ねじと僕と

両側の口角から5ミリ下の位置

遠目から見ると

ほくろみたいな薄茶色が2つ


僕があまりに正直で

周りに嘘があふれているからと

あるとき、母は泣きながら

その頑丈な2本を僕に差した


そのおかげか…

これと言ったトラブルなく過ごせてきたのだと思う


大学生になって、ひとり暮らしを始めて

めつけの強度が

ある程度

調節できることに気が付いた僕は

わざとゆるめたり

めしたりして

いろいろな自分を楽しんだ


ただ、度々いじったものだから

ネジは完全に

緩まって

しまいには

はずれてけ落ちちゃったみたい


それから、ひとに会えば

好き勝手して

自分の思うままに発言していたら

気付けば

野原にひとりきり


寂しくて

くらくて

人恋しかった……


少し大人になって、最近は

ネジの替わりに

爪楊枝つまようじを差して暮らしている

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