邪魔をしないでくれないか。〈語り・蒼昊〉
仕事から帰って来たら
玄関の前で言い争う声が聞こえて来た。
『ですから、蒼昊は
今は不在だと
何度言えばわかるんですか‼』
どうやら、僕を訪ねて来たらしい。
「何時帰ってくんだよ」
しかし、声を聞いてイラついた。
何であいつがいるんだ‼
『お前とは縁を切ったはずだけど?』
依織を庇うように前に立った。
『おかえりなさい』
廿楽に対する声色とは違い
柔らかな声色で言ってくれた。
『ただいま』
見せ付けるように依織にキスをした。
僕のいきなりのキスに
廿楽は目を見開き依織は苦笑した。
『何もされてませんから大丈夫ですよ』
僕がキスに込めた意味を
正確に読み取ってくれたみたいだ。
『ですが、蒼昊が
離れて行ったのは
私のせいだと言われました』
確かに、あの時はまだ
お互いの気持ちは知らなかったから
“親友”でしかなかったけど
僕は既に依織を愛していたし
年の差も相まってとことん
甘やかしたいと思って世話をやいていた。
『あの時も言ったはずだけど
僕がやりたくて
依織を甘やかしてるんだよ』
今までの恋人達は僕に
“甘える” ばかりで長続きしなかった。
だけど、依織は僕が
“甘やかしたい”と思った相手だ。
本人が“自分でやります”
って言うのを制してでも
やってあげたいと思うほどに。
「何で……」
答えなんて一つしかない。
『愛してるからさ』
ただそれだけ。
まぁ、出会った頃から
依織は僕に
そうさせる何かを持っていたけど(笑)
『蒼昊、私もあなたを愛しています』
今度は背伸びをして
依織からキスしてくれた。
可愛いなぁ♡♡
『わかっただろう?
僕達は愛し合ってるんだよ』
廿楽は何も言えなくなったのか
僕達から目を反らした。
『あんまり可愛いことしてくれると、
僕は我慢できなくなるけどわかってる?』
『ぇぇ、勿論。
わかっていてキスしたんですよ』
とうとう、僕達の会話に
聞くに耐えなくなって廿楽は
エレベーターの方へ走って行った。
これに懲りて、二度と来ないだろう。
『今夜は寝かせてあげないよ』
玄関の鍵を閉めながら
僕がそう言ったら、依織は
クスクス楽しそうに笑って今度は
唇じゃなくて耳にキスをした。
それは、了承の合図。
誰であろうと僕達の
邪魔は絶対にさせない‼
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