lv3/威圧 Lv5/連撃 Lv5/俊足 Lv2/気配察知Lv1

 ===========


 アレルのステータスと比べると見劣りするようだが、はっきりいって彼もレベル1の戦士としてはかなりのものだ。『威圧』にいたってはアレルを超えている。


 嘘だと思うなら、魔の森に入る前のミリスのステータスと比べてみて欲しい。はっきりいって、あの当時のミリスを完全に凌駕している。

 以前ミリス自身が言っていた通り、彼はミリスを超える才能があったのだ。


 14歳以下で彼ほど強い戦士は大陸中探してもそうはいないというレベルらしい。『気配察知』を使える14歳なんて、アレルを除けば見たことがないとはミレヌの言。伝え聞くところによれば、あのレルス=フライマントですら、『気配察知』を覚えたのは13歳の時だったという。


 いわば、ライトは20年に1人の天才、レルス=フライマントは50年に1人の天才、アレルは300年に1人の天才っていうことだろう。


 ちなみに、鉄の脇差しはミリスがら譲り受けたものだ。以前使っていた鉄の剣は俺の無限収納の中。アレルの木刀もね。


 最後にソフィネ。


 ===========

 氏名:ソフィネ

 職業:冒険者(レンジャー レベル1)

 HP:65/65 MP:0/0 力:89 素早さ:211

 装備:旅人の服/皮の鎧/木製の弓

 魔法:なし

 スキル:アイテム鑑定 中級/罠発見 初級/罠解除 初級/解錠 上級/必中 Lv3/見切り Lv1

 ===========


 彼女もレベル1としてはかなりのものだ。『解錠』の上級というのは、いくら3歳から父親に仕込まれたとはいえありえないらしい。

 罠関連が初級から成長していないのは、そもそもダンジョンで実際に体験しなければ初級以上にはならないからしかたがない。


 っていうか、素早さが異常。アレルを超えている。レンジャーなのに『見切り』を覚えたのもすごいことらしい。


 そんなわけで。

 ステータスだけを見れば、『なんで、お前らのパーティーまだレベル1なの?』という状況だったりする。

 もっとも、パーティーの平均年齢を見れば、『本当に、お前らのパーティーもうレベル1なの?』となるわけだが。


 いずれにせよ。

 俺達は明後日、レベル2への試験を受ける。

 レベル2への試験は実際のダンジョンへと向かうことになる。

 そう、ついにダンジョン探索である!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る