第58話
急いでその手紙を読んだ。そこには、リナへの謝罪があった。店であんな風に罵倒したり侮辱した事を。そして、許してほしいと。 そして、どうしても会って話がしたいと。 土曜日の午後ニ時に関内駅に来てほしいと あった。 エッ?土曜日って、今日? 一寸、今何時よ?!うわっ、今一時十五分?じゃあまだ間に合う。行かなきゃ! リナは自然に、会いに行こうとその瞬間決めた。手紙の内容を見て、許そうと思った訳ではない。そんな気持は起きなかった。あれ程酷い事を長々と自信たっぷりに、しかも大勢の前で言われたのだ。どんなに傷ついたか、又恥ずかしかったか。 だが、会いに行くつもりだった。正直、それでも嬉しかった。吉永が自分に手紙をよこした事が。そして、とにかく会いたかった。 あれ程の事を言われたが、それでもまだ少し気持ちはあった。いや、少しでは無いだろう。 千帆の友達二人が、小声で千帆と吉永の様子を話していたのを、いつも興味深く聞いていたではないか?只過去の男の事を話しているから、という興味では無く、吉永の近況が気になったからだ。自分のせいで吉永が千帆とくっついたし、だから仕方ないとは思っていた。だがやはり内心、余り良い気持はして いなかった。 その半面、あんな事をした男など、又何か あれば同じ事をやるだろう。大沼だってママにそんな事を言っていたし、当然別れたのを良かったと思っている様だ。だからそんな男とは縁を切ったし、良かったと思った。又、そう強く思おうという気持もあった。 だがそうした気持ちがある半面、まだ吉永を好きだし惹かれる気持もあった。何故なら、彼は多分、ジキル博士とハイド氏だから! そして、リナはそのジキル博士の面をまだ忘れられないのだ。
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