君の思い出

生津直

第1章 護衛

1   浅葉①

 ほんの出来心だった。


 写真でさんざんにらみ続けた相手と、いずれ顔を合わせることは珍しくない。そんないつものルートを、いつもよりも確実に、いつもよりも早く、辿たどりたくなってしまった。


 これぐらいのことは許される……。気付けば浅葉あさばはそんな言い訳を繰り返し、必死でそこに根拠を供給していた。


 そして、罪は犯された。


 その先に待っていたのは、残酷なまでに甘美な時間。黄金色こがねいろに輝く奇跡の海に溺れるようなだった。

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