うちは引っ越しの多い家で

近所には毎回なぜか酒屋があって

バス停まで何十分もかるような

便のわるい場所ばかりだった


それと 坂道……


いま両親が住んでいる場所も

ぼくが高校生の頃に住んでいたところも

そのまえも

そのまえも

ぜんぶ家は坂のうえにあった


行っていた学校も

ぜんぶ坂のうえだった


だから 毎朝

坂をくだって

そのあと

坂をのぼって

学校にかよった


帰りは、その反対。


それでも

一向いっこうに慣れることはなくて

いつも“つかれたー。つかれたー”って

こぼしながら

くだってのぼった


毎日

毎日


ただ

坂は一度くだっちゃえば

案外あんがい早く過ぎたし、

のぼったさきには

いつも

友だちや家族の顔があった


だから

くだって のぼる。


毎日

毎日


それは 今でもなにも変わらない(はず)




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